見出し画像

絵本日記DAY 19 あたしもすっごい魔女になるんだ!

ひさしぶりの絵本日記。もうすぐハロウィンだからかな、図書館で面置きされていたので手にとってみました。

「すっごい」魔女、というのが、この物語の肝。

すっごい、っていう訳、とってもいい。

この絵本の原題をネットで探したけれど、見つけられなかった。金原さんは、なんの単語を「すっごい」、と訳したのだろう?

金原瑞人さんの和訳は、「いんづい」ところがないんです。えーと、標準語にするとなんだろう、なんというか、着心地がわるいところがない。ちくちくするところや、ちいさな違和感がなくて、外国の著者が書いた文体がすっと読める。

小学校高学年のとき、金原瑞人さんが訳した『青空のむこう』(アレックスシアラー作)を読んで、もう、感情の制御がきかないほど、めちゃくちゃに泣いたのを覚えている。あの本以上に、泣いた本は未だないのではないかしら。

小学生の男の子が、自転車事故で突然死んで、気づいたら天国にいました、というところからはじまる物語。「ぼく」は御法度を犯して、死者の国から飛び出し、『やりのこしたこと』を終わらせにいく、というファンタジー。そのやりのこしたこと、というのが、お姉ちゃんとの仲直りで、事故にあう直前、大好きなはずの家族にひっどい言葉を浴びせてそのまま死んじゃうなんて、もう死んでも死にきれないとはまさにこのことだよね。

私にも弟が二人いて、上の弟のほうとは歳も近いのでそれなりに喧嘩もしていたと思うし、それでもう、ダムの決壊のごとく泣いたのでした。

そこまで心を揺さぶるのは、やはり金原さんの成せる業。「ぼく」が、ライトな語り口の、英語で話しているのはわかる。それなのに違和感なく「ぼく」から日本語で話しかけられていると感じる。言うなれば金原さんは、脳内同時通訳を助けてくれる翻訳者、なのだ。

だからこそ、とても読みやすく、わかりやすく、情景が浮かびやすい。これって、児童文学にはやっぱりものすごくだいじなことなんだろう。人気の本の翻訳者の名前が、たいていこの方なのもうなずける。

『青空のむこう』、大人のかたにもおすすめです。あまりこういう紹介のしかたは好きではないのだけど、でも「泣きたい」時にどうぞ。思いっきり泣いて、お腹がすいた、空は青い、私は生きてる、前を向こう!という気分になるはず。そういう、希望をちゃんと見せてくれる物語です。


あれ、ちがう本のはなしになってしまった。

話を肝に戻します。

この絵本の女の子、たしかに「すっごい」んです。こっそりママ(上級魔女)の薬びんをくすねて、ネズミをほこりにかえちゃったり、ママもカエルに変えちゃった!「やった。これで すきなことが できる!」、ですって!

しかもちょっとあなた、カエル(ママ)を足で蹴飛ばしてドアから追い出すなんて、なんとまぁ。これくらい肝が据わってなければ、魔女にはなれない、ということかしら。

すったもんだのあと、ママは無事ママに戻り、やっぱりママはすごいと思うことがおきて、あたしもすっごい魔女になるんだ!というわけ。


私がこの「すっごい魔女」を訳すならば、

・ちょっとやそっとじゃへこたれない

・友達になりたいほどすっごい 

・クレイジー

・はちゃめちゃ

・どうしようもないくらいたのしいこと好き

・なんでもできる、変身させるのなんてお茶の子さいさい

・呪文まちがえても気にしない、あたしのせいじゃない、とか言いそう

・呪文であの人を好きにさせちゃうこともできる

な、魔女、といったところでしょうか。


この絵本の原題を知りたくてしょうがない。多分フランスなのかなぁ?

ただいま魔女見習い中のわたしがいつかほんものになれたら、突然と閃くのかもしれない。



魔女のえほん あたしもすっごい魔女になるんだ!・2004年10月5日第1刷発行

作・ミッシェル・ヴァン・ゼブラン 訳・金原瑞人 株式会社小峰書店


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?