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「ツリークライミング世界大会」で、ワールドクラスの強者クライマーたちに会ってきた。

アメリカであった2023年のツリークライミングの世界大会に行ってきました。肌で感じたことなどをお伝えしたいと思います。


開催場所

ここでいうツリークライミングの世界大会は、International Tree Climbing Championship (以下、ITCC) のことで、2023年は、8月11〜13日の日程で、アメリカのニューメキシコ州にあるアルバカーキ (Albuquerque)で行われました。

アメリカの地図

大会は、ISA (International Society or Arboriculture) という国際団体が作ったルールに則って行われるツリークライミングの競技会のことです。何を競いあっているのか、どういった種目があるのかは、別の記事で説明していますので、そちらをご参照ください。


さて、8月のニューメキシコは暑いだろうと恐れていましたが、思ったほどひどくなかったです。暑いことは暑いですが、雨が少なく空気が結構ドライでカラッとしていました。日本やアジアの多湿な感じはなく、ベタベタする汗が重たいということもありません。その理由として、後から誰かに教えてもらいましたが、この都市の標高が高く、1600m(!) もあるのです。

この標高を知った後だと、むしろ 1600m もあるのにあんなに暑かったのか。って感じです笑。とりあえず、この都市についてほぼ調べずに行きましたが、天気も良くて過ごしやすかったので問題なかったです。

芝生だとみんな裸足になりがち

ちなみに、私は選手として行ったわけではなく、ただ見学してみたくて行った見物人です。なので見学者目線のレポートになります。


出場選手

ITCC に出場する選手は、

1) 「支部大会」のチャンピオン
2) 「エリア大会」のチャンピオン
3)   昨年の ITCC のチャンピオン

です。

ここでいう「支部大会」というのは、詳しくいうと、 ISA が、支部を持つエリアごとの大会ことです。エリアによっては公式な支部がありませんが、その場合は、支部に代わる団体があれば、その団体が行う大会のことです。
( ※代替の団体でも、ここではわかりやすいように全部の団体を「支部」と呼んでおきます。)

ヨーロッパやアジアの国は、国単位で支部があります。オーストラリアは2つ。アメリカは1つの州に1支部がある場合もあれば、いくつかの州で1つの支部になっている場合もあります。この支部ごとの大会で優勝したチャンピオンがその支部の代表として ITCC にやってきます。

「エリア大会」というのは、それより広いくくりでの行われた大会のことです。「ヨーロッパ大会」「アジア・オセアニア大会」「北米大会」があります。各支部大会で上位の成績をおさめたことのある選手が出場する大会なので支部大会よりはレベルの高い大会になります。ここでチャンピオンになった選手も ITCC への出場権が与えられます。

エアリアルレスキューするヨーロッパ チャンピオン

2023年時点では、南米やアフリカなどが含まれておらず全世界的な競技とは言えませんが、ラテンアメリカにも多くのクライマーがおり、今後徐々に大会に参戦してくる模様です。

ちなみに、アジアからの出場選手は日本と台湾だけでした。
これは、アジア勢としてもっと頑張りたい!

でも、これについては、おそらく経済的な面も大きく関係しているのかも、と私は思っています。アジアには、日本と台湾以外にも支部があります。しかし、その支部大会でチャンピオンになっても、渡米して大会に出るほどの経済的余裕がなく、ITCC の出場を断念している可能性もあります。

先日マレーシアで行われたアジア・オセアニア大会と比較すると、単純に旅費だけを見ても、ITCC に出場するための渡米費用は3倍以上かかると言っても過言ではありません。フライトもとても高いシーズンですし。。。

円安なので、経済面で見れば、私たち日本人もかなり厳しいですが、他のアジア勢からして見れば、それ以上に厳しいのかもしれません。 アジアには良いクライマーも結構いるので、経済的理由から出場を断念せざるを得ないのはもったいない!

誰かスポンサーしてくれたらなぁ!

とやっぱり思ったりしちゃいますね。


大会見学

私は、この時まで支部大会ですら見たことがなく、この世界大会で初めて競技をちゃんと見ました!最初に見た大会がこの ITCC 2023 で、

「ほ〜。やっぱすごい!よくあんなことできるわ。」

っていう感じで見てました。代表選手しか来ていないので、当然ですが、やっぱりすごい人たちの集まりだったことがよくわかります。

競技のスコアによる順位は男女別で出されますが、女子の選手も男子の選手も、競技する内容は同じです。試技の順番も男女ごちゃ混ぜで行われています。

女子選手の体格を見ても、平均的な日本男児よりごっつい体をしている選手も居て強そうです。体格でちょっと威圧されます笑。でも、必ずしも体格の良い選手ばかりではなく、いわゆる細マッチョであったり、小柄な選手も結構居ます。こういった選手が活躍しているのを見ると、私たちアジア人でも健闘できそうだなと、勇気をもらえます。

スローライン

選手の中には、前年の世界チャンピオンや、業界では有名な選手がたくさん来ています。そういった選手たちのパフォーマンスをたくさん見て、いろいろと学んだりしたかったわけです。が、当時の私は、まだ競技を「見る目」ができておらず、正直、素人目線的な見方で鑑賞していました笑。

ワーククライム

私からしたら全員上手な人なので、本当に表面でしか見れていなかったと思います。とりあえず目玉選手と呼ばれる人たちの試技は頑張って見ました。よ笑。


予選終了後のアクティビティ

予選が金曜日と土曜日、決勝が日曜日です。土曜日は予選競技が少し早く終わります。

予選の競技が全て終わると、スコアの集計をします。集計が終わると明日の決勝に向けて、予選通過の選手を発表をするセレモニーがあります。ですが、集計やセレモニー会場の準備などで、セレモニーが始まるまでに少し時間があります。

セレモニーが始まるとこんな感じ

この待ち時間の間にアクティビティ(競技?)があったのでご紹介します。予選が終わってからのアクティビティなので、スコアには加算されません。

Rake master challenge (レーキマスター)

その場にいる誰でも参加できる完全に「お遊び」なアクティビティです。4人一組になってチームで参加します。その場にいる誰でもいいので、仲間を捕まえてとりあえずエントリーします笑。

この競技が一体何なのか全く理解しないまま仲間を捕まえて、いや、捕まえられて私もエントリーしました。

ルールは4人のリレー形式で行われます。
直線のコースがあり、途中には「小盛りにされた小枝」「レーキ(熊手)」「ロープ」「丸太」があります。

1)  熊手で小枝を掃いて、
2)  ロープに結び目を作り、
3)  丸太を転がして反対側までいって、バトンタッチ
する

というものです。何も難しくありません。ま、この業界の人なら、結び目も問題なく作れるでしょう。

クライミングの技術も何も要りません。
頑張って掃くだけです!笑

安全すぎるPPEを装着して掃いている

走者は次の安全具(PPE)を装着します。 1)チェンソーチャップス、2)ハイビズベスト、3)ヘルメット、4)保護グラスを装着してからスタートし、掃きます。この装着には、走者以外の3人がサポートに入り、走者に着せたり脱がせたりを手伝います。

タイムトライアルなので、4人のリレータイムが早かったチームが優勝です。

掃いた後に小枝が残っていたり、安全具がちゃんと装備されていないと、その場でジャッジに止められてしまいます。

これは、見てる側ももちろん楽しいです。最初のチームは、ルール通りにしっかりリレーしていたのですが、後のチームになるにつれ、適当加減が増してきて、もはやフェアな勝負なのかわからないくらいな感じになっていました笑。

ま、これもアメリカならではというか、大会でピリピリしていた選手たちにとっては良い気分転換になったかもしれません。

ここで驚くべきことは、このアクティビティにもスポンサーがついていたということです。このアクティビティのためだけに T シャツも作られていましたし、あれだけ適当なのに優勝チームには副賞もありました。なんかすごいですね笑。

かわいめTシャツ


Head-to-Head Ascent

レーキマスターの後に、もう一つアクティビティがありました。

予選にある「アセント イベント」という競技でスコアが上位の選手だけが出られるイベントです。内容もこの競技とほぼ同じです。人数は覚えていませんが、男女それぞれ8人ずつくらいが出ていたと思います。

予選5種目を戦った後で、さらに本気の戦いがもう一回あり、選手はお疲れかもしれませんが、結構みんな楽しそうです。

この競技は 15m のロープ早登り競技です。15m の地点にベルがあり、それを鳴らすまでのタイムを競います。

予選のアセントイベントとの違いは、

  • セットアップとチェンジオーバーのタイムは計測せず、単純に「アセント部分だけのタイム」を計測します

  • 二人同時に登ります

  • これまでのレコードを上回るタイムを出した場合は世界記録として認定されます

Head-to-Head

ただ登っていくだけなのですが、さすがは上位選手ばかりです。
当たり前ですが、みんなすごく早い!それぞれギアの設定も色々工夫されていて、個性が出ています。早い選手は、登っている姿も美しく、効率的な体の動きをしているように見えます。

確か、ここでワールドレコードが出たと思います!でも、誰が何秒で登ったかまでは覚えていません。ただ、世界レベルのスピードが見られたことは良かったと思います。


この2つのアクティビティが終わると、いよいよセレモニーがあり、決勝に進む選手の発表となります。

女子ファイナリストみんな裸足。あと「強そう」

決勝 (Masters' Challenge)

日曜日の朝、会場に来てみると、マスターズの会場がすでに準備されており、木々がファイナリストたちを待ち受けています。

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