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「ミスターどうでしょう」鈴井さんの涙、もらい泣き。

多利田くみ Tarita Kumi

 鈴井貴之さん作・演出の「D-river」を、池袋サンシャイン劇場で観てきた。鈴井さんと言えば、「水曜どうでしょう」のミスター。                    彼の劇団OOPARTSの芝居は、2回目公演からずっと見続けているけれど、どうでしょうディレクターの藤村忠寿さんも役者として出演していて、それがまたものすごく良い味出していて、毎回楽しみにしていた。                                                                                            そして、今回が6回目だそうで。                                                             そもそも私は、チームナックスが大好きなので、鈴井さんが会長をしているオフィス・キューのファンクラブに入っている。その会報誌には、鈴井さんのエッセイが毎回載っているのだけど、郵送された年末号では「色々大変なことがあり、イベントも中止になったりするけどこれだけは確か、OOPARTSは絶対演るから」とあった。                                         だけど…、日に日に増えていく感染者。感染力が強いから、いつ誰が罹患してもおかしくない状況に。東京に住んでいれば、その数にだんだん鈍感になってしまっているけれど、鈴井さんは北海道在住なのだから、やっぱりすごく心配していたんだろうな。                        お芝居は、いつものようにエスプリが効いていて笑っちゃうんだけど、実は社会の一端を鋭く切り取っていて近い将来きっと問題になるだろうな、というのがテーマ。今回は、A.Iが登場。そうして、最後は、ほろり、としちゃう。                                                                              藤村さんの演技も毎回見事で、実は役者になるためにディレクターなどの他の仕事をしてきてチャンスを狙っていたのかも、と思うくらいにしっくり来るし、ご本人は「ポット出」なんて自虐してるけど、今回も演者として役になりきり、彼の本業を忘れてしまうほどだった。                                            ちなみに、OOPARTSでの演技があんまりにもすごいので、私はその後劇団イナダ組に藤村さんが出る時も、必ず拝見してる。こっちはこっちで、なぜかいつも切ない役で、それがまた良いのだけど。                            鈴井さんのことに話を戻そう。カーテンコールの時に、ご挨拶があったのだけど、これがもう・・・。                     「こんなご時世で、来てくれるだけでも嬉しい。空席もあるけれど、それは来たくでも来られない人の席かもしれない。そういう方もいると聞いています。今までずっと芝居やらイベントなどをやって来たけど、今回ほど困難なことはなかった。それだけに・・・こうして、皆様が来てくれることがどんなにありがたいか・・・」                          鈴井さん、涙ぐんでる。会報では、あのようにしたためたけれど、やっぱり上演するまでには、数々の苦労があったんだろう。それを、すべて乗りこえて、今ステージの上。聞いているこちらも、その思いを受け止めて涙が溢れてしまう。他のお客様も、何人もそのような気持ちだったようで、ハンカチを出す音、鼻をすする音があちこちから、聞こえてきた。         「今日は出来たけど、明日誰かが発熱したら、もう中止にするしかない。そんなぎりぎりのところでやってます。だからこそいつも以上に1ステージ1ステージ大切に演じてます」                                         チームナックスの本公演は、去年奇跡のように緊急事態宣言の合間を縫って全公演行われたけれど(例えば大阪公演終了直後に宣言が出たり、東京公演上演直前に宣言が緩くなったりと綱渡りのようだった)、今回はいかんせん感染者が多いので、このままホームグランドである札幌公演まで駆け抜けられるか、本当に心配だろうと思う。                                                                            いつもなら、完売している千穐楽も当日券が出ると言う。感染対策をちゃんとして、笑ったり泣いたりして心を豊かにすれば免疫力も上がると言われているので、私ももう一度行こうと思っている。それが、今まで辛い時に支えてくれたエンタメへの、せめてもの恩返し。                                                                      鈴 井さんの涙は、私の心を動かした。そう、いつも泣かない男だからこそ、その潤んだ瞳は効力を持つ。本当に、気張ってほしいし、エンタメの灯を消さないでほしい。

東京公演は、2月13日(日)までサンシャイン劇場で。

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