東芝産業スパイ事件
こんにちは。
CIAがスパイを募集していたのですが、対象が18~35歳だったのであっけなく夢が散った松下です。
最近、半導体という言葉をよく聞くので調べてみたところ、ほぼすべての電化製品に使用されており、現代社会になくてはならないものだということがわかりました。
この半導体の技術を企業秘密にしている会社が多いのですが、過去にこの技術が不正に流出したことが大々的に取り上げられたことがあります。そこで今日は、「東芝産業スパイ事件」(東京地判平成27年3月9日判例時報2276号143頁)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
東芝と提携関係にあったSanDiskの元社員は、東芝の三重県四日市市の工場からNAND型フラッシュメモリに関する研究データを盗み出し、それを韓国のSKハイニックスに持ち込み、役員待遇で転職していました。
これによって東芝には300億円の損害が出たため、元社員を不正競争防止法違反の罪で告訴しました。
2 東京地方裁判所の判決
被告人を懲役5年及び罰金300万円に処する。NAND型フラッシュメモリは、高度情報通信社会を支える重要な電子部品・機器となっており、今後も市場の拡大が見込まれるものであって、わが国の重要な産業分野となっている。この営業秘密を他国の競業他社に流出させることはかなり違法性が高いというべきである。また、SKハイニックスが東芝との和解で331億円もの巨額の支払義務を認めたことは、それだけで、東芝に巨額の損失が生じたことを裏付けている。
3 不正競争防止法
一般的には産業スパイと呼ばれているように、会社の営業秘密を洩らした場合には、不正競争防止法によって処罰されることになります。
【不正競争防止2条】
① この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
四 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
罪として、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処されます。
【不正競争防止法21条】
① 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
注意する点は、会社の情報を持ち出すとすべて犯罪になるというわけではなく、営業秘密を持ち出すことが犯罪となることです。
では営業秘密とは何を指すのかというと、会社が秘密情報として管理していて(秘密管理性)、それが役に立つ情報であって(有用性)、まだ誰にも知られていないもの(非公知性)、の3つがそろっているもののことです。
企業としてもこれが秘密情報だと指定し、取り扱える人を限定しておく必要があるでしょうね。
では、今日はこの辺で、また。