ひゅ〜どろろん
まだ三つ目の陽は沈んでいない
しかしながらここ暗黒海域は
夜のように薄暗い
霧もかかっているし
その霧が黒いのか
辺りが何らかの理由で黒いのか
それは不明だった
窓を背にしたホッキョクは
明らかに動揺するドブナガを見て笑った
ホッキョクは
そう言いかけて辺りを見渡すと
この船の乗組員は全員
外の様子を映し出す
全方位魔導モニターに
呆気に取られていた
気になったホッキョクも
みんなと同じ方向を向いてみた
全方位魔導モニターには
雲間を掻き分けて泳ぐように
幾つかの腕が飛び出た
幽霊船と思しき船が
深淵の霧の中から
ぬっと顔を出した
顔を出したという表現は
比喩ではなく
実際に船頭には
目視出来るほどの顔がついていた
船体を見渡すと
全体的に長細い形で
後ろの方には
水舎のような車輪が
ふたつほどついており
青白いリンの炎が灯っていた
それらは船の周りにも散らばっていた
こちらの存在に気づいたのか
意思号へと徐々に接近して来た
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