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コズエの鬼ゴリ絵本日記

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出逢った絵本の考察や感想をここに書きためています。(鬼ゴリ:動詞。鬼のようにゴリゴリと書く、の意。いまだ鬼はあらわれておりません)
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#絵本日記

絵本日記DAY27「まちねずみのジョニーのおはなし」/都会のジェントルマンと田舎の紳士

みなさまこんにちは。あっという間に四月も半ば、いかがお過ごしですか。私の住む家の目の前は小学校、校庭にぐるっと植えられた桜がいままさに満開で、とても綺麗です。もうすこし経つと、うちの玄関の前は桜の花びらでいっぱいになることでしょう。 さて今日は、おそろしくぼろぼろな、机に置いたままになっていたちいさな絵本を手にとって読んでみたところ、おどろくほどおもしろい物語でしたので、日記にのこしておくことにします。 ピーターラビットでおなじみビアトリクスポターの、「まちねずみジョニーの

絵本日記DAY25「うるさいぞ・・・」/Someone、の正体

このまえの金ようび、宮沢賢治の絵本について書きたい記事があり、最近いいなと思っているミキハウスから出版されている絵本をもとめて大手チェーンの本屋さんへ行きました。ところが、宮沢賢治の本はおろかほとんどがわたしの苦手なタイプのしつけ絵本。がっくりとし、でもきょうはカレーだ、とおもったらさいご口のなかがもうカレーになっているのとおなじことで、すこし意地になっていたわたしはそのまま別の本屋さんへと車を走らせたのでした。 15分ほど運転し、たどり着いた本屋さん。ここは観光施設や市場

絵本日記DAY24「ベンジャミン バニーのおはなし/THE TALE OF BENJAMIN BUNNY」

今日は、おとこのこって、どうしてこうなのかしら、とおもわずにはいられない、ふるくてでも普遍の、うつくしい物語のことを書きとめていきます。 1、石井桃子さんについて ピーターラビットシリーズの翻訳は、石井桃子さんという翻訳家、児童文学作家により織りなされています。石井桃子氏による功績はたいへんに大きく、『プー横丁にたった家』『うさこちゃんシリーズ』、『たのしい川べ(岩波少年文庫)』など数々の名作は、私などが言及するまでもありませんが、日本の宝物です。 石井桃子氏は、101

絵本日記DAY23「そよ風とわたし」/絶賛魔女修行中によむべき絵本

こんにちは。きょうは魔法学校卒業生のわたしから、同志のみなさんへ、必読絵本をご紹介したいとおもいます。 この絵本は、とある駅ビルの、お洋服やさんのすみっこのほうに置かれていた、古本棚の奥のほうからひっぱりだしてみつけた本です。 こういうとき、わたしの魔女センサーがぴん、とはたらきます。そしてそれはたいてい外れません。この古本屋には、お宝の絵本があるぞ、というセンサーです。ついでにいうならば、ここのお店はおいしいぞ、も、ほとんど外れません。 それで、この絵本を奥のほうから

絵本日記DAY22「なめとこ山の熊」/登場人物の眼、について

あけましておめでとうございます。鬼のようにゴリゴリと絵本日記を更新する、というコンセプトのこのマガジンも、3年目に突入しました。未だ、鬼は現われておりません。どうせ来てくれるのなら鬼よりも福の神のほうがもちろんいいのだけど、今年は(こそ)、心を鬼にしてたくさん更新してまいります。と、ここに誓って2022年の絵本日記をはじめたいと思います。 1、宮沢賢治と猟師について 今日の絵本は、宮沢賢治作「なめとこ山の熊」です。岩手県民として、宮沢賢治の話を知らないのは恥ずべきことだ、

絵本日記DAY21 デリバリーぶた

たべものを描く絵本のなかでも、加藤休ミさんの作品は最近とくに好き。お名前からどうもカトちゃんを想像してしまうのだけど、北海道出身の絵本作家さんです。 同作者の『きょうのごはん』もよだれが思わずたれてしまいそうな作品ですが、今年の6月にでた『デリバリーぶた』に出てくるメニュウも、とてもとても魅惑的。 加藤さんの絵本をよむ前に、わたしから、ひとつお願いというか、注意を述べておきます。それは、「たべちゃだめ」という状況下にあるかたは、そういうのが終わってからよんでください。たと

絵本日記DAY20 おつきさまこんばんは

きょうは新月だけどまんまる満月の絵本のことを書くという、ちょっとヘンテコな日記にしたいと思います。 わたしが人生ではじめて”絵本にふれた”とはっきりと自覚があるのは、林明子さんの『おつきさまこんばんは』です。 「だめだめ。くもが かくれちゃう」 舌ったらずで、いっちょまえに朗読しているビデオが、今も実家にのこっています。白い手はぷくぷくとして、顔はまるでふうせん、腕にはわごむをはめているのかしら思うほど。 わたしのお月さまずきは、ここからはじまったのではないかと、最近

絵本日記DAY 19 あたしもすっごい魔女になるんだ!

ひさしぶりの絵本日記。もうすぐハロウィンだからかな、図書館で面置きされていたので手にとってみました。 「すっごい」魔女、というのが、この物語の肝。 すっごい、っていう訳、とってもいい。 この絵本の原題をネットで探したけれど、見つけられなかった。金原さんは、なんの単語を「すっごい」、と訳したのだろう? 金原瑞人さんの和訳は、「いんづい」ところがないんです。えーと、標準語にするとなんだろう、なんというか、着心地がわるいところがない。ちくちくするところや、ちいさな違和感がな

絵本日記DAY2 ごはん、かさ、スイカのプール

9月29日(日) 雨。今日も紫波町図書館から。 図書館に行く前にラーメンが食べたくなって、産直に併設されている食堂に並ぶ。 お昼時だったので家族連れで賑わっていて、うーん、また今度にしようかなぁと思っていたら。券売機の前で並ぶ4人と3人、それぞれ二家族の方たちが、二人掛けの席しか空いてないからお先にどうぞ、と声をかけてくださった。 7人のお顔が一斉に振り返ってこちらを見ている。私がまごまごしていると、おじいちゃまと呼びたくなるような素敵な男性が「回転率を上げましょう」と朗らか

絵本日記DAY 18 おっきょちゃんとかっぱ

立秋が過ぎて、ここ数日は雨つづきの盛岡。そろそろ夏がいなくなってしまいそうなので、あんなにもうたくさんだ、と嘆いていたはずの夏のしっぽをあわててつかまえて、この季節のうちに読んでおきたい絵本を書き綴っておきます。 作者は絵本界の大御所、長谷川摂子さん。 まず、主人公のおんなのこの、「おっきょちゃん」という響き。 おっきょちゃん。 たぶん、子どもたちのエンジンがじゅうぶんに温まっていれば、このすっとんきょうな音に、ここで大笑いが起きるはず。 もし私が年長児のクラス担任

絵本日記DAY17 うみのおまつりどどんとせ

おはようございます。 まいにちまいにちこんなに暑くて、きのうはほんとうに立秋だったのかしら、とカレンダーを思わず二度見してしまった朝です。 さて、今日は、「この暑さと夏休み中盤の気怠さをスカッと吹き飛ばしてもらおうと、特別ゲストをお呼びしています!」と大声で言いたくなるような絵本をご紹介します。 その方とは、ばばばあちゃん、です。 今回のばばばあちゃんのミッションは、小鳥が運んできたてがみに書いてあった、 「かいがんに おおくじらがねていて こまっています。くじらを お

絵本日記DAY16 はじめてのキャンプ

こんにちは。じりじり焦げつくような毎日が続いていますね。 なぜか「意外!」「夏は私の季節って感じなのに」などとよく言われることが多いのですが、私は夏の暑さがほんとうにニガテです。さらに冷房もニガテなので、毎日ほとほとこまっています。 でも、夏の行事は大好き。お祭りのお囃子には血がどくどく騒いでくるし、風鈴の涼やかな音色には手をとめてうっとりできる。 流しそうめんなんて、半ばクレイジーな夏のおたのしみ。 上からホースの水とともに、勢いよくそうめんが流れてきて、それを狂喜乱舞

絵本日記DAY15 もりのへなそうる

これは絵本というよりは、幼年童話。年長さんくらいから聴くとたのしい読みものかなと思います。 兄弟が森を探検するお話なのだけど、おとうとくんの言い間違えがもう3歳くらいの子そっくりで、これは作者の渡辺茂男さんの近くにはだれかモデルがいたにちがいない、と私はにらんでいます。 この童話のキーワードは、ふしぎないきもの•いちごのサンドイッチ•たらこのおにぎり、です。 どういうことかというと、以下に引用します。 おかあさんは いちごを とんとん、とうすくきって、それに はちみつを

絵本日記DAY1 絵本日記はじめました

9月16日(月)雨。 これから鬼のようにゴリゴリと、絵本を読んだメモをここにストックしていきます。今日はしとしと雨の、紫波町図書館から。ここの図書館の司書さんはプロフェッショナルでとってもかっこいい。屋根裏部屋みたいな、読書スペースも最高です。 それではきょうも、はじめます。 ①そとごはん この絵本のあらすじはすべて、この表紙の男の子「ボク」が物語っていますので、多くは語るまい。「そとごはん」って、すごくいい響き。谷川俊太郎さんの訳で、登場人物は「チチ」「ハハ」となっ