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教育についての考え方

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トレスの教育に対する方針や考え方に関するnoteをまとめています。
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記事一覧

オンライン授業を成功させる学習環境の作り方。(6min)

新型コロナの影響で、私教育だけでなく公教育機関の多くもオンライン授業をスタートさせていますね。 僕が毎週オンライン授業を行なっている熊本の小学生も、「タブレットで学校の授業をやってるよ!」と教えてくれました。 現在、世間で取り上げられているオンライン授業の問題点は、「Wi-Fi環境の整っていない家庭はどうする?」などのハード面。 ただ僕個人としては、授業を準備する教師や講師の負担の問題、そしてそれ以上に子どもたちの意欲や関心などのソフト面も気になっています。 確かにZ会グ

「6歳までに脳の90%が完成」に潜む大きな嘘。(5min)

今日は僕の専門である脳科学のお話。 教育に関心の高い人なら一度は耳に(目に)したことがある、この記事のタイトルにもなっている言葉。 言い回しは少し違うこともありますが、 ・4〜5歳で脳の70〜80%ができる ・6歳までに脳の9割が完成する こんな感じですね。 これらを謳い文句とした幼児教室や能力開発教室も、数多く目にします。 ただ実は、この言葉には「大きな嘘が潜んでいる」ということをご存知でしたか? 「6歳で9割」の根拠とは?これらの言葉は、アメリカの医学者・人類学

子どもの宿題が出されなくなる『魔法の手紙』の書き方【例文あり】(4min)

宿題についての考え方学校の宿題についての僕の考えはこれまで ・音読という宿題の危険性について ・音読よりも国語力を伸ばす方法 ・小学生に宿題をさせても成績が上がらないただ1つの理由 などで発信してきました。全てをとても簡単に要約すると 「単純作業の反復になりやすい学校の宿題は、敏感で吸収力も高い子どもたちの脳にとってベストとは言えない場合が多い。 そんな作業に大切な時間を使うよりも、保護者の責任のもとで新しいことに触れたり、自分で遊びを考えたりする環境を与えるべきで

ゲームの代償とは:少年たちにあらわれた副作用について(5min)

楽しかった夏休みもいよいよ終盤。子どもたちのお土産話を聞くのは何よりも楽しいのだけれど、意外に多いのが 「長すぎて暇だった」 という意見です。 そしてそんな子どもたちに、保護者さんたちがつい与えてしまいがちなのが、テレビゲーム・スマホゲームではないでしょうか? 僕の教室にも3人のゲーム大好き少年がいる。 正確には「ゲームが大好きだった少年」になるのだが(僕に半ば強制的にやめさせられたため)、彼らは小学校に入学前から1日に数時間、それもほぼ毎日やってきたそうだ。 1人は

とあるツイートに対する反論〜ゆっくり丁寧な授業で子どもは伸びるのか〜(8min)

とあるツイートについて 少し前の話になりますが、Twitterを見ていると、教育業界において全国的に有名なある先生が、このように呟いていらっしゃいました。 言いたいのは、ゆっくり丁寧な授業で子どもは伸びるのかということ。伸びない授業を受けるということは、子どもにとってどうなのかということ。 これには驚いた。 ツイートではやや濁して書いてあるが、その真意を僕なりに解釈するとつまり 言いたいのは、ゆっくり丁寧な授業では子どもの学力は伸びないということ。伸びない授業を受けると

子どもの能力は遺伝か?環境か?(2min)

先日行ったセミナーの中で、保護者さんからこんな質問が出た。 うちの子は、私にも主人にも似てなくて…なかなか自分で計画を立てて、勉強を進めることが苦手なんです。どうすれば治りますか? このような「親に似ている・似ていない」の質問が出ると決まって僕は、子どもたちにとっての「遺伝と環境」の話をすることにしている。 名古屋大学大学院の山形伸二先生(当時は九州大学)らの研究によると、「中3時点での学力」と「大人になってからの年収」の約30〜35%は遺伝的要因で、残りの約65〜70

小学生に宿題をさせても成績が上がらないただ1つの理由(3min)

だんだんと世間に浸透してきた「小学生にいくら宿題をやらせても成績が上がらない」という事実。 これをなかなか受け入れ難い先生や保護者さんたちもいるだろうけど、日頃から子どもたちが宿題をやっている姿をよーく見ている人なら「そりゃそうだよね」って納得できていることだろう。 それではなぜ小学生が宿題をやっても成績が上がらないのだろうか。それは簡単。 子どもたちにとって宿題は「単なる作業」だからだ。 子どもたちの学校の宿題はどんなものがあるだろうか。 おそらくほとんどの学校で出さ

「思考力」の正体とは。(3min)

いまの子どもたちに必要で、それなのに身についていない子が多いと言われている「思考力」。 「考える力」と言い換えられることも多いけれど、そもそも思考力って何なのかをしっかり定義してくれているものは意外と少ない。 どんぐり倶楽部の糸山泰造先生はこの思考力を「複製(Copy)、移動(Move)、変形(Change)、比較(Compare)」の4つだとお話されていた。たとえば 10個の卵が入ったパックが6つあります。賞味期限内に食べきるのは難しそうなので、3パックはご近所さんにあ

テストの点数だけで子どもの学力を測らないで。

子どもの学力とテストの点数教育を仕事にしていると、僕らにとっての当たり前が、保護者さんにとっての当たり前ではないんだな、と感じることが多くある。その1つが 「子どもの学力=テストの点数・学校の成績」じゃない ってこと。 去年の12月以降僕は、多くの保護者さんに小学生の学力の現状や正しい学び方について知ってもらうため、2ヶ月に一度のペースで教育セミナーをやっている。 そのセミナーにはもちろん教室に通ってくれている子の保護者さんも来てくれるが、「教室に興味はあるがまだ通って

現代の子どもの遊びは大丈夫か?(2min)

僕がはじめて書いたnoteは、子どもたちの「ゲーム」という遊びに対する個人的見解だった。 「できるだけゲーム以外の遊びをしてほしい」 そこではそう綴っていたが、その後もたくさんの子どもたちの様子を見たり、保護者さんたちとお話する中で、いまその気持ちはより強まっている。 ある保護者さんと、お家での遊びについて話をしていた。 先生、いまはもう放課後お友だちと集まって一緒に遊ぶことは無いんですよ。 それぞれの家から電話をかけて「今からゲームをしよう」って約束して、ゲーム上で

「褒めて伸ばす」 自己肯定感に潜む罠。(6min)

一人歩きする「自己肯定感」思えば、2010年頃から「自己肯定感」という言葉をよく聞くようになった。 なんでも、日本の子どもたちは諸外国の子どもたちに比べて、自己肯定感が低いのだとか。 この自己肯定感が低いと、 些細なことで傷つきやすかったり、対人関係で過剰な気を遣ったり、場合によっては反社会的行動をとりやすかったりするようなので(松尾, 2001) 文部科学省もこれまでにいろんな対策を講じてきている。 ただ最近、この「自己肯定感」という言葉が一人歩きしてしまっているような

「子どもがやりたがるから」を言い訳にしないで。(2min)

うちの教室では年に3回、個別での保護者懇談会を実施している。 ここでは僕から保護者さんたちへ、日頃の授業の成果や子どもたちの変化をお伝えするのだが、それ以上に僕が大切にしていることがある。それは「お家での子どもたちの様子を聞くこと」だ。 僕が子どもたちと一緒に過ごせるのは週に1〜2時間ほど。こんな短い時間ではどんなに観察をしても気づけないことは山ほどある。 だから保護者さんたちからその子のお家での時間の使い方や様子を教えてもらうことで、その後の教室での声かけ方や勉強の進め方

音読よりも国語力を伸ばす方法。(6min)

小学生の音読という宿題の危険性については以前にnoteしたが、今日は「じゃあ音読の代わりに何をしたらいいの?」というお話。 音読の問題点音読という宿題がなぜ危険かというと、子どもたちが、文章を読む本質を「内容の理解(イメージ化)」ではなく「発声」だと思ってしまうからだった。 もしこれが身についてしまうと、どんな文章もじっくりと味わったり、愉しんだり、内容を吟味したりできなくなってしまう。 そして中高生になったときに、文章を読んでも「自分が理解できているのか、理解できていない

僕が徹底反復させるのをやめた理由。(6min)

子どもたちと一緒に学ぶこの仕事に出会って早10年、どうすれば子どもたちがもっと勉強が得意に、そして好きになるかずっと考えてきた。もちろんそれは現在も進行中。 今回はそんな僕がなぜいま授業で小学生に徹底反復練習をさせていないか、というお話をしようと思う。 徹底的な大量反復練習何を隠そう、数年前までの僕の指導の仕方は「とにかく身につくまで何度も何度も徹底的に反復する」をモットーにしていた。 なぜならうちの教室には、計算すら満足に出来ない、漢字すらまともに読み書きできない子たちが