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サルバドール・ダリの『いわしのグリル』

シュルレアリズムを代表する芸術家、サルバドール・ダリ。

若きころから数々の作品を世に送り出し、絵画や彫刻作品だけではなくルイス・ブニュエルと制作した映画『アンダルシ アの犬』からおなじみのお菓子「チュッパチャプス」のロゴデザインまで、その才能は多岐にわたります。才能ある人物は早世するとよく言われますが、自らを〝天才〟と表現してはばからなかった彼は意外にも(?)長寿者でした。

画家には長生きが多く、ダリやミロ(九十歳没)、ピカソ(九十一歳没)、マティス(八十四歳没)といった人たちの共通点は地中海沿岸で生活していたこと。サルバドール・ダリもオリーブオイルが好きで、自伝にも

私はオリーヴ油に情熱を燃やし、あらゆるものにそれを用いた。先ず、朝早く、鰯を浮かべたオリーヴ油にトーストを浸すことから始まった

と書き記しています。というわけで今日はスペインやポルトガルで食べられている『sardinas a la parrilla』(イワシのグリル)をつくります。

いわしは魚屋さんで三枚におろしてもらうのが簡単ですが、今日は頭を落として骨付き、まるごと焼きます。

頭を落とします。まな板には魚の臭いがつくのを防ぐためにコピー用紙か新聞紙を敷いておきましょう。

肛門のあたりからまっすぐ腹の部分を落としてしまいます。

包丁の刃先で内臓をかきだします。

お腹を水で洗います。

これで下処理は完了。

地中海風に仕上げる風味材料はケッパーとレモンです。ケッパーがなければレモンだけでもOK。

レモンは搾るだけでもいいのですが、今日は果肉をとりだしてアクセントとして使います。頭とお尻をおとし……。

白いワタと果肉のあいだに包丁を入れます。

皮を剥いていきます。オレンジやグレープフルーツなどと同じ剥き方です。

剥けました。

白いワタにそって包丁をいれて果肉だけを切り出します。この時、手を切らないように注意してください。片側に包丁を入れて、剥がすようにするときれいに果肉が取り出せます。

レモン1個分の果肉です。

そのままだと少し酸っぱいのでハチミツを5g入れて、酸味を丸くします。

もう一つの風味付けはローズマリー。ポルトガルではローズマリーの枝と魚を一緒に焼いて風味をつける料理があります。

葉っぱの部分をつみ、細かく刻みましょう。

たっぷりのオリーブオイル、ローズマリー、塩を振ります。

ここで秘密の材料、酢を振りました。酢は味付けのためではなく、焼いている時に皮がくっつくのを防ぐためです。

充分に熱くした鉄板でイワシを焼いていきます。屋外で炭火で焼くのが一番なのですが、今日はグリル板で焼いていきます。煙が出るので、家庭には向かない調理法なので、最高温度のオーブンか魚焼きグリルで焼くのがいいと思います。

鉄板に魚の皮がくっつくのはなぜでしょうか。それはタンパク質が熱によって、金属と結びついてしまうからです。この現象は熱凝着と呼ばれています。ここでは材料に油をぬることで、金属とタンパク質の反応を妨げ、くっつくことを防いでいます。さらに皮に酢を塗っておくと酸によってあらかじめ皮のタンパク質が変性するために、金属との反応力がなくなり、くっつきにくくなります。

いわしは脂が多い魚。溝がついたグリルで焼くと脂が落ち、おいしく仕上がります。

焼けました。なかなかいい色合いです。

お皿に盛って、レモンの果肉、ケッパー、パセリの葉っぱを散らし、たっぷりのオリーブオイルをかけます。鰯のグリルの出来上がりです。いかにも地中海料理らしいさっぱりとした味わいは白ワインが進みます。

長寿者の多くに共通するのは良質な脂肪分をきちんと摂取していること。不飽和脂肪酸のオリーブオイルはその代表です。年をとると量を食べるのが難しくなるので、少ない量で効率よくカロリーを摂ることが重要になってきます。オイルはその点でも具合がいいのでしょう。

ちなみにグリル板は熱いうちにたっぷりの塩を振っておきます。

あとは亀の子たわしで磨けばきれいになります。塩を研磨剤として使うのです。

きれいになったら水で洗い、火にかけてしっかりと乾かしておきます。


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樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)など。新刊『新しい料理の教科書』が1/17日に発売されました!

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コメント1件

樋口さんの守備範囲が広すぎて、いろいろ驚きの連続です。とても勉強になります!
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