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世界一の一枚岩、エルキャピタンの伝説とハーフドームの絶壁

アメリカ西部 バイク旅 3

エルキャピタンのクライマーを観戦

 ヨセミテ国立公園内のカーリービレッジ(9010 Curry Village Drive, Yosemite National Park, CA)をベースキャンプにして、1992年10月12日に到着してから16日の朝まで、4泊5日のあいだヨセミテ国立公園に滞在しました。到着翌日は、バイクでエルキャピタンがよく見えるキャピタン・メドウズに行って、ゆっくりクライマーを観戦しました。
 キャピタン・メドウズはヨセミテ唯一のキャンプ場(テント持ち込み)のほど近くにあり、一枚岩のエルキャピタンの南西壁と南東壁の境目の突端部の真下にあります。ここを起点に、ノーズ(THE NOSE)という最もポピュラーなクライミングルートがあります。エルキャピタンの初登頂したのはウォレン・ハーディングら(1958年)で、このノーズをルートにして登頂に成功してます。

クライマーを見る人たち

 スピードクライミングへの挑戦では、2008年10月12日に日本のプロ・フリークライマー平山ユージが、同じノーズのルート(5.14a・31ピッチ)をパートナーのハンス・フローリンと、2時間37分5秒で登り、世界最速記録を更新しています。ベンチに腰を下ろしてカメラの望遠レンズでノーズのルートの頂上直下を見ると、やっと存在が分かる程度に小さくクライマーが見えます。南東壁のど真ん中にもクライマーが見えます。ただし遠すぎて、彼らのクラミングテクニックやスタカットなどのロープワークははっきり見ることができないのが少し残念。
 現在、エルキャピタンには70以上のクライミングルートができていて、春から秋にかけて常に何十人ものクライマーたちが登頂に挑戦しています。登頂に要する時間は平均4~6日で、高度が比較的低く天候に恵まれている場所なので、より難しい山に挑戦するクライマーにとって格好の練習場所になっています。また、クライミングをしなくても頂上まで歩いて行けるトレイル1日コースもあります。

トップにクライマーが見える

トゥートッカンオーラーの伝説

 その昔、エル・キャピタンはネイティブ・アメリカンから、To-to-kon oo-lah(トゥートッカンオーラー)と呼ばれていてました。こんな伝説があります。もともとトゥートッカンオーラーは人の背丈よりも低い、小さな岩でした。ある日、母熊と2頭の子グマがマーセド川を散歩していました。熊たちは食べ物を探していて疲れたので、マーセド川沿いにあった大きく平らな岩の上で休んでいるうちに眠ってしまいました。次の朝、熊たちが目をさますと、小さかった岩は月まで届きそうな高さに成長していました。熊たちは降りられないので、しかたなく助けを待つことにしました。
 森の鳥や動物たちは熊の母子が岩のてっぺんにいるのを見てびっくりしました。動物たちは熊たちを助けようとしましたが、頂上まで登るのは大変なことでした。最初にネズミが挑戦しましたが登れません。次に大ネズミが挑戦し、ちょっと高く登りましたが途中であきらめました。それから狐、カラス、そして他の多くの動物たちが挑戦しましたが、誰も岩のてっぺんまでたどり着けません。最後に、シャクトリムシの番が来ました。シャクトリムシは「私は熊たちを助けに、この岩に登ることができる」と言い、自分の挑戦がはったりでないことを動物たちに説明しましたが、動物たちはシャウトリムシを笑いものにしました。

ジャイアントセコイアの森にはリスがいっぱい

 しかし、シャクトリムシは気にしません。歌を歌いながら何日もかけて岩を登り、ついに岩のてっぺんにたどり着きました。しかし時すでに遅く、熊たちは飢え死にしていたので救うことは出来ませんでした。シャクトリムシはしかたなく、熊のあばら骨を一本持って岩を下りました。
 動物達はシャクトリムシの話をきいておどろきました。そして、踊りを踊って熊の母子の追悼をしました。それ以来、この大きな岩はこの小さな虫を讃えてトゥートッカンオーラーと呼ばれるようになりました・・・・・と言うお話です。
 前述のロープワークのスタカットは、シャクトリムシのように交互にロープを伸ばして登ってく登攀技術です。
 ということは、ネイティブ・インディアンは、スタカットの登攀技術を知っていた? ひょっとすると、すでに彼らはエルキャピタンを登頂していたのではないか?などと想像が膨らんでいきます。
 なお、スペイン語のエル・キャピタン」は、「岩の族長」を意味するスペイン語からとった名前だそうです。

ヨセミテ滝

グレィシャーポイントの夕日

 こちらはカーリービレッジからキャピタン・メドウズに向かう途中の、サウスサイドドライブからの眺めです。 北アメリカで一番高い739mの落差のヨセミテ滝が見えます。ヨセミテ滝はUpperYosemiteFall (436m) と、LowerYosetmiteFall (97m) 、そしてその間のCascade (206m) からなります。この時期は残念ながら、滝に水はなかったのですが、水の多い時期には月が明るい15夜の前後の夜には月の光で虹が見られるそうです。
 今度は滝のある水の多い時期に来てゆっくり見てみたいもんです。いい天気なのでこのあと、マーセド川沿いにバイクで下って「スウィンギングブリッジ」にやってきました。これはマーセド川にかかる木製の小さな橋で、山並みの眺めが良い場所です。また、人や自転車のみ通行できます。くねくね道を登って、グレーシャーポイント (Glacier Point)にやってきました。カーリービレッジの南にそびえる断崖(標高差960m)の上、標高2,164mからヨセミテ渓谷を一望でき最高の眺めです。 ハーフドーム、エル・キャピタン、テナヤ渓谷、バーナル滝、ネバダ滝等、多くのスポットを眺めることが出来ます。また、自分たちがベースキャンプにしているカーリービレッジを展望台の真下に眺めることができます。

グレィシャーポイント

 夕方、トンネルビューというポイントにやってきました。渓谷が一望できる、ヨセミテで一番人気のポイントで、ここからは道路などの人工物が見えないよう工夫されていています。ヨセミテバレーの奥にハーフドームが見えます。ハーフドームは、ヨセミテ渓谷に面する北西側が垂直に削られ、南東側は丸みを帯びている半球を縦に割ったように見えるのでハーフドームという名前が付けられた巨石です。翌日(14日)はカーリービレッジでのんびり過ごしてレストして、10月15日にハーフドームに登頂することにしました。

ハーフドーム(左)とリバティキャップ(右)

ヨセミテバレーからリバティキャップ

 滞在4日目の1993年10月15日、ヨセミテのシンボルとして有名なハーフドームのてっぺんにアタックしました。ハーフドームは、ヨセミテバレーの奥に堂々たる姿を見せている大きな岩山で、丸いドーム(岩)が氷河によって削り取られ、縦に半分スパッと切り取ったような形からこう呼ばれています。スパッと切り取られた壁はクライミングルートとして有名ですが、丸い方からは歩いて登ることができます。登山口から頂上までの距離は全長13.1km、標高差1,463mの片道6時間コースです。5月から10中旬の間だけ登ることが許可されてます。

サブドーム

 朝5:00に起きてカーリービレッジを6:10に出発しました。6:30にHappyIsles(ハッピーアイランド=中州?)の少し手前にある登山口につく頃には明るくなってました。6:50にバーナル橋を渡り、バーナル滝の前を通過、10月なので滝の水量は少なめでした。このへんの道は段差の大きい石の階段になっています。しばらく進んでいくともう一つの滝が見えてきます。8:40にネバダ滝に到着。これを越えるといったん緩やかな下りになります。川沿いの平坦な道を進んでいくとやっとハーフドームのまるい背中が見えてきます。シルバーエプロンで再びマーセド川をわたり、9:30にリトルヨセミテバレーで一休みです。このあたりからはリバティーキャップという岩山が良く見えます。リトルヨセミテバレーあたりから、ハーフドームの切り立った断崖絶壁が見えてきてテンションあがります!

120mの岩登り

ハーフドームの絶壁 

 サブドームに11:00に到着、ここはは整備されていて階段状のスイッチバックをひたすら登ります。サブドームのテラス上ではこれから始まるケーブルルートを前に休憩している人たちでにぎわっています。
 最後に45~65度の傾斜の岩を120m登ります。岩肌に取り付けられたケーブルをつかんでよじ登っていきますが、ハーネス(岩登り用の安全帯)を装着して登っている人もいます。ついに12:40に頂上到達!到着した頂上の向こう側は絶壁で、大きな岩が少しだけ絶壁を超えて空中に突き出ています。グレーシャーポイントとは違う達成感がありました!!先っちょに座り込むと、けっこう怖くて腰が引けてますが、せっかくなので写真を「パチリ」。先っちょから壁の下を見下ろすと、さすがにすごい高度感を感じます。私が登頂したころはだれでも自由に登れてましたが、2010年以降は登山ルートにあるワイヤーの安全対策として、一日の入山者が400人に制限されるようになり、パーミット(許可証)が必要となったそうです。30分ほど休憩して13:10に頂上を出発、リスやシカに遭遇しながら森の中を歩きまくって、17:20にカーリービレッジに帰ってきました。
 いまおもえば、この日見た景色のどこかにジョンミューアトレイルの入り口があったはずです。いつかは、ジョンミューアトレイルを踏破したい、これが「かなえたい夢」かな………

ハーフドームの絶壁

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