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11 「夜の停車駅」というかつてNHK・FMで放送されていた番組・・あれはいつだったか

 日曜日の23時。もう明日が来ることを諦めていた時刻

 1980年ごろ毎週日曜日の23時、NHK・FMで「夜の停車駅」という番組が放送されていました。
 語りは俳優の江守徹さん

 日曜日がお休みで明日の朝登校や出勤の人たちは、迫り来るブルーマンデーに夕方から怯え出し、布団に入って寝入るまでその恐怖と戦うのです。

 僕はその恐怖との戦いから逃れるため、日曜日は夜遅くまでバイクや電車で出掛けて自宅に帰りませんでした。

 「日曜日の夕方だけでこんなに辛いんだ、人生はもっと辛いよな〜」
なんてアホなことを考えて。

 それでも後ろめたくソロソロと帰宅。
 風呂入って部屋を暗くして最後のシェルターに逃げ込むのです。

 「夜の停車駅

 江守さんの穏やかな語りと、オープニングとエンディングのラフマニノフのヴォカリーズ。

 特にエンディングのヴォカリーズはアンナモッフォの唄声が心穏やかにしてくれました。その日の番組の構成によって長く聴ける時もあればすぐ終わってしまうこともありましたね。
 
 できるだけ長く聴いていたい。そのほうが心穏やかに眠れる。時には番組の途中で寝入ってしまうこともありました。 

 「夜の停車駅」の風景

 きっと新幹線の駅ではなく都市のターミナル駅でもない。地下鉄の駅でもない。自分が毎日乗り降りしている小さな最寄駅でもありません。
自動改札? もちろん無いって、です。数少ない乗降客はみんな見知らぬ人。
 
 番組オープニングの効果音には、遠く蒸気機関車の汽笛の音が使われています。それぞれの人にとってとにかく喧騒を離れたどこか懐かしい架空の駅だと思います。そして束の間の銀河鉄道に乗るかのような時間に身を沈めていくのです。

 翌朝目覚めたとき、夕べ束の間に感じた自分の「夜の停車駅」は、最初からなかったんだと残酷な日常が訪れています。

 とても幻想的な番組でした。NHKだから途中にCMが入って雰囲気が壊れることもありません。

 番組の復活? 江守徹さんでなければあの世界は表現できないでしょう。


 



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