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開幕

写真は今は立て替えて無くなった三中旧校舎。
沢山の思い出が詰まっています。

試験官

ベーサトの1組には納豆屋の倅のマツがいた。
当時イケイケだったマツは監視官気取りの教師達に反抗したり校則を破ったりと目立つ行動をしていた。
同調するかのようにベーサトも一緒にプチ暴れしていた。
同じ1組にはヒデちゃんと言うキャラがいて「お前らなんかシン君とやったら速攻やられる」と言い、シン君とやらの見事な舎弟っぷりを発揮していた。勿論戦闘力の低いヒデちゃんはベーサトにやられる。

シンのクラスは3組で一年生にして2022年現在(45歳)とあまり変わらない風貌だった。多分当時で170数センチあっただろうし、と言う事は自分達より20cmも背が高い。背が高いだけで無くがっちりして体重もあって運動神経も良かった。

シンは鶴岡市の南に位置する金峯山(きんぼうざん)の麓の黄金(こがね)小の番長で中1なのに髭が生えていた。
気軽に同級生だからと言って「シン」と呼ぶと急に怒りだし胸ぐら掴んで「シン君と呼べーーー」と振り回されると言うのが当時の定番だった。
やられた奴らはたちまちシン君と呼び軍門に下る事になる。

今思えば試験みたいなものだった。マツもベーサトもヒデちゃんのバックとして出てきたシンに対して一歩も引かなかった。
気合いが入ってる人間にはシンはそれ以上責めたりしないのだが中途半端がシンと呼ぶと怒り出すと言うのが彼の当時のマインドだった。
ある日俺がクラスメイトとバスケットボールで遊んでいるとシンがふざけて乱入しボールを横取りした。俺は「返せシン」と言うとシンは真顔で「今何て呼んだ?」言ってきた。
シンの顔を見ながら「お前の名前はシンじゃないのか?」と俺が言うとシンはそれ以上は何も言わずボールを返し去っていった。
どうやら入学試験には合格したようだ。

ベーサトの影響

ベーサトの家に遊びに行くとCDプレイヤーがあった。俺はまだそんなものを持っていなかったのだが、この曲が良いんだよと言って流してくれたのが「TRAIN-TRAIN」だった。その頃よく聞く音楽だなと思ったけどイントロの部分が衝撃的に格好良かった。
他にも何曲か聞かせてくれたのだが多分マツにでも影響されたのか急にベーサトは音楽を聴き始めた。
この頃はジュンスカ、ユニコーン、プリプリ、BOØWY(文字があって驚き)、パーソンズなどが我々の中で流行った。
カセットデッキしか持っていない俺はいろいろカセットにダビングしてもらって聞きまくったのだがブルーハーツがダントツで好きで、その歌詞こそが男の生き方だと思うようになった。

2小の軍団の方がジャージで平気で遊んでいた俺らよりも音楽やら服装が先をいってたように思う。俺とベーサトは知ったかぶりをしながらPOPOやジャックで買い物して必死に同化しようとしていた。

そんなベーサトが一番好きだったものは前年からアニメがスタートしていたFエフだった。主人公の赤木軍馬の「何人たりとも俺の前は走らせねぇ」が彼にとっての衝撃だったのか当時とても流行っていたF-1レースを見ながら俺は将来F-1レーサーになると言い出した。
ちなみに長年肥満児だったベーサトは中学生になるとどんどん痩せていった。
ずっと水泳をやってた彼は引き続き水泳部に入り毎日ハードなトレーニングと成長期が合わさってすっかり痩せマッチョになってしまっていた。

そんな彼に触発され今後の自分の進む道が見えてくるのだった。

選んだのは

ベーサトは部活動が水泳一択だったが部活は必ずに入らなければいけないので特にやりたい事のない俺はちょっと困ったなって感じで部活動見学を始めたのだった。

強くなりたいから柔道部かと思ったが入部と同時に強制的に坊主にされるのには抵抗があった。その当時俺は一度も坊主にした事がなかったのだ。
顧問の和田先生は強烈な人で骨格ががっちりした新入生を手当たり次第スカウトしていたのだが、その時の俺に見た目で声がかかる事はなかったし子供ながらに「見る目ねぇねぇなぁ〜」と思って柔道部は自分の中でナシになった。

ならばランボーが好きな俺が入るのはアーチェリーしかねぇだろうと思いアーチェリー部の練習場所の体育館裏に見に行った。
ほとんど女性で構成される部員が円になって何も持たずにイーチ、ニー、サーンと弓を放つシャドーをしていた。
俺が前にやっていた空手よりもつまらないじゃないか?

その時隣を見てみると軟式テニス部が練習していた。
既に小学生時代の同級生が入部を決めたようで練習していて一緒にやろうと誘われた。
隣でやってるアーチェリーと違ってスピード感あるし汚いテニスコートで打ち合ってる様は男っぽくもあった。
特別やりたい事もないからテニス部に入る事にした。

テニス部は何かをやり過ぎないと言うことに関して最適だった。社会勉強にもなった。この選択が野球やサッカーだったら俺の人生もっと違う風になっていただろう。

3年生

我々が1年の時の3年生のごく一部がめちゃ格好良かった。髪を逆立て20000円以上するような高級ラバーソールを履き多少校則違反でも教師達は何も言わなかった。
香水の匂いも強烈で、金のない俺とベーサトはジャスコの化粧品店のお試しコーナーでタクティクスを服にバンバン振りかけて真似たものだった。
何故教師達は何も言わないかと言うと野球のバッテリーを組んでいる先輩を始めヤンキーの中の良いところを認めようと学校側がしている感じがあった。
ワンピースに出てくる七武海のように不平等で変な話だがこの格好良いヤンキー先輩方は学校行事等でしっかり活躍されて合唱も真面目に参加していた。

そんな先輩方に憧れつつもこの先唯一無二のスクールライフを送っていくのであった。

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