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本棚の一作を紹介する 二冊目 「少女終末旅行」

紹介コーナー二回目ということで、自分の嗜好を語る上で欠かせない名作、つくみず先生の「少女終末旅行」について紹介させていただきます。

表紙

この作品は2017年にアニメ化しており、かく言う自分もそこからファンになりました。この作品に関してはネタバレとかあんまりないとは思いますが、一応アニメでやった範囲まではネタバレ…というか気にせず書かせていただきますのでご了承ください。

本作についての説明は至極簡単、「なんらかの原因で人類がほぼ滅亡した世界を、主人公たち(チトとユーリ)の二人の少女が旅する」というものです。
タイトル通りの終末もの、それも世界終末の後の話だから戦争や紛争の段階は終わっていて、ゆるやかに、あるいはもう終わっている世界を二人が旅する作品です。「心地よい破滅」とされるコージーカタストロフィや、「結城友奈は勇者である」のアニメ放映時に提唱された新日常系あたりがもっと細かい分類になってくるかと思われます。
(ちなみにこれを書くにあたって新日常系について調べたら普通に本作も分類されてるし提唱されたのが「がっこうぐらし!」の頃と勘違いしていたりと調べてなければ大恥をかくところでした)

ごちゃごちゃと前置きをしましたが自分が思うこの作品の一番の魅力はやはり、読者を否応なく引き込む「世界観」です。
よくわからない廃墟、前時代の遺物、ごく稀に遭遇する放浪者、それよりはよく遭遇する人工知能etc.、冒険の先に出会うものたちは二人にとっても読者である我々にとっても目新しい。日々の食事すら無計画には立ち行かず、レーションを無邪気(?)に取り合い、たまにケンカしながらもおじいさんに言われた通りに上を目指す…それは波乱万丈であっても二人にとっては紛れもない「日常」で、日々変化のない生活を送る身としては軽率に羨ましいと思ってしまうほどに二人は楽しそう。凸凹の合うバディか何もかもメチャクチャな無法世界か…どっちかだけでも欲しい…

それからこの作品は「終末もの入門」としてオススメです。世界滅亡の原因をにおわせる兵器の存在、2020年代時点から見てまさしく「未来の技術」であるロボや人工知能、途絶えた文化との交流、よくわからない超越生命体(こればっかりはマジでわからないです。考察とかでもなくそういう存在です)、ゆるやかに足音を響かせる旅の終わり…と、どれか一つでも気になるなら手にとって後悔はないくらい魅力的な要素が目白押し。そしてつくみず先生のやわらかい画風がそれらを優しく描写しており、手に取りやすい、読みやすい!
作中のテーマでもある「絶望と仲良く」のとおり、読み終わったあとには日常の小さな絶望とも仲良く…なれるといいな…

あとこればっかりは全巻読んでいただいた上で語りたい話なんですけど、ラストシーンが本当にいい。終末ものの正しい終わりかたなんてわからないけど、間違いなく「少女終末旅行」という作品の終わりはあれが一番いいと思う。結局ネタバレが怖くて奥歯に物が挟まってるけど、これについては「終末もの」ってジャンルである以上、ゴールがだいたいわかってしまう問題がですね…何かしらの示唆すらせず、本来ならどこで終わるかもわからない状態で読むのが一番新鮮な味わいかただと思うんですよ…

ともあれ、コミックス六冊とかなりすっきりとまとまっていて、一気読みにちょうどいい分量ですので知らない方がいたら是非読んでみてほしい、なんならアニメでもこの作品のよさが味わえるのでそちらでも!アニメ版は声優さんの最高な演技が楽しめる利点と、最後まではアニメ化されてないという最大の欠点があるため、是非原作のほうも見ていただければ…

あとケッテンクラートに乗ってみたいけどあれ日本の道交法的にどうなんだろう…ナンバープレート付けたら走れたりしないかな…

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