ひゅ〜どろろん

まだ三つ目の陽は沈んでいない
しかしながらここ暗黒海域は
夜のように薄暗い
霧もかかっているし
その霧が黒いのか
辺りが何らかの理由で黒いのか
それは不明だった

窓を背にしたホッキョクは
明らかに動揺するドブナガを見て笑った


「ハハハ!おもしれぇ〜顔だな!傑作だぜ!」
── 整備士、ホッキョク
「……キミ…、ホントに…後ろ見てごらんよ…」
── 発明家、ドブナガ
「何言ってんだよ!ウワサしたからってそんなすぐ出るわけ…」
── ホッキョク


ホッキョクは
そう言いかけて辺りを見渡すと
この船の乗組員クルーは全員
外の様子を映し出す
全方位魔導モニターに
呆気に取られていた

気になったホッキョクも
みんなと同じ方向を向いてみた


「出たわ…」
── ホッキョク


全方位魔導モニターには
雲間を掻き分けて泳ぐように
幾つかの腕が飛び出た
幽霊船と思しき船が
深淵の霧の中から
ぬっと顔を出した

顔を出したという表現は
比喩ではなく
実際に船頭には
目視出来るほどの顔がついていた

船体を見渡すと
全体的に長細い形で
後ろの方には
水舎のような車輪が
ふたつほどついており
青白いリンの炎が灯っていた
それらは船の周りにも散らばっていた

こちらの存在に気づいたのか
意思号へと徐々に接近して来た


◀︎ 前頁◀︎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?