わたしが卒業論文を書くまで①
おばんです。ともさんです。
ここ最近、いろいろ難しいnoteを書こうとしては、いやでもここはそんなに難しいことを書く場所ではないし第一伝わらなければ意味がない...とか考え、とりあえず、キャッチ―(?)で、大学生としては単純に興味がある人も多いと思われる卒業論文を書いた経験について書こうと思います。
忘れないうちに、今後の私への反面教師として、また主に、これから論文を書く方のために残します。後輩の皆さんは、なんなりとご参考になさってください。(参考になるかわかりませんが)
卒業論文を書くまで
私の場合は、かなり遅く書き始めた方だと思っています。だいたいのスケジュール感を載せます。
4年生4月 テーマを検討開始
これ、これがもうそもそもかなり遅いと思っています。タイムリープ出来るのであれば3年の秋ごろには検討し始めたい...
そもそも研究のテーマなんてどうやって決めるのか、と途方に暮れる人も居ると思います。でも、そんなに難しく考えすぎる必要はないと私は思います。
自分が日常生活を送る上で、疑問を感じたことや困ったこと、こうだったら良いのになと思ったことなどから着想し広げてゆくのが一番カンタンかつ大切なことだと思います。モチベーションも保ちやすいです。
もし大学に、その分野が専門の先生がいるならば、まずはその先生を訪ねて相談やら雑談をしてみましょう。例え自分の研究室の先生ではなくても、です。当たり前ですが、大学の先生というものは専門分野に他を圧する知識量を持っており、さまざまなヒントをもらうことができます。その後の研究の助言をしてくれるかもしれませんし、損になることは絶対にないはずです。
私の場合は、大きいテーマがある程度定まっており(交通、決済系かな...)ましたが、しかしそれでもそこからが長いんです。
例えば「交通」についての論文を書くとしても、交通の何を扱うのか。(自動車交通、歩行者交通、交通事故、公共交通...etc)
公共交通ならば、どの公共交通(鉄道、バス、船、飛行機...)についてか。
バスを扱うならどのバス(乗合バス、コミュニティバス、循環バス...)を扱うのか。
コミュニティバスを扱うならば、コミュニティバスの何について研究するのか。(運賃と利用率、コミュニティバスは助成を受けずにやるべきか、効率の良いコミュニティバス運行システムの検討...などなど)
なんとなく興味のある分野でも、その関連項目は広いです。これはどんな分野でも同じ。地球儀を見ている状態から、自分の家までズームしていくような作業をしなければなりません。
始めは、興味のある分野の本をたくさん読むと良いと思います。図書館へ行けば、分野別に同じようなことを扱った本を近くにまとめてくれているうえに、お金もかかりません。それにより、このテーマの中にはこれとこれがあり、こんなことが行われてきた...ということを掴むとよいと思います。現状把握ですね。
これを行うことで、のちほど書く、解像度を高めていくという作業をする時に大いに助けになると思います。
6月 テーマが二転三転し、なかなか定まらない。
私の研究室では、4年生は定期的に、その時点で決まっているテーマと研究の方針について、他の学生に対してプレゼンするというようなことをしておりました。そして教授や同級生、下級生からコメントを受けて参考にするわけです。
が。そのプレゼンでの私のテーマは数週間のうちにがらりと変わったりしました。具体的には、はじめは交通についてやろうとしていたものの、「キャッシュレス決済による地域経済への影響」や「キャッシュレス決済を利用した地域通貨の可能性」のような感じの、決済にまつわるものに変わっていました。
はじめは興味があっても、先行研究の有無や理論構築をする中で、「もうこの分野でやるのは無理かも...」という気持ちは案外すぐに訪れます。きっとみんな経験するんじゃないかな。しかし、案じてそこで止まる必要はないと思います。そこをぶちぬけた時に味のある研究が作れるのではないかとも。
これについては、後ほど話が繋がってきますので、お待ちください。
7月 変えたテーマで考えるも、こちらも壁に当たる
まあ結局、テーマ変えて逃げても、同じ状況に陥ったわけです。つまり、テーマが悪いのではなく、私のテーマの考え方、文献の探し方に問題があるということを悟った頃でした。
①解像度を高めること
②文献の探し方を変え、徹底的に探すこと
で解決することとなります。
①は、4月の私は「フリー定期券について研究したい」がテーマだったのですが、(この曖昧さが原因でその後テーマが二転三転します)これを最終的に、「〇〇市の高校生でフリー定期券ができるかどうか調べてみたい」まで絞ることになります。解像度をめちゃくちゃ上げたわけです。
つまり、テーマはふたたび交通に戻ってきていたわけです。結局、どちらを行っても厳しい道なら、真っ先に興味がわいた方をやりたいと思ったのでした。そもそも、いい加減にもう方針を決定しないと、本当に期限までには終わりません。このテーマと添い遂げる。「この分野では無理かも...」という気持ちをぶち抜いたのでした。
②について補足すると、私はJ-Stageの複数キーワード検索機能がとても重宝しました。「公共交通」「○○分析」のように、ワードを複数指定して、論文のタイトルなのか、文中に出てくる単語なのか、まで指定して検索が出来ます。
Google scholarは、始めに、どんなのがあるんだろうな~とみるときとかに使うといいかと思います。解像度が上がってからはあまり活躍しませんでした。(私の場合は)
8~9月 先行研究のレビュー
テーマが決まってからは、先行研究のレビューが始まります。これには、かけようと思えば時間は無限にかけられます。なぜならば、レビューする研究はテーマとしているものそのものだけではなく、周辺の領域も含むからです。
例えば、バスの利用者を増やすための、とある施策についての研究を調べていたけれどもそれが見つからないという場合があったとします。そのような場合でも、同じことが鉄道で、飛行機で、タクシーで、フェリーで行われているかもしれないわけです。
そこから得られる結果やデータは、たとえバスを対象としたものではなかったとしても、単独で、もしくは他の研究結果と組合せることで、大いに参考になるものとなる場合があります。つまりは、先行研究というものは、必ずしも研究したいテーマにピッタリと合致するものである必要はありません。あなたが、その研究を解釈してこれは自分の研究の参考として使える、と思えるものならばどんな研究でもよいのです。
また一度、使えそうな先行研究を見つけると、その研究の「参考文献」リストも宝の山となります。つまりそこからまた多くの文献を見に行くことになるというわけです。
これらのことがあるがゆえに、先行研究のレビューには多くの時間が必要となり、続けようと思えば半ば永遠に続けられる作業になります。
ちなみに、レビューは必ずしも研究論文だけに行われるわけではありません。自治体の行った調査や民間企業のリサーチ、そしてもちろん書籍も参考として利用できます。研究、というものの性格上、それらのうちひとつは研究論文があった方が"箔"が付くと思いますが、かと言ってそれ以外を使ってはいけないというわけではありません。
なにはともあれ、私の場合は、②の調べ方の工夫で述べたような、徹底的に探す作業をすることにより、ついにこのテーマで研究できるかもしれない、というようなものが確信に変わりつつありました。
10~11月 だいたいのレビューを終え、いよいよ本文へ
レビューを終えると、いよいよ実験/調査へと進む人、本文を書き始める人に分かれると思いますが、私の場合は後者でした。
私の研究でも調査は必要なのですが、高校にて生徒を対象にアンケートを行う(しかも大学/高校、双方の公認付きで!)という性格上、そうすぐに「はい良いですよ」、とはならなかったため、先にレビュー結果を中心とした本文を書き始めていたのでした。
というのも、この時期になると実験や調査が終わっている人も出始めており、あとは本文を書くのみ、という人もいるわけです。そんな中で、調査が終わってないから書き始められませ~んと言っていては、後から地獄を見ることになるわけです。
幸いにも、レビューが済んでいれば、こんな感じの先行研究がありました~「それゆえに私はこうやってこんな研究をやります」の宣言くらいまでは、実験や調査をする前でも書けるわけです。ちなみにこれは、論文全体の約1/3から1/2ほどを占めます。もちろん個人差はあります。
このあたりでは、実験や調査に向けた事務手続きと本文の作成を同時並行で進めることになり、いよいよ忙しさに磨きがかかってきたと記憶しています。
研究室によっても違いはあるとは思いますが、私の場合は、12月の末がゼミ内での締め切り、それから添削を挟んで、1月前半が学科での締め切りでした。つまりはなんとしても12月内で終わらせる必要があります。
12月 調査実施(遅い)
かなりの期間にわたって、高校を訪問したり、依頼文を書いたりして調整を行いつつ、必要な物品を揃えた末に、12月に入ってからアンケート調査を行いました。これは締切りを考えるとかなり遅いです。遅すぎます。
その上、調査する上で不測の事態が起こり、論文にはできなかったという場合には取り返しがつきません。私のマネはしないでね☆
理想を言えば、夏ころに調査/実験を終えていればその後余裕を持ってのびのびと過ごせるでしょうし、不測の事態にも対応できます。が、それはあまり現実的ではないと思いますので、せめて秋の終わりには調査/実験を終えておいた方がいいのではないかと思います。
とはいえ、私の場合は高校生にアンケートという、かなり回りくどい方法と取ったためにこれだけの手間と時間が掛かったという部分もあります。
卒業研究でアンケートを取る多くの学生は、対象者は所属大学の学生にしていたのではないかと思います。
こんなことを言うと面倒なヤツ...と思われるかもしれませんが、どんな研究にも適した調査対象者があります。現在の年収について大学生に訊いても仕方がないのと同じように、被調査者が大学生では適さないような研究もあります。
もちろん、大学生に訊くことが最適である研究もあるでしょう。
その上で、楽だから、と大学生への調査に逃げてしまうのは簡単ですが、一度立ち止まって他の可能性を考えてみること。どうか忘れずにいてほしいポイントです。
実際に、街頭に出てアンケートを行った学生などもおりました。調査方法はさまざまありますし、規模の大小はともかく、調査のための予算を付けてもらえる場合もあるかもしれません。
さらに言えば、研究というものは、何も必ずアンケートをしなければいけないものでもありません。
一般的には、こうなると思う!という仮説を建てたうえで、アンケートや統計を取り、本当にそうなるか確かめる...というものが研究と思われるかもしれませんが、そのような研究手法は、研究のやり方の一つでしかありません。
このような研究のスタイルを、量的調査(量的研究)といいます。
それとは対照的に、よくわからないものを調べ、数字では表現しきれない部分を調査することにより、新しい仮説へとつながる研究成果を求める(≒仮説を作る)ような研究もあります。
このような研究のスタイルを、質的調査(質的研究)といいます。
量的研究では、画一的で全員へ同じことを尋ねるアンケートなどをする代わりに、質的研究ではヒアリングやインタビューなど、想定外を探すために、相手に合わせてその場その場で質問を変える調査方法を採ります。
「女性の方がハムサンドをきれいに食べるのではないか?」という仮説を、一度に大勢にハムサンドを食べさせ、皿の上に食べかすがいくつあるかを実験で確かめるのが量的研究なら、「人はどのようにハムサンドを食べるか」ということを、一人一人に「あなたはハムサンドをどのように食べますか?」と根掘り葉掘り訊いて行く(なんなら食べる様子を見る)のが質的研究です。
そして質的研究の結果として上のような仮説が見つけ出される、という感じです。
量的研究のアンケートほどの数を必要としない質的研究はカンタンそうかと思えば、そんなことはありません。
調査により得られたデータは数学で表現できるものではありませんから、自分の頭脳と言葉で解釈をして結論を述べなければならないのです。そして読む人を納得させなければなりません。
さて、12月の後半には無事にデータも集まり、先に先行研究レビューを書き、残していた残りの部分である結果、考査と結論を書き、私の卒業論文は、なんとか事なきを得ました。
その後は、1月初めに研究室の学生を総動員した誤字・脱字チェックが行われ、学科への提出(最終提出)を迎えます。
卒業論文を書いてみたら
と、いうわけでこの記事では、私が卒業論文を書くまでの経験したお話と、それに交える形でこれから論文を書く人へのアドバイスを残してまいりました(ここまで5233字)。
伝えたいことは大方、文中に書かれておりますが、まとめると「興味大事」「早く始めよう」「先生に頼れ」「先行研究は無限に見れる」「方法もひとつじゃない」くらいでしょうか。
4月からの作業でも間に合わなくはありません。(私も実際なんとかなってはいます)しかし、4月からはじめるよという人は、それなりの覚悟を持って臨んでください。
それでも、書き終えた後には「自分が書いた、学術的な価値のあるちゃんとした文章」が残ります。これはとても大きなことで、書き上げたということはその後の自信にもつながると思います。
さきほども書いた通り、楽をする道はたくさんあると思います。しかし多くの人が一生に一度の論文でしょうし、後から見て満足がいき、周りの人からも褒めてもらえるような面白い論文を書いてみてはいかがでしょうか。
特に私の後輩の皆さんには、皆さんがこれから書かれる論文を読むことを楽しみにして待ちたいと思います。
見せてよ~とせがむかもしれませんけど、許してください。
次回「私が卒業論文を書くまで②」では、私が書いた論文の中身について解説していきます。(自慢するほどのものでもないですが...)
皆さんの研究の成功を祈っております!
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