卑怯者

怪しいほら穴に向かって
少年と相棒は直走った
火花渦がふたりを
取り巻いているので
足元の雪は
ふたりの進路を表すように
溶け出していた
ほら穴を覗くと
そこには
ドンブリンとザンパムが居た
ただ
どうやらザンパムは
監禁されているらしく
直立したまま動かなかった
ふたりが近づくと
ドンブリンは
鉤爪をザンパムに向けて
こちらを脅して来た
一先ずふたりが船内に
居なかった理由を
知りたかったのだが
切羽詰まっているらしく
冷や汗をかきながら
鉤爪は震えていた
それが焦りからなのか
寒さから来るものなのかは
分からないが
何かを盾にすることは
場合によるかも知れないが
大抵卑怯者の行うことだと
ふたりは思った

◆ 戦利品 ─【幻滅】

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