”車輪の下”考

「疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」

ヘルマン・ヘッセ .車輪の下(p.122). 新潮文庫

1906年に出版された本ですが、今の日本の作家にも結構影響与えてるのだよなと。以下の引用群に響くところあったら、ぜひ手に取ってみてください。
結構えぐい描写も多い小説群ですが、底に流れる「語りたいこと」を感じてもらえると引用と紹介をした身として嬉しいですね。

"車輪の下敷き。その言葉が脳裏をよぎった。芽吹は銃剣を握りながら、思う。(上等よ!私たちは下敷きになんかされない!そんな車輪なんてぶち壊してあげるわ!!)"

タカヒロ(みなとそふと);朱白あおい(ミームミーム).楠芽吹は勇者である(p.36).株式会社KADOKAWA.Kindle版.


"世界の不条理という車輪は、落ちこぼれた者を、あっという間に轢き殺してしまう。けれどその車輪は、多くの場合決して巨大なものではなく、一人しか轢き殺すことはできないのだろう。だから、手を取り合って共に歩いて行く者たちを、殺すことができない。信頼し合える友達と一緒だったら、車輪を押し返し、壊すことだってできるのだ。"

タカヒロ(みなとそふと);朱白あおい(ミームミーム).楠芽吹は勇者である(p.252).株式会社KADOKAWA.Kindle版.


"そもそも個人の幸福とは、以前からそこにあって個々人を待っている軌道に乗ることをいうのだ。安価に苦痛から解放したところで、それが充実した人生とは限らない。社会を思考の対象にするのは良いが、個々人を物体扱いしてはならない」"

冲方丁.マルドゥック・ヴェロシティ1新装版(p.101).早川書房.Kindle版.


"「人生は回転する車輪のようなものだ。もし君たちが輪の縁にしがみつけば、君たちは頂点から下降するか、底辺から上昇するかしかない。だが、もし回転軸に居座れば?車輪がどう回転しようとも君たちは常に同じ位置にいる。そこが君たちにとっての至上の位置だ。車輪の中心──その究極点は、いつどんなときも君たちの中にある」"

冲方丁.マルドゥック・フラグメンツ(Kindleの位置No.1780-1783).早川書房.Kindle版.


"「僕らを機械にした〈子供工場〉だって伝統的さ。僕らにとって学校もテロの現場も、どっちも戦場だ。それが人生、それが戦争ってね。戦うルールが違うだけで、おかしくなったり壊れたりするやつらの数は、実際、同じくらいなんじゃないかと僕は思うね」"

冲方丁.スプライトシュピーゲルIVテンペスト(富士見ファンタジア文庫)(Kindleの位置No.1275-1279)..Kindle版.


"「だが教育される経験は与えられる。生まれ育った社会に吞み込まれる前に、その社会を外側から眺めるゆいいつの機会が与えられる。自分の将来に選択肢があることを教えられ、自分を教育する存在があることを教えられる。そこにも多くの失望と困難が生まれるだろう。競争に敗れ、進路を見失った者は、多大な苦痛を経験するだろう。だが教育されないという絶望の中にいることに気づかない場合に比べれば、それらは十分に乗り越えられるものだ」「二十五番街は、アフガニスタンとは違うと思いますけど……」「教育する力が低下した社会は、紛争地帯と何も変わらない。いずれ紛争地帯になるしかない長い道のりを着々と進んでいるだけでね。銃の数とは関係なしに」"

冲方丁.テスタメントシュピーゲル1(角川スニーカー文庫)(Kindleの位置No.8298-8305)..Kindle版.


個人的には「だが、もし回転軸に居座れば?」が最高に好きです。
今、これを会社員人生でトライ中です(笑)

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