虚空から生えた木の枝

ミナミは意識を虚空に集中させていた

ふと鼻の奥に熱い感覚を覚えると
甲板の黄金色の床には
鮮血の雫が滴下していた

鼻から出た血を拭ったが
今度は続けて咳が出た

口を押さえた手のひらを見ると
これまた鮮血が
べっとりへばりついていた

彼女の身体は
明らかに何かに蝕まれているようだった

周りが固唾を呑んで
見守る中の出来事だったので
雑草魂の魔法使いたちウィーザーズの魔法使いたちは
不安になって駆け寄ろうとした
しかしながら
ミナミは血塗れの手でそれを静止し
魔法の発動に集中した

ミナミには
苗鉢に祈っていた頃の感覚が
まだ僅かに残っていた
寧ろ
なぜ苗鉢に祈るだけで
魔法が使えていたのか
自分でも分からなかった

魔法を使いこなしていくうち
これは苗鉢に祈っているのではなく
自分の祈りがどこかへ
届いて魔法を発動しているのだと
気づき始めていた

そして
先のネオンの泉へ赴いた時
その違和感は確信へと変わったのだ

魔法は
願力がんりきの度合いで
発動する
この世のあらゆる法則から逸脱した
摩訶不思議な能力

だから
こんな真っ暗な空から
木の枝が出て来ても
何も不思議ではない!

完全に次元を飛び越えて
見たことのない
しかしながら
木の枝と分かるものが
あらゆる虚空から
飛び出して来た


◀︎ 前頁◀︎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?