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絵本日記DAY21 デリバリーぶた

たべものを描く絵本のなかでも、加藤休ミさんの作品は最近とくに好き。お名前からどうもカトちゃんを想像してしまうのだけど、北海道出身の絵本作家さんです。

同作者の『きょうのごはん』もよだれが思わずたれてしまいそうな作品ですが、今年の6月にでた『デリバリーぶた』に出てくるメニュウも、とてもとても魅惑的。

加藤さんの絵本をよむ前に、わたしから、ひとつお願いというか、注意を述べておきます。それは、「たべちゃだめ」という状況下にあるかたは、そういうのが終わってからよんでください。たとえば、あなたがボクサーで、明日階級を決めるための体重測定があるとか、健康診断のため水以外はダメです、とお医者さんに言われている場合、とか。加藤さんが描くそれはそれは美味しそうなごはんを見て、うっかりたべてしまったとしても、一才責任は取れませんので悪しからず。

わたしが言いたいのはつまり、それくらい、彼女の絵本はものすごい迫力であなたの食欲を掻き立てますよ、ということです。

クレヨン作家、とプロフィールにのっていましたが、力強いタッチで、ダイナミックにごはんが描かれているのが特徴です。

今回の絵本では、ぶたがいろんな人のところに、トンデモなく美味しそうなご飯をお届けする、というおはなし。ぶた、というところがポイントで、この配達する動物は、犬でも猫でも、だめなのだと思う。ぶたでないと。ところでこのデリバリー、「○○がたべたいよー」とつぶやけばぶたが自転車を飛ばしてやってきてくれるシステムのようで、なんとも羨ましい。

海の上にいる漁師さんが、

「まいにち たいりょう。とれたての さかなをたべるのが、おれの たのしみ。 でも、きょうは やいた にくが たべたいな。ああ、この ひろい うみのうえで たべたいなぁ。」

とつぶやくと、やってきました!焼き鳥をもった、ハチマキ姿のぶたが。テーマソングでも流したくなるくらいの、ヒーローっぷりです。この焼き鳥がまた、美味しそうなこと。これは絶対、丹精こめて下処理された国産の地鶏で、じゅわじゅわと炭火焼きにして、塩をバッとふったもの。じゃなきゃ、こんな焼き加減にはならない。ごろごろしたでっかいもも肉に、完璧な焼き目のネギ。天才!!しかも、てりてりのつくねはおまけ、だなんて、ぶたさんのお店はどこにあるのですか?何区ですか?

エベレストかな、キリマンジャロかな、冬山アタックに成功した登山家が、

「やったぞ!ここが てっぺんだ。でも さむいよー。ああ、いま、あたたかいものが たべたいよー。」

と山に向かって言うと、こんなところまできました、我らのヒーロー!自転車のペダルに乗せた足?ひづめ?は裸足で、さむそうだよー。

あつあつの、ラーメン、おまちどおさま!って、冬山でたべるラーメンほど、美味しいものはないのです。麺は中太、スープは濃いめの醤油。自家製チャーシューに、ややしなしなのメンマが三本、程よい量のネギは輪切りと細切りのダブルサービス。ザ!なビジュアルのしょうゆラーメン。ああ、たべたい・・・。

その後も、山の仕事に精を出すおじいさんに、こってこてのあまーくて心が大満足するようなアイスクリームを届けたり、世界各国のお友達を呼ぶランチパーティーに、どんな料理でおもてなししようか迷っているお姫さまに、色とりどりの美しいのり弁を届けたり。豚の角煮やポテサラ、海老の煮たの、いか飯(これ北海道の名物ですね)などが上品につめられていて、素晴らしいセンス。あと個人的に、この依頼主のお姫さまのドレスの柄がとても好きです。おそらくひっかき絵(クレヨンで下地の色を塗り、そのあと真っ黒に塗りつぶし、描きたい模様を竹串や釘で引っ掻いて出す、という技法のこと)だと思うのですが、とても綺麗。

お届けする場所と料理がミスマッチなのに、だからこそ、かな、誰もが大喜びする、というのが、この物語の面白いところ。


日記を書くためにぱらぱらと絵本をめくっていたら、はじめにみなさんに注意などしておきながら、わたしが一番、お腹がすいてしまった・・・。

焼き鳥と醤油ラーメンがたべたいよーーー。


デリバリーぶた 2021年6月初版第1刷 作者/加藤休ミ 発行所/偕成社

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