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唐揚げの話

 ここ数日、唐揚げを食べ過ぎている。
 直近4日間のうち、3回唐揚げを食べた。私は基本的に朝食を食べないので(食べないというより食べられないが正しい。ギリギリまで寝ていて時間がないからだ)、実質1日に昼と夜の2食である。つまり4日間で8回ある食事のうち、3回唐揚げを食べていることになる。
 直近の具体的な内訳は以下のとおり。

・10月22日(日)
 午前中は出勤。帰りに、最寄駅近くの焼き鳥屋さんで唐揚げランチ。
・10月23日(月)
 午前中は出勤。午後は昨日の振替休。帰りに、最寄駅近くの焼き鳥屋さん(昨日とは別のお店)で唐揚げランチ。
・10月24日(火)
 唐揚げなし。
・10月25日(水)※本日
 会社の食堂で、ナスと唐揚げの煮びたし定食。

 こんな感じ・・・・・・。
 ちなみに私は今、体重と健康の維持を(少しは)考えて、雑誌で知った「3勤1休の食べ方」をゆるく実践しているところだ。
 これは何かというと、ルールに沿った食べ方を3日間取り組み、1日休むというルーティングである。3日間は食べる時間を8時間以内にして「NG30食品」を避ける必要があるのだが、平日仕事をしているとさすがに前者はなかなか難しい。せめて後者だけでもと思い、極力気をつけるようにしてみている。

 ちなみに、その雑誌によると「NG30品目」に唐揚げは含まれていない。理論としては、どうもカレーライスのような「糖質×脂質」の組み合わせが良くないようだ。その点唐揚げは衣の中身が鶏肉なので、まあギリギリセーフということらしい。とはいえ揚げ物には違いないので、4日間で3回は・・・・・・。

 しかし定食屋さんなどに行くと、私はつい唐揚げを選んでしまう。サバの塩焼きとかそういうのを頼めばいいところを、どうしても唐揚げの誘惑に抗えず、吸い寄せられるように注文してしまうのだ。そして、たいていのごはん屋さんに唐揚げ定食は存在する。
 全然関係ないが、なにわ男子の2021年のツアータイトルが「#なにわ男子しか勝たん」だったけれど、私の場合「#唐揚げしか勝たん」という感じである(こんなところで引き合いに出してしまい、本当にごめんなさい・・・・・・)。

唐揚げとは全然関係ない写真

 さて、一口に唐揚げといっても、お店によって千差万別だ。
 私の好みは、衣が薄めでカリッとしており、中身が白身魚のようにふっくらしていてしっかり火が通って柔らかい感じ。脂身は極力ないもので、あまりジューシーすぎないほうが良い。
 初めて行くお店では、自分の中でのリトマス試験紙的な感じで、とりあえずまずは唐揚げを頼んでみるという節がある。好みぴったりの唐揚げが出てくるとめちゃくちゃ嬉しい。そして、私の中で「唐揚げ認定」されたお店には、たいていその後も何度も通ってしまう(偉そうにごめんなさい・・・・・・)。

  *

 今でも忘れられない唐揚げがある。
 2017年の冬、私は1人で静岡県の三島へ来ていた。なぜ三島だったかは忘れたが、まあ東京からあまり遠くなくて行きやすいところ、という感じで旅先に選んだのだと思う。
 ビジネスホテルの素泊まり予約なので、もちろん夕食はついていない。部屋に荷物を置いた私は、12月の寒風吹きすさぶ中、夕食を求めて町へ繰り出した(朝から1日オフだったのにも関わらず、このとき三島に到着したのはなぜか夕方だった)。
 ちなみに私は、基本的に旅先での食事にあまりこだわりがない。
 せっかく来たのだから、その土地独自のものを食べたい・・・・・・という気持ちがないわけではないけれど、1人ではなかなかお店に入りづらかったりして、うろうろしている間に「夕食難民」になりやすいからだ。そのため、旅先でも普通に大戸屋とかガストとかチェーン店に入ることも普通にある。

 さて、このとき私は、一軒の定食屋さんに入ることにした。
 いかにも町の定食屋さん、という感じの佇まいで、入口にはうろ覚えだが「寒い中みんなお疲れさまです。おいしいご飯を食べてがんばろー」みたいな看板が立っていて、なんか泣きそうになったのを覚えている。

 それほど大きいお店ではない。カウンターといくつかのテーブル席と、奥には畳の小さな座敷があって、頭上ではテレビが流れているような。
 まだ夕食にはやや早い時間だったせいか、客は私1人だった。きっと、いつも地元の常連客で賑わっているんだろうなあ。
「唐揚げ定食ください」
 メニューにさっと目を通したあと、さっそくそう注文した。
 ほかの定食もとても魅力的だったが、やはり唐揚げには抗えない。何せ常に「#唐揚げしか勝たん」状態なのだから、仕方ないのだ(またしてもごめんなさい・・・・・・)。

 出てきた唐揚げ定食は、私の好みど真ん中だった。
 カリカリしていて脂身が全くといっていいほどなく、中身は白くて柔らかい。しっかり醤油味がきいた、それでいてくどくない味わい。「こんなに食べられるかなぁ」とワクワクしてしまうボリューム(食べられた)。瑞々しい千切りキャベツとレモン。大きめの茶碗にたっぷり盛られたつやつやのご飯。食欲を引き立てる漬物やお新香。出汁の香りが優しいお味噌汁。
 これが私の、理想の唐揚げ定食・・・・・・!

 旅先というのもあったかもしれないが、本当にこんな感じだった。このお店が家から徒歩圏内にあったらいいのに。そしたら毎日通う。それぐらい、理想の唐揚げだった。
 今のところ、この唐揚げを超える存在にはまだ出会えていない気がする。

 *

 さて。最近、私の中で「推しの唐揚げ屋さん」がある。
 唐揚げはジューシーすぎないほうが好み、と先述したが、このお店はわりとジューシーな感じの唐揚げを売りにしている。しかし衣が薄く、白身魚のような柔らかさ。脂身が少ない。味つけににんにくを使用していないのも個人的な推しポイントだ。
 ちなみにお店の場所だが、自宅からは徒歩圏内とはいえ駅を越えなければいけないし、やや歩くので、月に1、2回行くか行かないかといったところだろうか。
 まあ、推しとはこのくらい適切な距離を保ったほうが良い。あまりに近すぎると色々と都合が悪いこともあるのだ。

 ・・・・・・と思っていたところ、件のお店から徒歩40秒くらいのところに今度引っ越すことになった。たまたま条件に合う部屋が賃貸に出ていたのだ。決して、唐揚げのために引越しをするわけではない。
 でも大丈夫だろうか。そんなに近くに住んでしまって。このお店はテイクアウトもできるので、ほかほかのまま持ち帰って自宅で味わうことも可能だ。徒歩40秒・・・・・・近すぎたかもしれない。
「このお部屋、逆にどのあたりが気になるポイントですか?」
 契約を迷っていると、「この客、あと一押し!」と思っているに違いない不動産屋のお兄さんから、営業スマイルで尋ねられた。
「推しの唐揚げ屋さんが近すぎるところです」
 もしもそう答えていたら、彼はどんな顔をしただろうか。

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