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料理の基本

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基本的な料理を丁寧に解説します
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2018年4月の記事一覧

メレンゲの科学『淡雪卵の作り方』

今日はメレンゲが泡立つメカニズムを復習します。つくる料理は「淡雪卵」(ウフアラネージュ)です。フランスでは浮島という意味の「イル・フロッタント」という名前で、アメリカやイギリスなどに行くと英語のフローティングアイラン ドという名前で提供されています。 材料 四人前 卵白 3個分 グラニュー糖 45g アングレーズソース カラメルクリーム アングレーズソースとカラメルクリームの作り方はそれぞれ カスタードソースの科学『アングレーズソースの作り方』 カラメルの化学「カラメルク

基本のコールスローの作り方

マヨネーズで味付けしたコールスローの歴史は18世紀、アメリカのニューアムステルダム(今のニューヨーク)までさかのぼることができます。オランダからの移民たちがそこでマヨネーズで和える方式を発明した......とか。今日はそんなアメリカ料理の名作、コールスローサラダの作り方です。 さて、キャベツ。写真のような結球のゆるい春キャベツと寒キャベツの2種類が出回っています。今回のコールスローには春キャベツを使うと格別やわらかで美味しいものができます。ちなみに冬のキャベツは持って重たい

ニンジンのラペサラダ

春ニンジンの季節です。ニンジンのラペサラダ(キャロット・ラペ)はビストロ系のお店の定番メニュー。ジョエル・ロブションは『春ニンジンは甘みに乏しいことが多いので、冬のニンジンこそがキャロットラペに向いている』と書いていますが、日本の春ニンジンは甘みが強く、身もやわらか。フランスの小さい目の春ニンジンとは品種が違うからでしょう。 キャロットラペ(レモンとにんにく風味)  にんじん 300g(3本程度)  にんにく 半片(みじんぎり)  レモン汁 大さじ1  オリーブオイル 大さ

カラメルの化学「カラメルクリームの作り方」

みんなが好きなカラメルソース。カラメルという言葉はもともとフランス語の「焦げた砂糖」に由来します。今日はカラメルの原理を復習します。 どんな種類の糖でも加熱を続けると熱によって分解されます。この反応が「カラメル化」です。角砂糖(ショ糖)は無味無臭で単一の分子が集まったものですが、熱を加えることで分子構造が壊れて、4000を越える化合物が生成されます。そこに含まれる様々な芳香成分──アルコールやアセトン、アルデヒド(シェリー酒の匂い)酢酸、ジアセチル(バターの香り)、酢酸エチ

〈豚肉とプルーンの煮込み〉の作り方

今回は豚肉をプルーンと一緒に煮込みます。時間はかかりますが、手間はかかりません。それでは材料です。 豚肩ロース 400g~500g 塩 4g~5g(肉の1%重量) ドライプルーン 140g(今回は無印良品種つきプルーンを使用) 紅茶 400cc 赤ワイン 200cc シナモン 1本 レモン 1個 グラニュー糖 大さじ1 まずは前日の準備です。 ドライプルーンをボウルに入れ、熱い紅茶を注ぎ、一晩、漬け込ん で戻します。紅茶はあまり高級なものでな

洋食風の濃厚ミートソース

以前、紹介した『食育通信式ミートソース』はイタリアンシェフたちのレシピから平均値を導き出した、いわば平均的なイタリアンの味。日本で独自に進化したミートソースは乾麺に絡むように濃厚なもの。今回は洋食店でたまに見かける正調、日本のミートソースをつくります。 味のポイントとなるのはコクと苦味。ビーフシチューのような仕上がりを目指します。 日本のミートソース  牛すじ肉 300g  牛すね肉(またはシチュー用の部位) 200g  玉ねぎ 20

カスタードソースの科学『アングレーズソースの作り方』

料理におけるマザーソース(母なるソース)がドミグラスやホワイトソースなら、デザートにおけるそれはカスタードソース(アングレーズソース)です。Crème anglaiseはイギリス風のソースという意味。学ぶべき科学は卵黄の加熱です。 〈アングレーズソース〉  卵黄 3個分  グラニュー糖 40g  牛乳 200cc  生クリーム 50cc  バニラ棒またはバニラペースト、またはバニラエッセンスかバニラオイル アングレーズソースには普通、卵黄だけを使います。アングレーズソー

ミキサーを使って5分で手作りバター

デンマークのレストラン『Noma』が日本でポップアップレストランを開いた時、彼らが唯一現地から持ち込んだ食材がバターでした。その理由は味ではなく「あまりにも値段が高い」からだそう。バターの価格がなぜ高いのか。一度、生クリームからつくってみるとわかります。 紙パックを振る方法が知られていますが、案外大変です。その理由は手の温度で生クリームが暖まってしまうから。(参考『生クリームの泡立て方』)今日は文明の利器を使いもっと楽にバターをつくる方法をご紹介します。必要な道具 はミキサ

『トマトと紅茶のコンソメ』の作り方

オーストラリア、シドニーにある『Tetsuya's』(現在はそれに加えてシンガポール『waku gin』)は世界ベストレストランに何度も名前を連ねる名店。シェフの和久田哲也氏は日本とオーストラリアのエッセンスを融合させた料理で、世界中から顧客を集めています。 そんなTetsuya'sのシグネチャーディッシュの一つが『トマトと紅茶のコンソメ』で。和久田シェフの著者「オーシャントラウトと塩昆布」(PHP新書)ではこんな風 に紹介されています。 発想の原点は菜食主義者の人のため

朝食にオートミール(ポリッジ)

朝食シリーズです。今日はスコットランドを代表する朝食レシピ、ポリッジ(Porrige)。ポリッジはオートミールのお粥のこと。アイルランドの国民食で毎年、コンテストが開かれているほど。このコンテスト、水、塩、オートミールしか使ってはいけない、という不思議なレギュレーションがあり、それぞれこだわりの混ぜ方などを競い合っているようです。 オートミールはオーツ麦を脱穀し、押しつぶした食べ物。 色んなメーカーから出ています。 砂糖などの混ぜ物が入っていないオートミールが使いやすい

究極のフライドポテトを目指して

世界一のフライドポテトとして挙げられているのはイギリスの三つ星シェフ、ヘスト ン・ブルメンタールの「三段階に調理したフライドポテト」です。英語版のwikipediaに「Triple Cooked Chips」という項目が作られるほど有名になりまし たが、今回はその作り方を参考にしながら美味しいフライドポテトをつくってみま す。 まずはじゃがいもの選択から。じゃがいもは男爵などの水分含有量の少ない= ほくほくした芋と、メークインのような水分含有量の多い=しっとり系にわかれま

生クリームの泡立て方

生クリームを泡立てる、とレシピに書くのは簡単ですが、なぜ泡立つか、不思議に思いませんか? 今日は生クリームの泡立て、いわゆるホイップクリームの科学を復習します。 卵白を泡立てたメレンゲはタンパク質が空気を抱え込む役割を果たしますが、生クリームの構造を支えるのは脂肪分。泡立てることで油滴の外側のタンパク質(カゼイン)の膜が破れ、脂肪が露出した状態になります。脂肪は水に反発する性質があるので、別の脂肪球同士とくっつきます。隣り合う脂肪球同士が結合することで空気を抱え込む構造をつ

酵素の力でやわらか生姜焼きの作り方

生姜焼きは日本のおかずの定番で色々な流儀がありますが、今日はスーパーやわらかい生姜焼きの作り方をご紹介します。生姜焼きのやわらかさのポイントは生姜に含まれる酵素を上手に使うことです。 豚肉の生姜焼き  豚ロース肉 250g  生姜    25g  日本酒  大さじ2  片栗粉  小さじ1  醤油   大さじ2  砂糖   大さじ1  みりん  大さじ2  トマトケチャップ 小さじ1/2  タバスコ   2滴 生姜焼きにはあまりみかけない材料がいくつか入っていますが、後ほど

アスパラガス、茹でるべきか、焼くべきか

アスパラガスのお話の続き。前回、茹で湯を味見すると、かなりの量の香りと旨味が液体に流出していることがわかりました。 アスパラガスの風味化合物は水溶性のため、茹でるという選択肢は合理的ではない、と主張するのはイギリスのシェフ、ヘストン・ブルメンタールさん。ヘストンさんは分子料理に精通したシェフです。分子料理の見地から導き出されたアスパラガスに最適な調理法はバターで焼くこと。 同じく分子料理に詳しいフードライターのハロルド・マギーさんは少し鮮度が落ちたアス パラガスは200c