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エルメス・バーキン事件

こんにちは。

 ルイ・ヴィトンに続いて、今日はエルメスについて考えてみたいと思います。

 エルメスのバーキンと言えば、不動の人気を誇るバッグとなっています。歌手のジェーン・バーキンさんの名前から付けられたバックなのですが、もともとバーキンさんは、ゲンズブールからプレゼントされたカゴバックを愛用していたところ、パンパンにつめたカゴバックの中身がこぼれたことがきっかけで、エルメスのバーキンが誕生することになります(飛行機の中で偶然に隣に座っていたのがエルメスの社長だったのです)。その後もバーキンさんが、エルメスから贈られたバックに、カゴバックと同様にパンパンに荷物を入れていても、魅力的に見えるのがすごいなあと思っています。

 さて今日は、そんな「エルメス・バーキン事件」(東京地判平成26年5月21日裁判所ウェブサイト)について紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 1984年に発売されたエルメスのバーキンは、日本でも著名性を獲得し、2011年にはバッグの形状について立体商標の登録が認められました。
 株式会社DHS corpは、韓国からジンジャーバッグを輸入し、楽天市場で販売していました。ところがこのジンジャーバッグが、エルメスのバーキンの立体商標と似たタイプのハンドバッグだっため、エルメス・アンテルナショナルは、商標権侵害を理由にその販売差止めと約382万円の損害賠償を求めました。

2 エルメス側の主張

 我々は、200年近くの歴史を持つフランスの高級ブランドである。我々の商品に対しては、その最高の品質により顧客から絶大な信頼が寄せられており、古くから多くの著名人に愛されてきた。特に、バーキンは、エルメス商品を代表する高級バッグであり、それを持つことは多くの女性にとっての1つのステータスとなっている。
 ジンジャーバッグは、バーキンに使用されることのない安価なナイロンを素材とし、バーキンに比べてはるかに安い価格で販売されている。我々の高級ブランドとしてのイメージや顧客の信用が著しく毀損されている。
 ジンジャーバッグの標章は、平面標章及び立体的形状の両面において、バーキンの標章の形態上の特徴と同一の特徴を具備するものであり、外観上も類似する。需要者がこの商品に接したときに、バーキンを想起することが通常であり、エルメスと経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務にかかる商品と誤信されるおそれがある。

3 DHS corp側の主張

 私のウェブサイトでは、「香港発ユニークブランド『GINGERBAG(ジンジャーバッグ)』」、「ナイロン素材のジンジャーバッグ」といった表示を行っていますし、またバーキンのデザインと写真では似ているかもしれないですが、素材や価格などで明確に区別できるはずです。
 また、我々は単なる輸入販売をしている代理店にすぎず、賠償を請求するならジンジャーバッグ本社に請求するのが正しいと思います。

4 東京地方裁判所の判決

 商標と標章の類否は、 商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、 標章がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品・役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。
 実際、バーキンの標章とジンジャーバッグの標章は、所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には、原則として、立体商標と平面商標との間に外観類似の関係があると言うべきである。
 よって、DHS corpは、ジンジャーバックの商品を輸入販売または引渡しのために展示してはならず、またエルメスに対して約236万円を支払え。

5 立体商標と意匠権

 一般的にデザインに関しては、意匠権で保護されることが多いのですが、エルメスのバーキンには著名性があったことから立体商標を取得するに至っています。意匠権の保存期間は25年ですが、商標権は更新が可能となっている点で有利な権利となっています。 
 また今回のケース以外に、バーキンに類似した商品を販売したことで不正競争防止法違反に問われた事件(知財高判令和2年12月17日裁判所ウェブサイト)や、有名企業の社長が商標法違反で警察に逮捕されたという事件もあります。「商標権侵害になるかどうかなんて知らんかったわ!」といっても通じないことが多いので、十分に注意しましょう。

では、今日はこの辺で、また。


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