謎めいた欠片

ヤスメヤセンの街の人々は
マグマドグマの洗脳から解け
鴉仮面や耳当てを
外して生活し始めた
毒ガスが立ち込めているだなんて
なんの情報だったのかしらね
本気で信じていたのが
馬鹿馬鹿しいくらいだわ
こんなに空気は美味しいし
周りの音もよく聞こえるわ
長い間
悪い夢でも見ていたみたいね
街の人々は
口を揃えて言うのであった
確かに毒ガスは
立ち込めていたのかも知れない
しかしながら
それはこの街にではなく
こころのなかだけだったの
かも知れない
電波塔の決戦から
数日経った後
雑草の髪の少年は
考えていた
アイウェオはこの街に
支配の短剣があると
言っていたけれど
結局マグマドグマも
持っていなかったみたいだし
もうここには
ないのかも知れないな
けれども
あの時の胸の痛みは
なんだったのだろう
何かが共鳴しているような
そんな感覚だった
博士の地下ラボから出て
外の空気を吸おうと
歩いていると
道端に見慣れない
欠片が落ちていた
それとともに
ドロリとしたものも
一緒に張り付いていた
なんだこれ
少年はまたあの時の
胸の痛みを覚えた
気がつくと
目の前の欠片は
なくなっていた
見間違えかな
少年はまた
散歩を続けた

◆ 戦利品 ─【謎めいた欠片】

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