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本気の鶏の水炊きのレシピ

鶏の水炊きは長崎が発祥と言われていますが、じつは出所が不明な料理。そのあたりも興味深いのですが、大きく分けると昆布出汁で野菜と鶏を炊いた鍋(関西系)と鶏のスープで鶏肉を食べる鍋(博多系)の2種類があります。今回は後者のレシピです。

鶏の水炊きはシンプルですがつくるのはそれなりに手間がかかるので、おいしいお店を探して食べに行った方が楽なのですが、作ることで白湯スープのメカニズムが理解できます。

水炊きスープ
 鶏手羽先(スープ用)約1kg
 水 1.5L
 ねぎの青い部分 適当
 塩 適量

鶏ガラを長時間、煮込んでつくるスープは市販の鶏ガラスープとはまったく 別物。一番の違いはゼラチン分。水炊きに使う鶏のスープが白く濁っているのは豊富なゼラチン分が乳化剤になって鶏の脂などが溶け込んでいるからです。(お店によっては少量の米を入れて濃度をつけているところもあります)

ゼラチン分の多い部位をつかうのが手っ取り早いので、お肉屋さんでスープ用の手羽先を購入しました。手羽先は(足などをのぞけば)鶏で最もゼラチン分の多い部位。旨味の相乗効果を狙ってここに昆布を入れたくなりますが、入れると乳化がうまくいかないことがあるので、避けた方がいいでしょう。(昆布のアルギン酸はタンパク質を吸着し、スープを澄ます働きがあるからです)

賛否両論あることは理解していますが、旨味を足したい場合は市販の旨味調味料 (グルタミン酸ナトリウム)を入れた方が簡単ではあります。もちろん、味の素を使うときは食べ た人が気づかない程度の量、使うことが重要。個人的にアミノ酸系の調味料の味が好きではないので今回は入れていませんが、食べる人に応じてケースバイケースで判断しましょう。

スープ用の手羽先はお肉屋さんに頼めば安価で手に入ります。これで350円くらいでした。鶏ガラ+手羽先でもOK。

まずは下処理、沸騰した湯に十秒間通して、表面を殺菌します。

水で表面を軽く洗い流します。

蓋ができる鍋に分量の手羽先と水を張り、強火にかけます。

ネギの青いところがあったので、鍋に入れました。沸騰するまでにアクが多少出てき ます。はじめのアクは取りのぞくことにしましょう。

しっかり沸いたことを確認して、中火に落とし、蓋をします。

吹きこぼれないように注意しながら、強めの火加減で煮ていきます。加熱時間は1時 間。100℃で煮込むことで、ゼラチン分を抽出します。

一時間経ちました。液体は白くなっていませんが、心配はご無用。ハサミで手羽先を半分に切っていきます。加熱したことで多少は切りやすくなっているはずです。力があれば木べらで叩けば砕くことができるかもしれません。

こんな風に骨が露出している状態になります。骨の髄から味が出そうな気がしますが、髄の中心成分は脂肪酸なので、この工程は味ではなくスープに脂を足しているわけです。

火を強めて、木べらでかき混ぜながら5分間~10分間、加熱します。この作業によ って液体の乳化がはじまります。じゃあ、最初から鶏を細かくして煮ればいいのではないか、と思うでしょうが、タンパク質には凝固する際にスープを澄ませる作用があるので(参考『市販のブイヨンからチキンコンソメをつくる』)まずは加熱してタンパク質を完全に固めてしまってから、乳化作業を進めた方が安全です。

スープをとる時の基本は弱火でことこと、ですが、白湯系のスープは油脂分を乳化さ せていくために強火でガンガン煮ていきます。圧力鍋を使うと対流が弱く、上手に乳 化しないので上手に白く濁ってくれません。(実はラーメン店用に開発された攪拌しながら煮る特殊な圧力鍋もあるのですが)

圧力鍋を使って時間を短縮したい場合はまず30分ほど加熱し、その後、骨を砕くなどしたあと、やはり強火でガンガン煮ていけば時間は短縮できます。

さて、ザルでがしがし濾していきます。

塩で味付けします。この液体、劣化する速度が速いので、すぐに食べない場合は氷水
にあてるなどしてなるべく早く冷やすようにしましょう。

ザルでこした肉や皮のかけらもいれてしまいます。この状態でミキサーにかけたほう がお店の味に近づけますが、今回は省略しています。ここで市販のラードを大さじ2 ほど投入し、ミキサーにかけるという裏技もあるので、興味があればお試しくださ い。精製されたラードであれば豚骨のような匂いがないので、ごまかせます。

冷蔵庫で冷やすとこんな感じの状態になります。すごいゼラチン分ですね。

具材には骨付きの鶏もも肉のぶつ切りを使います。肉には塩を振って、下味をつけて おきましょう。

コラーゲンを含んだ液体で肉を茹でていきます。加熱時間は弱火で10分。ゼラチンが筋繊維のあいだに入り込むので、肉にふっくらと火が入る、という巧妙な調理法です。考え出した人はすごいですね。この後、火を止めて20分ほど冷ますと肉がより柔らかくなりますが、今回は省略しました。

最後に泡立て器で混ぜて、とどめの乳化作業を行います。

まずはスープを味わってもらいます。好みで塩を適宜足してもらうようにするといい でしょう。

肉はポン酢とネギで食べます。野菜を入れるとスープの味が薄まるので、投入するな らこの後に。

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樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)料理本『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA)など。