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2,3等星で星空案内・秋(その4)

普段、私が移動天文台などで観望会をしている場所は市街地の学校のグラウンドや公園の広場、児童会館などの駐車場になります。
そこで見える星はせいぜい3等星ぐらいまででしょうか。
決して星のよく見えるところではありません。

1等星(よりも明るい星)は全部で21個ありますが、2等星だと67、3等星だと190個あるそうです(国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編 より)

私の移動天文台のモットーが「話の幅は広く、そしてちょっと深く、だけどマニアに走らない」なのですが、思えば2,3等星の名前は10も知らないんじゃないかと思います。

今回は少しは「天文指導員らしさ」を出すために1等星以外の「ちょっと暗いけど市街地でも見える星」について星空案内風にまとめていこうとおもいます。
(紹介している星空は10月1日22時、11月1日20時、12月1日18時ごろの北海道札幌市で見えるイメージになります。)


2,3等星で星空案内・秋(その3)はこちら

カペラ、アルデバラン、M45プレアデス星団(すばる)

10,11月に観望会をしていると、北東の空に明るい星を見つけて驚くことがあります。
北の地方ほど早くに昇ってくるこの星がぎょしゃ座の1等星カペラ(Capella)です。

M45プレアデス星団(すばる)

そしてカペラを見つけるとほぼ同時に空に上がってくるのが、おうし座で輝く散開星団、M45プレアデス星団(Pleiadesすばる)です。
こちらも市街地だと北東の空でなんだかモヤっと星があるような無いような何かがそこにあるような感じに見えるかもしれません。
もしお持ちであれば小さいのでも構いません、双眼鏡をむけてみてください。星が集まったプレアデス星団の姿を見ることができると思います。

そしてその下方で輝いている赤い星がおうし座の1等星アルデバラン(Aldebaran)になります。

カペラ、メンカリナン、マハシム、エルナト、ハッサレー

明るいカペラが高くなってくると、そこから時計回りに幾つかの星をたどり、将棋の駒のような五角形を作ることができます。
これがぎょしゃ座です。

カペラ、メンカリナン、マハシム、エルナト、ハッサレー

カペラから反時計回りに
 ・ぎょしゃ座β星メンカリナン(Menkalinan)(1.9等級)
 ・ぎょしゃ座θ星マハシム(Mahasim)(2.6等級)
 ・おうし座β星エルナト(Elnath)(1.7等級)
 ・ぎょしゃ座ι星ハッサレー(Hassaleh)(2.7等級)
になります。
(一般的な星座線ではエルナトをぎょしゃ座とおうし座で共有していますが、区分け上はおうし座の星になります)

メンカリナンはぎょしゃ座で2番目に明るい星ですが、アラビア語で「御者の肩」を意味するマンキブ ジ・ル・イナン(mankib ðī-l-‘inān)を縮めた言葉に由来するとされます。

マハシムはアラビア語で「手首」を意味するアル・ミシャム(al-mi‘ṣam)に由来するとされます。

エルナトはアラビア語で「突くこと」を意味するアン・ナタ(an-naṭḥ)に由来するとされます。その名の通りおうし座の角の先で輝いていますが、かつてはぎょしゃ座γ星アウリガも呼ばれていました。

ハッサレーについては良くわかりませんでした。チェコの天文学者がつけた名前のようなのですが、意味も由来も不明なようです。

カフ、シェダル、ツィー、ルクバー、セギン

カペラから視線を右上に上げていくと、ペルセウス座からアンドロメダ座の星(ミルファク、アルマク、ミラク)が並んでいます。

カペラ、ミルファク、アルマク、ミラク

そこから視線をやや北に向けると、5つの星がW字に並んでいるのを見つけることができます。
これがカシオペヤ座です。

カフ、シェダル、ツィー、ルクバー、セギン

天の北極付近を反時計回りに回っていますので、見る季節によってW字の向きは変わりますが、北東の空に見える秋頃ですと、高いところから順に
 ・β星カフ(Caph)(2.3等級)
 ・α星シェダル(Schedar)(2.2等級)
 ・γ星ツィー(Tsih)(2.4等級)
 ・δ星ルクバー(Ruchbah)(2.7等級)
 ・ε星セギン(セギン)(3.4等級)
(いずれもカシオペヤ座)になります。

カフその3でも出てきたアステリズム「プレアデスの両腕」でこの辺りが右腕とみなされていたことから、アラビア語で「染めた手」を意味するアル・カフ アル・ハディブ(al-Kaff al-Khadib)に由来するとされます。

シェダルはアラビア語で「胸」を意味するアル・シャドル(al-ṣadr)に由来するとされます。この場合は王妃カッシオペイアの胸の位置で輝いているとなるかと思います。

ツィーはその名に由来する名称は無いようです。IAUでも正式な名称は定めていないようですので、通称といったところでしょうか。結構明るいんですけどね。

ルクバーはアラビア語で「椅子に座った貴婦人のひざ」を意味するルクバット ダート・アル・クルシー(rukbat dhāt al-kursīy)に由来するとされます。この場合もシェダルと同じように王妃カッシオペイアの膝の位置で輝いているとなるかと思います。

セギンはその名に由来する名称は無いようです。うしかい座の星名の誤転記のようなのですが、間違えるにしても星座が離れすぎですよね。

ポラリス、コカブ、フェルカド

カシオペヤ座から北極星を探す方法は小学校で習ったかと思います。
W字の両辺を反対側に伸ばし、クロスした点とW字の中央を結んで、その長さを5倍すると北極星に辿り着きます。

ポラリス、コカブ、フェルカド

北極星という名称は固有名称ではなく、いわば普通名詞。定義にあてはまる人やもののことです。つまり、天の北極付近で輝いていればそれが北極星です。
そして今、北極星として輝いている星が、こぐま座α星ポラリス(Polaris)(2.0等級)になります。
さらにその先、カシオペヤ座の反対側に輝いているのが、こぐま座β星コカブ(Kochab)(2.1等級)とこぐま座γ星フェルカド(Pherkad)(3.0等級)になります。

ポラリスはラテン語で「極の星」を意味するステラ・ポラリス(stella polaris)が由来で、天の北極に近づいた15世紀半ばから18世紀ごろに名付けられたようです。

コカブはアラビア語で「北の星」を意味するアル・カウカブ アル・シャマリ(Al-kaukab al-shamaliy)が由来とされます。また、北極星の別名であるアラビア語のアルルカバ(Alruccabah)に由来するとの説もあるそうです。

フェルカドはアラビア語で「2匹の幼獣」を意味するアル・ファルカダン(al-farqadān)が由来とされます。この2匹はコカブとフェルカドのことで、北極星のまわりを周るように動くことが由来のようです。

アルデミラン

アルデミラン

最後は北極星ポラリスから視線を上に上げたところで輝くケフェウス座α星アルデミラン(Alderamin)(2.5等級)です。
季節によっては低くなって見えにくい星ですが、秋の夜空では空の高いところで輝いています。
アラビア語で「右の前腕部」を意味するアズィラ アル・ヤミン(að-ðirā‘ al-yamīn)に由来するとされます。ちょうどエチオピア王ケーペウスの右肩の位置で輝いています。

※アラビア語のカナ表記・発音表記は翻訳ソフトなどにかけて記載していますが、正確ではないかもしれませんので誤り等あれば指摘願います。

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