詩:黒い糸

サキュバスがわたしたちを狙っている
眠っているあいだに精気を吸い尽くす
そしたらわたしたち、
永遠にできなくなっちゃうんだよ

だから、
あいつらに追いつかれる前に
さいごのセックスをしよう

二人は洋館をぬけ出して
夜の森を駆ける。

そんな夢をみた
枕の上に 並んだ二つの頭
きみの寝顔の向こう
洋館の窓に、
悪魔がはりついていた

ああ、おれたち
それでもずっといっしょにいられますように
目を閉じてきみを抱きしめると
目蓋の上をすべっていく影が
神様に思えた

こうして二人の唇は、
黒い糸で縫い綴じられた

それを引きちぎり、もう一度愛の台詞を吐くとき
舞台はすでに変わっていて
真っ黒に腐った果実が
新しい物語のはじまりを告げる

だから、ずっとほどけませんように
このまま一体のミイラになることを
誓いますかと神父が問う
となりにいる白いきみを見た
聖なる揺らぎ
その瞬間だけが、永遠になってほしかった

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