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週刊サンケイ事件

こんにちは。

 世間的に有名になればなるほど、ある日突然、週刊誌に自分に関する記事や写真が掲載される可能性があります。そんなときに、記事の内容が自分の名誉を傷つけるものであったり、自分の写真が無断で使用されていた場合、法律上はどのように扱われるのでしょうか。今日は、これらのことが問題となった「週刊サンケイ事件」(東京地判昭和62年2月27日判例時報1242号76頁)を紹介してみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 「週刊サンケイ」は、私立歯科大学補綴学の教授が、日本のスナックで働かせるフィリピン女性を選ぶ目的でフィリピンに赴き、連日多数の女性とのハレンチな姿をおさめた写真等を週刊誌に掲載しました。これに対して元教授は、株式会社週刊サンケイ出版に対して、名誉毀損及び肖像権侵害として、8300万円の損害賠償と謝罪広告を求めました。

2 元教授の主張

 週刊誌の記事によって、私の名誉が毀損された。また、私の写真を無断で撮影し、週刊誌に掲載したことにより肖像権を侵害している。記事では、私の名前を2文字変えただけで、一見して私だとわかる内容となっているではないか。だから私は大学の教授職を失い、家庭内の雰囲気も悪化し、多大な精神的な苦痛を受けたので、その分の損害賠償と謝罪広告を求める。

3 週刊サンケイ側の主張

 元教授は、歯科大学の主任教授であるとともに、日本補綴学会の理事でもあって、将来日本の歯科医療に携わる歯学部の学生に対し、歯科医師として社会的に要請される倫理を指導すべき立場にあり、公私を問わず、その言動が歯学部学生の精神生活等に重大な影響を与えていた。だから、記事の内容は、元教授の私生活上の行為に関する事実ではあるが、公共の利害に関する事実でもあり、記事の掲載は専ら公益を図る目的でなされており、記事の主要部分は真実であり、仮にそうでないとしても事実が真実であると信じるにつき相当の理由があった。写真掲載にあたっても、ぼやかすなど顔がはっきりと判明するものを避けているなど、必要限度の配慮がなされている。だから違法性はない。

4 東京地方裁判所の判決

 記事に扱われた事柄が公共の利害に関するものであり、かつその掲載・公表が、専ら公益を図る目的でなされた場合には、摘示された事実がその主要部分において真実であると証明されたとき、又はその事実を真実であると信ずるについて相当の理由があるときは、週刊サンケイらの元教授に対する記事による名誉毀損の行為は、その違法性を阻却されると解するのが相当である。人格的利益の侵害があつても、これが公共の利害に関する事実と密接不可分の関係にあり、その公表が右事実と一体となり専ら公益を図るために右事実をより正確に補充するためになされたもので、しかも、その目的達成につき必要限度のものであるとすれば、右侵害行為は不法行為における成立要件としての違法性を欠くものに解するのが相当である。よって、元教授の請求を棄却する。

5 名誉毀損と肖像権侵害 

 会社の一定以上の地位の従業員について、週刊誌やSNS等に何らかのスキャンダルが掲載された場合、名誉毀損と肖像権が問題となります。今回のケースでは、名誉毀損も肖像権侵害も認められませんでしたが、場合によっては、名誉毀損が認められないながらも肖像権侵害が認められたり、その逆もありますので、SNSなどに掲載する場合には十分に注意しましょう。

では、今日はこの辺で、また。


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