書籍 「摩擦の話」#1

摩擦の話

摩擦という現象ほど日常生活に密接なものはない。
人が歩くのもマッチで火がつくのもヴァイオリンで音楽をかなでるのも、すべて摩擦現象を利用している。
現在では工業技術の精密化・高速度化によって、摩擦をいかに処理するかが重要問題となってきた。摩擦についての研究史からはじめて、技術の世界で摩擦との闘いに説き及ぶ。

上記は「摩擦の話 曽田範宗著 岩波新書」のカバーのそでに書かれている内容です。
第1版が発行されたのが1971年7月30日。
50年前に出された書籍ではあるが、現代の書籍に書かれていても決して古臭さは感じない。

佐々木成朗先生(電気通信大学教授)が以下のリンク中で「摩擦による経済損失は年間十数兆円にのぼる」と話されています。

 

摩擦の世界への扉

・一つの思い出
鏡戸(板張りのふすま)を閉めるのがなかなか大仕事だった。
一人でしまらないと、二人がかり三人がかりでよいしょよいしょとやって、やっと成功した。
ときについに手におえぬときは、おばあさんに窮状を訴えでた。
するとおばあさんはろうそくのかけらを持ってきて、だまって敷居にそれを塗っていった。するとまるでその重い戸が浮いたように軽くなって、一人でかるがると開閉できた。

祖父にとってはその鏡戸の記憶が「摩擦の世界の扉」だったようだ。
祖父の家は世田谷の住宅街に佇むとても古い家で、かつて新潟県で営んでいた料亭を解体し、移築したと聞いた。
廊下を歩くと”ギュッキュ”と音がなり、子供ながらに二条城の鶯張りだと感じていた。その音が発生するのも摩擦が絡んでいると考えると祖父は音が出ることをどう思っていたのか聞いてみたった。

余談だが二条城の鶯張りが産まれた説として以下のTwitterの内容が個人的にはすごく好きである。

話を戻すが今もその家は建っている(2023年4月現在)がまもなく解体されると聞いた。
古い建物は耐震性に懸念があり、万が一大震災が発生したら近隣に迷惑をかけてしまうだろう。
そんなことになったらご近所さんと摩擦が生じるので解体はやむを得ない選択なのだと思う。

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