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ドル収入をドル定期預金で運用するのは果たして「お得」なのか

円安ドル高が続いている昨今、「ドル定期預金」が注目を集めているらしい。

というのも、日本国内の銀行が扱うドル建て定期預金の金利が次々と引き上げられており、SBI新生銀行では6%、最も高いソニー銀行では9%にまで達しているのだ。

日本円を銀行口座に預けていてもほとんどお金が増えないのは当たり前、
高配当の株式に投資をしても配当は4%くらいが関の山という中で、金利が6%、9%となれば、魅力的に見えてしまうのも無理はない。

当の私もその金利の高さに心を奪われ、外貨預金口座を開設する一歩手前まで行ったのだが、少し不安になってTwitter(X)で検索してみると、
「リスクが大きい」「金利で釣ってるだけ」などと冷ややかな意見が多かった。

そこで今回は、インターネットで米ドルを稼いでる私が、ドル収入をドル定期預金で運用した場合、果たしてお得になるのか
というテーマで話をしていきたいと思う。


ドル収入をドル定期預金で運用する

一般的に、日本に住む人がドル定期預金に手を出す場合、まずは手持ちの日本円を米ドルに替えるという手続きが必要になる。
しかし、私の場合は米ドルで収入を得ているので、円をドルに替える手続きは必要ない。

ドル収入の受け取りには、PaypalPayoneerといったサービスを使っている。
Payoneerの場合、自分の持つドルをそのまま外貨預金口座に移すことができる。
(Paypalでは、日本国内の銀行にドルのまま出金することはできない)

外貨預金にお金を移したら、それを外貨定期預金に預け入れをすることになる。
なお、外貨定期預金を扱う銀行はさまざまあるが、今回は三井住友銀行を使うことを想定して考える。

三井住友銀行の「パーソナル外貨定期預金」を調べてみよう。

米ドルの場合、6か月/1年間預けた場合の金利はともに5.3%
金利の数字だけを見ると、かなり魅力的に見える。

ということで、今回は1万ドル(現在のレートで約150万円)をドル定期預金で運用する場合を考えよう。

仮にレートが変動せず、1年後も1ドル=150円だったなら、
金利5.3%=530ドル=約80000円が貰えるということになる。

1年間で8万円もの不労収入が貰える。
しかも、円安がさらに進んでいればもっと貰えるかもしれない。
そう考えると、ドル定期預金をやらない手はないと思うだろう。

ドル定期預金のデメリット

ところが、世の中はそれほど甘くはない。
ドル定期預金には、いくつかリスクやデメリットがある。

①為替差損が生じる可能性がある(為替リスク)

1つ目のデメリットは、ドル円レートによっては、損失(為替差損)が生じる可能性があるという点だ。

過去5年間の米ドルチャート(Yahoo! Financeより)

過去5年の米ドルチャートを見てみると分かるが、ドル円は基本的に円安傾向にはなっているが、短期的には上下を繰り返している。

過去1年間の米ドルチャート(Yahoo! Financeより)

過去1年間で見てみても、値動きは激しいことが分かる。
この1年間で最も円高が進んだタイミングで見ると、2023年1月に1ドル=128円ほどにまでなっている。

仮に、1万ドルを定期預金で運用して、1年後に1ドルが150円から128円まで下がっていた場合、金利から得られる収入は、
530ドル×128円/1ドル=67840円

先ほどの80000円よりは少ないが、67000円も貰えれば良い方じゃないか。

1年後何かがあって、記録的な円高になり、1ドル=70円になったとしても、
530ドル×70円/1ドル=37100円貰える。
日本円を銀行口座に入れていてもほとんどお金が増えないのだから、これはドル定期預金を選ばない手はないと思いがちだ。

しかし、1つ大きな落とし穴がある。
それは、円高になれば金利だけでなく元本の価値も下がるということ。
先ほどの例で言えば、1ドルが128円になったタイミングで見ると、
元本(1万ドル)の価値は128万円になっており、金利の67840円を足しても、元本の150万円に達しない

もちろん、外貨定期預金が満期になったからといって、すぐに日本円に替えなければならないわけではない。
利息と一緒に外貨預金に入金し、円安に戻るまで待つということはできる。
とはいえ、円安になるまで待つというのは精神衛生上良くないことであるし、場合によっては数年以上にわたって円高が続くことも考えられる。

②手数料がかかる

では、次は手数料を見てみよう。
金融商品には手数料がかかるのが常だが、外貨預金の場合、日本円を外貨に替える際、外貨を日本円に戻す際に手数料がかかる。

三井住友銀行では、米ドルから日本円に戻す場合、ネット取引を使えば手数料が1ドル当たり0.5円になる。

つまり、1万ドルを日本円に戻す際は、1万ドル×0.5円/ドル=5000円の手数料がかかる。

なお、手数料1ドル=0.5円というのは、あくまでも「片道」の話。
日本円をドルに替えて運用し、しばらくたってからまた日本円に戻す際には、「往復」になるため、手数料は0.5×2=1円かかる。

③TTSレートとTTBレートとの差

今まで、円をドルに替える際のレートと、ドルから円に戻す際のレートは同じであるかのように話してきたが、実際には異なっている。

日本円から外貨に替える場合はTTSレートが、外貨から日本円に替える場合はTTBレートが適用される。

各通貨のTTS/TTBレートは、金融機関のサイトなどで確認することができる。

TTSレートとTTBレートには差が設けられているため、日本円をドルに替えて運用しようとする場合には、注意が必要となる。

④もちろん税金も取られる

最後に、ドル定期預金で生じた収益には、当然ながら税金がかかってくる。
「パーソナル外貨定期預金」のページを見ると、

利息(金利による収益)は分離課税(20.315%)、為替差益は総合課税
になると書かれている。
(ただし、年収2,000万円以下の給与所得者で、給与および退職所得以外の所得が為替差益を含めて年間20万円以下の場合は、申告は不要)
総合課税とは、簡単に言えばほかの所得と合算して所得税額を決めるということで、税率は1年間の所得金額によって異なる。

例えば、所得金額が3,299,000円以下の場合には、所得税率は10%以下となり、分離課税よりも安くなる。
しかし、所得金額が3,300,000円以上の場合、税率は20%以上となり、6,950,000円以上なら23%になるため、分離課税よりも税負担は重くなる。

日本の所得の中央値は、だいたい400万円前後であることが多いので、税率を20%として考えると、利息、為替差益ともに20%(5分の1)を税金で持っていかれるということになる。

つまり、仮に利息で80000円を稼いだとしても、その5分の1ほど(16252円)は税金で取られるため、手元に残るのは63748円
NISAとは異なり、非課税制度のようなものはないため、税金が取られるのは当たり前だが、その分残る金額は少なくなってしまう。

④外貨預金はペイオフ対象外

最後に、外貨預金は「ペイオフ」の対象外となる点も話さなければならない。
ペイオフとは、金融機関が破綻した場合に、預金保険機構が預金の一部を代わりに預金者に支払ってもらう制度のことを指す。

日本円を預けている普通預金や当座預金などはペイオフの対象になるが、外貨預金は対象から外れているのだ。

三井住友銀行が破綻する確率は限りなくゼロに近いだろうが、一応制度上はこのようなことになっているから、あらかじめ知っておいた方が良いだろう。

結局、ドル定期預金はお得なのか?

最後に、ドル収入をドル定期預金で運用したらお得なのかについて、結論を述べてみる。

最初からドル収入を手にしている場合、日本円をドルに替えるという作業が要らない分、手数料が浮くので、そうでない場合と比べてよりお得になることは間違いない。

利息や、元本を日本円にしたときの金額については、その時のレートによって変わってくるので、「運要素」が絡んでくると言わざるを得ない。
このまま円安傾向が続けば得ができるだろうし、円高になれば損をする。
特に最近は日銀が金利を引き上げ始めているので、判断はより難しくなるだろう。

最終的には、自分の勘に頼るしかないだろうか。

番外編:Payoneerから外貨預金口座経由で円に替えるという方法

番外編として、外貨定期預金とは関係ないが、この記事を書いていて思ったことがあったのでそれについて書いておきたい。

Payoneerでは、米ドルを日本円に替えて銀行口座に入金することができるが、その際のレートは、実際のそれと比べ低めに設定されている。
私は1ドル=149円の10月9日に口座引き出しをしたが、その時のレートは1ドル=145.92円だった。
一方、三井住友銀行の外貨預金の場合、TTBレートは1ドル=147.60円

外貨預金に移して即円転、ということはできないかもしれないが、手数料の存在を考慮しても、Payoneerで円に替えるよりお得ということになる。

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