捨て身の防御【Miracle Fanta詩 Ⅱ 282】

ホークジョウの目の前に
白いものが立ち塞がった

その白い風景には
やがてじわりと血が滲んで
綺麗な薔薇の花のように拡がった


「何やっ…てんだよ…、師匠…。
ぼさっとしてたら…死んじまうだろうが…、
ボケナス…」
── 整備士、ホッキョク
「お前…!何してんだよ!!
それはオレのセリフだろうが!!!」
── 幻術の鷹匠、ホークジョウ


ニガマトの伸びた鉤爪は
するりと戻っていった


「あらま、そんなつもりじゃなかったんだけれど…。
ちょっといい子だったのに、残念ね」
── 石薔薇の魔女、モントローザ
「ホッキョク!!」
── 意思号の船長、ライスワイフ


ライスワイフも叫んで駆け寄った

ホークジョウは真っ赤に染まった
ホッキョクを抱えながら狼狽えた

また大切な人を失ってしまう恐怖が
彼のこころをズタズタに切り裂いた


「頼む…もう…オレから何も奪わないでくれ…。
いやだ…やめてくれ…頼むから……っ!!」
── ホークジョウ


ホッキョクは
ホークジョウの腕のなかで
どんどん冷たくなってゆくのを感じた


「……キミにはまだ死なれちゃ困る…!!
……ボクの人生に張り合いがなくなってしまうじゃないか…、キミのバカな脳みそにだって、少なからず使い道はあるってこと、もっと肝に銘じた方がいいんじゃないか…っ?!」
── 発明家、ドブナガ


ドブナガは妙に冷静に
自らの白衣を引きちぎって
ホッキョクの傷口を
ぐるぐる巻きにして止血を始めた


「……アンタ師匠なんだろう?
……突っ立ってないでなんかしたらどうなんだよ!
……ただ見ていたって、生命は助からないぞ…!!」
── ドブナガ


ドブナガはこの時初めて
仲間に怒りを露わにした

ホークジョウは
そう言われたものの
やはりどうすればいいか分からず
祈ることしか出来なかった


◀︎ 前頁◀︎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?