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【臨床医学各論】子どもを取り巻く「菌感染症」を理解して正しく恐れましょう

子どもを取り巻く感染症のうち、菌感染症によるものを取り上げていこうと思います。ウイルス性感染症は別記事にしてありますのでコチラからどぞ!


猩紅熱

猩紅熱(しょうこうねつ)という名称よりも、「溶連菌」と言った方がピンとくる方が多いのではないでしょうか。劇症型も流行りつつあるようです。

正式名称は「A群溶血性連鎖球菌」。急性上気道炎、咽頭炎、扁桃炎を起こします。また、毒素による特有の皮疹を伴う疾患です。

2〜4日の潜伏期を経て、38〜40℃の発熱、そしてイチゴ舌と呼ばれる舌乳頭(プツプツ)のほっ赤、口囲蒼白といって口の周りが真っ白になるのが特徴です。

血液検査ではASO(ストレプトリジンO抗体)の上昇ASK(抗ストテプトキナーゼ抗体)が上昇します。ASOは毒に対する抗体、ASKは溶連菌に対する抗体の数値です。

早期に回復するものの、数十年体内に潜んだのちリウマチ熱を発症したり、急性糸球体腎炎(死んだ菌が腎臓で処理しきれず詰まっちゃう)が続発する可能性があります。

詳しくはコチラの記事もどうぞ。


百日咳

百日咳菌により痙攣性の咳を特徴とする急性上気道感染症を指します。
感染症法の分類は5類で、ワクチン接種で予防できるため現在ではほとんど見られません。症状は以下の3つの経過をたどります。

カタル期

1〜2週間の潜伏期の後、カタル症状といって、微熱、鼻漏、咳といった風邪の諸症状に近い症状が現れます。

痙咳期

2〜6週間を指し、吸気性の笛声音症状が特徴です。コンコン、コンコンという咳の合間に、息を吸い込む際にヒューッという笛のような音となります。

回復期

痙咳期から1〜3週間程度で回復期へと移行します。


ジフテリア

ジフテリア菌によって起こる急性感染症で、感染症法では2類に分類されます。ワクチンで防げるため、ほとんどみられない病気です。

飛沫感染により気道(口腔〜咽頭)に偽膜を形成し気道閉塞を起こします。

ジフテリア毒素により心筋障害や神経障害を起こすことがあります。


破傷風

破傷風と聞いたことがあるでしょうか。グラム陽性嫌気桿菌性の急性感染症で、破傷風菌がつくる外毒素が中枢神経を障害します。感染症法上では5類で、ワクチン接種により現在ではほとんどみられません。

嫌気性、つまり空気に触れると死んでしまう菌で、水の中や土の中に潜み、傷口などから侵入し以下のような症状が現れます。

  • 項部硬直・・・頚部(首)の筋肉が緊張する

  • 便秘・・・・・中枢神経の障害により排泄の調節ができなくなる

  • 頻脈・・・・・中枢神経の障害により脈の調節ができないため早い

  • 牙関緊急・・・歯を食いしばる

  • 痙笑・・・・・口を開かず表情筋が痙攣し笑っているように見える

  • 後弓反張・・・脊柱起立筋が緊張し、弓なりにのけ反る

これらの症状から、過去には映画の題材もなった感染症です。詳しくはコチラもご覧ください。

ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)

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黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌による感染症です。これが起こりやすいのは病院内での感染(院内感染)です。院内は常に消毒されていることから、消毒に耐えうる強い菌が生成され、免疫の少ない患者さんに遷ってしまいます。正式名称をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)といいます。メチシリンとは抗菌薬のことで、抗菌薬に耐えうるブドウ球菌ということですね。蜂巣炎や菌が血管に侵入し敗血症を引き起こします。


緑膿菌感染症

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緑膿菌はグラム陰性好気性桿菌で、水回りなどに広く常在する菌で感染力そのものは強くありません。
ただし、身体の免疫が低下した際に感染し(日和見感染)、肺や爪等、いたるところに感染します。


レジオネラ菌感染症

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肺に感染し肺炎(レジオネラ肺炎)を発症する感染症で、レジオネラは好気性グラム陰性桿菌に分類され、感染症法では4類です。主に配管や循環浴槽に付着していて、吸い込む(エアゾル吸引)とマクロファージの中で増殖し肺炎を引き起こします。


細菌性食中毒

日本において年間3〜4万人も感染しているのが細菌性食中毒です。代表的なところではカンピロバクター、ウェルシュ菌、サルモネラなどがあります。

詳しくはコチラの記事もご覧ください。

国試の問題を解いてみよう

院内感染と関連が深いのはどれか。(はき第29回-65)[臨床医学各論]

  1. 破傷風菌

  2. ボツリヌス菌

  3. 肺炎球菌

  4. MRSA






<答え>

4.MRSA


細菌感染症はどれか。(はき第31回-53)[臨床医学各論]

  1. デング熱

  2. 日本脳炎

  3. 破傷風

  4. 手足口病






<答え>

3.破傷風


メディアは色々煽ってる風潮もありますが、正しく知って、正しく恐れましょう♫ それでは、ご覧いただきありがとうございました!

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