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自分に線香をあげた日

私はめちゃくちゃスピリチュアルなところがある。日常生活で「救う」とか「赦す」とかめちゃくちゃ使う。きっと根底がスピ。

ある日、過去と決別するために昔の私に線香をあげた。紙にびっしりと後悔や嫌だったことを書き連ねてそれを供えて。

線香の煙はぐわんぐわんと換気扇に吸い込まれていき、オートスイッチのキッチンライトはちかちか点いたり消えたり。私はぼうっとそれを眺めた。
 
死ぬことを選択するくらい死にたくはない。いやむしろ殺したい。殺したいほど強い感情が湧き出ていた。私の手で私を殺めることがせめてもの救いだ。などと、今考えると不可解な言葉を並べて、それで、線香はもえかすとなった。

人生は後悔ばかりだ。
うまくいかないことばかりだ。やり直したいことやどうしようもないことばかりだ。だけど、巻き戻せない。あの頃に戻ることも違う選択を選ぶこともできない。
 
自分を殺したいほど憎む事象から乗り越えるために、感情を別ベクトルに昇華する。私は「このことが起こったのは成長のためだ」などと受け入れて前に進もうとする。

所詮、自分を騙して気持ちを紛らわせていたから後に仇となる。もう、こんな感情はなくていい。そんな感情は無かったことにしよう。
昔の私が死んで仕舞えば生まれ変わる(ぎゃースピすぎる)
だから、線香を焚いたのだ。

燃えかすになった線香。
私は生きていた。

心を殺すことは、感情を無くすことは、それこそよっぽど精神的な死なのだから、もう、たくのはやめにした。
 
特に何も変わらなかったけど、線香のにおいがほんのりとキッチンに残った。

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