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ケーズデンキCM事件

 こんにちは。

 何年たっても頭から離れない歌のフレーズ第1位が、キン肉マンの「牛丼一筋300年、早いのうまいのやっすいのぉ~~ギックっ!」で、第2位が「ケーズデンキはや~す~い~~タタタタタタタタ、タンッタンッタン」の松下です。


 今日は、「ケーズデンキCM事件」(知財高判平成24年10月25日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 ケーズデンキは、ドリフターズが出演するテレビCMの製作を広告会社の電通に発注し、電通さらにCM制作会社アドックに発注、アドックの下請けのCM制作会社カーニバルがCM原版を作成して、アドックに納品しました。その後、アドックは、CMの中に新店舗名を挿入して電通に納品しました。すると、カーニバルは自分たちが著作権者であり、CM原版を使って新店舗名を記載した完成版を新たに制作することは、著作権(複製権)の侵害だとして、アドックに対して民法709条の不法行為に基づく損害賠償として、約604万円の支払いを求めました。

2 カーニバル側の主張

 テレビCMは映画の著作物ではないため、CMを制作したわが社に著作権がある。たとえCMが映画の著作物であったとしても、わが社の指示でCMが製作されているので、職務著作にあたり、著作権法16条ただし書きが適用されて、わが社に著作権があるはずだ。

【著作権法15条1項】
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
【著作権法16条】
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定(※職務著作)の適用がある場合は、この限りでない。

 さらに、職務著作でなかったとしても、私たちがCM制作に必要な企画案、監督、撮影、照明、美術、編集などを行った映画製作者だから、著作権があるはずだ。

【著作権法2条1項10号】
映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

3 アドック側の主張

 テレビCMは「映画の著作物」である。著作権法2条1項10号をよく読むと、電通もしくはケーズデンキが映画製作者となるはずだ。そうすると、映画の著作物の著作権は、映画製作者である電通もしくはケーズデンキにあるはずだ。

【著作権法29条1項】
映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。

 それに、カーニバルは下請であって、カーニバルの名前でテレビCMが公表されているわけではないので、職務著作にあたらない。

4 知的財産高等裁判所の判決

 テレビCM原版は映画の著作物である。また著作権法2条1項10号の「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」とは、著作物を製作する意思を有し、CM原版の製作に関する法律上の権利・義務が帰属する主体となり、かつ、CM製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者であり、今回のケースでは広告主であるケーズデンキと認めるのが相当である。

5 テレビCMの著作権者は広告主である

 広告会社、CM制作会社、広告主の3者の中で、テレビCMの著作権者は誰かという問題が長年議論されてきました。

 一般的に映画の総監督が著作者となるように、今回の事件では、テレビCMについて主導的立場と責任を持っているのは広告主であるので、著作権も広告主にあるとしています。ただし、広告主、広告会社、制作会社の関与の仕方はケースによって様々ですので、CM制作の受注者としては、著作権の帰属等について契約書に明記しておくことも必要でしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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