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安息瓶の鍵

闇市を通って
ドミニスリヤのラボまで
扉を開けると
賢者の亡骸が
そのまま横たわっていた

父親だって感じ
まったくしないけれど
なんだかこころの奥に
変な感じがあるわ

ザンパムはそう言いながら
片方の目から
一筋の涙を流していた
その温かい雫は
彼女のガムで出来た皮膚を
静かに溶かしていった

ガムは…
肉マントのガムは、あと何枚?

少年が心して聞いたが
彼女は少し微笑んだだけで
何も言わなかった

ドミニスリヤの亡骸を
ベッドに載せると
カランカラン
何か落ちた音がした

安息瓶だ…!
ドミニスリヤは
アイウェオがこのなかで
休眠状態になっていると
言っていた
おやすみのところ悪いが
もう一仕事してもらうぞ、相棒

少年は瓶を開けようとしたが
まったくもってびくともしなかった

何でこんな時に開かないんだ…!
ドミニスリヤが
持っていたときの安息瓶は
最も簡単に開けられていたのに!

どうやら彼の魔法が
この瓶の蓋を開かなくさせて
いるようだった

もう希望はその瓶に
託されたと言っても
過言ではないわね
多分それは、ここでは
わたししか開けることは
出来ないでしょう

それはどういう…?

ザンパムは微笑んで
少年から瓶を取り上げた


◆ 戦利品 ─【安息瓶の鍵】

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