とうもろこし畑の迷路

少年が何を言っても
住人は恐怖していて
びくともしなかったので
いい加減諦めて
民家を立ち去ることにした
その間も歪んだ窓は
ひっきりなしに
見たことのない世界と
光景を映し出していた
また食い入ってしまわぬよう
即座に目線を逸らして
家を後にした
外に出て暫く歩くと
だだっ広い
とうもろこし畑に出た
入り口に人影が見えたので
後を追いかけてみた
どんどん
とうもろこし畑のなかへ
迷い込んでいった少年は
時折り
自分の影のようなものを見た
自分が自分に向かって
話していた
本当は短剣の在処を
知っているんだろう
分からないふりをしているんだ
お前は誰だ
おれは誰なんだ
お前は裏切り者だ
さまざまな自分の声が
脳内を駆け巡り
途端に具合悪くなって
柔らかい土の上に
嘔吐した
黒い吐瀉物が出て
土の上を暫く這うと
たちまち見覚えのある
姿形へと変貌を遂げた

◆ 戦利品─【悪の因子】

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