マガジンのカバー画像

コズエの鬼ゴリ絵本日記

37
出逢った絵本の考察や感想をここに書きためています。(鬼ゴリ:動詞。鬼のようにゴリゴリと書く、の意。いまだ鬼はあらわれておりません)
運営しているクリエイター

#絵本

絵本考察日記#06/谷川俊太郎さんがつむぐ「生きる」

こんにちは。皆さまお盆休みいかがお過ごしですか。 わたしはというと、今年も91歳になる祖母と父と弟と迎え火をし、線香花火をしました。母は家で天ぷらを揚げていました。ぱちぱちと鳴るそのちいさな光を、耳のおおきかったおじいちゃんはきっとにこにこしながら見てくれたはず。いささかこどもじみている、とおもいながらも、来年もおばあちゃんと線香花火ができますようにと至極真剣に、お願いしました。 小雨が迎え火用のよく燃える木(正式名称知らず)を濡らしましたが、わたしは左手でおばあちゃんに傘を

絵本考察日記#05/こまったさんシリーズ「こまったさんはこまってない」後編

みなさまこんにちは。こちらの記事は、あかね書房人気のシリーズ「こまったさん」「わかったさん」を好き勝手に料理してあれこれたのしむページです。 前編「こまったさんはこまってない」をまだお読みでない方は、ぜひこちらからそうぞ!https://note.com/omusubimusume/n/n79b9131557d5 1、わかったさんはわかってない こまったさんシリーズについて触れる前に、今回は先に姉妹シリーズの「わかったさん」についておしゃべりさせてください。 ・わかったさ

絵本考察日記#03/鳥の眼になって世界をみることへのあこがれ

こんにちは。7月ももう中旬(はやい!!)、いかがお過ごしでしょうか。 連日の大雨による、遠い地の被害がとても心配です。かくいうわたしの住む地域でも、今朝は大雨警報が発令されました。普段から徒歩移動のため、ちょっとバス停まで歩くのも難しそう。それに喉の様子がなんだかヘンで、今日は予定をキャンセルし、ひとつは明日にずらしてもらいました。皆さまも、どうかご無事で。 それで今日は、福音館書店のアカウントで先日行われたインスタライブを拝見し、 絵本『なつやすみ』について書かせていただ

絵本考察日記#02/バムケロ人気のひみつのあじ

こんにちは。今日はにちようび、です。そして、雨、です。 そんなわけで、今日は『バムとケロのにちようび』について書いていこうと思います。 突然ですがわたしは美味しいお料理に出くわしたとき、この味はいったいどんなふうにできているのか、ものすごーく気になるタイプです。 わ、このカレーおいし、なんのスパイス使ってるんだろ。 わ、この味噌汁おいし、出汁はなにで取ってるのかしら。といった具合に。 きっと絵本も、おなじなのだと思います。 目的、例えばいつか自分もベストセラーになる絵本を創り

絵本考察#00『絵本とわたしのこれからについて』

こんにちは。久しぶりのnote更新です。 なぜまたここで絵本について書こうかと思ったかというと、それは明確にズバリ、絵本の世界で生きていくことに決めたからです。 きっかけは、先日訪れた青森八戸にあります八戸ブックセンターで開催中の、「青と森と八と戸」という絵本の企画展でした。好きな絵本作家のひとり、加藤休ミさんの『フライパンヤァ!』の原画(加藤休ミさんの描く目玉焼きやベーコンはどうしてあんなにぐい、と食欲を引き上げられるのでしょうか)、そしてわたしの長年の愛読書『絵本をよん

絵本日記DAY28「クリスマスの三つのおくりもの」/林明子さんってやっぱりすごいよなぁ、の回

こんにちは。みなさまお元気ですか。 なんと、前回の絵本日記、最終更新日が7か月前、と表示されていまして、げげ、とたいへんに驚いた次第です。 さて、最近活動している、「絵本研究室」の出張絵本屋。 今週末の土曜日には、友人の営む素敵な商店(おばあちゃまから受け継いだたばこ屋さんで、ふるく味がある店内には気仙沼の毛糸やフェアトレードやオーガニック商品が並ぶあたらしいお店)のスペースをお借りして、絵本の古本販売とおはなし会をさせてもらうことになりました。あ、絵本ずきのあなたならピン

絵本日記DAY27「まちねずみのジョニーのおはなし」/都会のジェントルマンと田舎の紳士

みなさまこんにちは。あっという間に四月も半ば、いかがお過ごしですか。私の住む家の目の前は小学校、校庭にぐるっと植えられた桜がいままさに満開で、とても綺麗です。もうすこし経つと、うちの玄関の前は桜の花びらでいっぱいになることでしょう。 さて今日は、おそろしくぼろぼろな、机に置いたままになっていたちいさな絵本を手にとって読んでみたところ、おどろくほどおもしろい物語でしたので、日記にのこしておくことにします。 ピーターラビットでおなじみビアトリクスポターの、「まちねずみジョニーの

絵本日記DAY26「ぐりとぐらのかいすいよく」/はじめまして英語版のぐりとぐら

こんにちは。みなさまお元気でお過ごしでしょうか。きのう、おとついと私の住む街は30度近くまで気温が上がったところもあり、全国ニュースに知っている景色が登場したりなんてしていました。あまりに暑かったので、おひるはつめたい納豆蕎麦をいただきました。わんこそばで有名な老舗のお蕎麦やさん、新入社員と思しきスーツ姿の若い女性と男性が、お蕎麦を待つあいだ上司らしき男性と差し障りのない会話をしていて、なんだか私のほうもどぎまぎしてしまった。あたらしいスーツと黒髪の彼らは、眩しかったです。蕎

絵本日記DAY25「うるさいぞ・・・」/Someone、の正体

このまえの金ようび、宮沢賢治の絵本について書きたい記事があり、最近いいなと思っているミキハウスから出版されている絵本をもとめて大手チェーンの本屋さんへ行きました。ところが、宮沢賢治の本はおろかほとんどがわたしの苦手なタイプのしつけ絵本。がっくりとし、でもきょうはカレーだ、とおもったらさいご口のなかがもうカレーになっているのとおなじことで、すこし意地になっていたわたしはそのまま別の本屋さんへと車を走らせたのでした。 15分ほど運転し、たどり着いた本屋さん。ここは観光施設や市場

絵本日記DAY24「ベンジャミン バニーのおはなし/THE TALE OF BENJAMIN BUNNY」

今日は、おとこのこって、どうしてこうなのかしら、とおもわずにはいられない、ふるくてでも普遍の、うつくしい物語のことを書きとめていきます。 1、石井桃子さんについて ピーターラビットシリーズの翻訳は、石井桃子さんという翻訳家、児童文学作家により織りなされています。石井桃子氏による功績はたいへんに大きく、『プー横丁にたった家』『うさこちゃんシリーズ』、『たのしい川べ(岩波少年文庫)』など数々の名作は、私などが言及するまでもありませんが、日本の宝物です。 石井桃子氏は、101

絵本日記DAY23「そよ風とわたし」/絶賛魔女修行中によむべき絵本

こんにちは。きょうは魔法学校卒業生のわたしから、同志のみなさんへ、必読絵本をご紹介したいとおもいます。 この絵本は、とある駅ビルの、お洋服やさんのすみっこのほうに置かれていた、古本棚の奥のほうからひっぱりだしてみつけた本です。 こういうとき、わたしの魔女センサーがぴん、とはたらきます。そしてそれはたいてい外れません。この古本屋には、お宝の絵本があるぞ、というセンサーです。ついでにいうならば、ここのお店はおいしいぞ、も、ほとんど外れません。 それで、この絵本を奥のほうから

絵本日記DAY22「なめとこ山の熊」/登場人物の眼、について

あけましておめでとうございます。鬼のようにゴリゴリと絵本日記を更新する、というコンセプトのこのマガジンも、3年目に突入しました。未だ、鬼は現われておりません。どうせ来てくれるのなら鬼よりも福の神のほうがもちろんいいのだけど、今年は(こそ)、心を鬼にしてたくさん更新してまいります。と、ここに誓って2022年の絵本日記をはじめたいと思います。 1、宮沢賢治と猟師について 今日の絵本は、宮沢賢治作「なめとこ山の熊」です。岩手県民として、宮沢賢治の話を知らないのは恥ずべきことだ、

絵本日記DAY20 おつきさまこんばんは

きょうは新月だけどまんまる満月の絵本のことを書くという、ちょっとヘンテコな日記にしたいと思います。 わたしが人生ではじめて”絵本にふれた”とはっきりと自覚があるのは、林明子さんの『おつきさまこんばんは』です。 「だめだめ。くもが かくれちゃう」 舌ったらずで、いっちょまえに朗読しているビデオが、今も実家にのこっています。白い手はぷくぷくとして、顔はまるでふうせん、腕にはわごむをはめているのかしら思うほど。 わたしのお月さまずきは、ここからはじまったのではないかと、最近

絵本日記DAY 19 あたしもすっごい魔女になるんだ!

ひさしぶりの絵本日記。もうすぐハロウィンだからかな、図書館で面置きされていたので手にとってみました。 「すっごい」魔女、というのが、この物語の肝。 すっごい、っていう訳、とってもいい。 この絵本の原題をネットで探したけれど、見つけられなかった。金原さんは、なんの単語を「すっごい」、と訳したのだろう? 金原瑞人さんの和訳は、「いんづい」ところがないんです。えーと、標準語にするとなんだろう、なんというか、着心地がわるいところがない。ちくちくするところや、ちいさな違和感がな