涙とともに剥がれて落ちたもの

ザンパムは泣いていた
ワタヌキの工房を飛び出してからずっと
泣きっぱなしだった
この涙は何処から出るのか
彼女にはいまいち
よく分からなかったが
確かに涙は滴っていた
顔は泣き崩れて
本当に崩れていた
肉マントの肉はどろどろに
剥がれて落ちて
下のブリキが剥き出しになっていた
側から見ると
ちょっとびっくりするくらいだが
雑草の髪の少年をはじめとした
レジスタンスの面々は
息を呑んで
その光景を見守っていた
ザンパム
誰なの
お父さんだよ
嘘だみんなわたしを騙して
嘘ばっかしついて
わたしは誰でもないんだよ
じたばたしたが
博士はしっかりと抱きしめていた
辛い思いをさせてしまったね
もうどこにも行かないよ
ザンパムの脳裏に何度も見たような
デジャヴがフラッシュバックした
まだ信じられないよ
これはわたしの記憶なの
それとも誰かの
ザンパムは未だ混乱していたが
涙とともに
頑ななこころの壁は
少しずつではあるが
剥がれていた

◆ 戦利品 ─【崩れるこころの壁】

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