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土星の環が消える!?

土星は観望会での人気ナンバーワンの天体といってもいいかもしれません。
なんといっても望遠鏡でのぞいた時に誰もが見てそれとわかる【環】が印象的で、驚いて大きな声を上げる大人も多いです。

その土星の環ですが、『(望遠鏡で見て)環がある=土星』という方は多いと思います。
土星最大の特徴なので当然のことですね。

では、その【環】が見えなかったらどうでしょうか?
これは先輩天文指導員から聞いた話なのですが(当時、私は高校生でした)、1995年夏ごろの移動天文台では、望遠鏡で土星を見ても、それとわからない参加者が多かったそうです。
それは【環が見えなかった】からです。

土星の環は小口径の望遠鏡でも見えるほどはっきりしたものですが、その環の厚さはせいぜい1キロメートル程度、最新の研究ではわずかに10メートルともいわれています。
これだけ薄い環ですから、当然、真横から見るとほとんど見えません。
(薄い紙を真横から見るとほとんど見えないのと同じです)

土星は約30年かけて太陽の周りを一周します(公転)
このとき、土星の地軸が公転軌道面に対して約26.7度傾いているため、環も同様に傾いて周っています。
地球との位置関係上、土星が一周する間に2度、この環の傾きがゼロの位置から見る時があります。

この時、環を真横から見るため、あまりの薄さに『見えない』ことになります。
これが【環の消失現象】です。

地球から見て土星の環を真横から見る

つまり、土星が太陽の周りを一周する間に
 傾きが最大(北側)
  ↓
 傾きがゼロ(北から南へ)
  ↓
 傾きが最大(南側)
  ↓
 傾きがゼロ(南から北へ)
  ↓
 傾きが最大(北側)
と繰り返します。
これが30年ですので、傾きがゼロになるのは約15年に一度起こることになります。

1995年の次、2009年にも【環の消失現象】はあったのですが、見かけ上太陽に近く、観測するのが困難だったためあまり話題になりませんでした(移動天文台でも見ることができなかった)
そして1995年から数えて30年後の2025年に次の【環の消失現象】が起きます。
その時、『環の見えない土星の姿』を見ることができます。

なのですが、それが2度あると言ったら驚くでしょうか?

「2度あるって30年で2度でしょ?」と言いたくなりますが、そうではなく、「2025年は2度、環の消失現象が起こる」のです。
どういうことでしょうか?

土星の環が見える理由を考えてみましょう。
一つはとても薄い環に対して角度をもって見ているからで、これは上記で書いた通りです。

ではそもそもどうして土星の環は見えているのでしょうか?

それは『太陽に光が当たっているから』になります。
当たり前といえば当たり前ですが、光が当たって反射してきているので環の姿が見えることになります。
では、光が当たらなかったらどうでしょうか?

太陽の光が環の真横からあたる

土星の環は非常に薄いので、角度ゼロの位置から太陽の光が当たると、厚さの分しか光らないことになります。
そのため、地球から環に対しての角度はあるのに『環の面に光が当たっていないので見えない』ことになります。
ちょうど、土星の春分・秋分の日にこれが起こります。

つまり、土星の環が見えないときは
 1.地球から見て土星の環を真横から見るとき
 2.太陽の光が環の真横からあたるとき(土星の春分・秋分)
となり、このタイミングが一致しない限り、環の消失現象は2回起こるのです。

ですがもう一つ、環が見えない(環の消失現象が起こる)理由があるのです。

地球も土星も公転面はそれぞれわずかに傾いており、一致していません。
土星を基準に考えると、土星の北側に地球が位置しているときと、南側に位置しているときがあります。
同様に太陽が土星の北側にある時と、南側にある時があります。
(地球に置き換えると前者は北半球が夏、後者は南半球が夏の時と考えると分かりやすいかもしれません)

この時、太陽が北側で地球が南側(もしくはその反対)のとき、何が起こるでしょうか?

太陽からの光は環にあたり反射しますが、土星の北側に向かって反射します。
また非常に環は薄いため、太陽に光が通過しますが、その光は土星本体に当たります。
つまり、反射した光も通過した光も地球には届きません。
光が届かなければ当然、その姿を見ることはできず、環が消失します。
(厳密にいうと環を構成する微小天体は完全な球体ではなくいびつな形をしていることを考えると、斜め方向にも光を反射するので真っ暗ということはないと思います)

地球と太陽の位置が、土星の環に対して北南に分かれる

ここまでの話をまとめると
 1.地球から見て土星の環を真横から見るとき
 2.太陽の光が環の真横からあたるとき(土星の春分・秋分)
 3.地球と太陽の位置が、土星の環に対して北南に分かれるとき
に環の消失現象が起こるのです。

下の表は国立天文台の暦Wikiから持ってきたものに加筆したものです。

国立天文台の暦Wikiより

※N->Sは北から南へ、S->Nは南から北へと、土星の赤道を横切るタイミングを表わします。
土星の暦については下記を参考にしました(2025年の留がいつか分からなかった。。。)
https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/cande/phenomena_f.cgi
http://www.hal-astro-lab.com/data/event2024.html
>月間星ナビ 星空未来カレンダー 2021〜2040(2020年11月号特別付録)

2025年だと
 理由1:2025/03/24 04h
 理由2:2025/05/07 01h
 理由3:2025/03/24 04h から 2025/05/07 01h
となるでしょうか。

もっとも私は環の消失現象を実際に見たことがないので、調べた知識だけ、というのが説得力に欠けます。
やはり実際に体験したことのある人の話をもっと聞いてみたいものです。

近年の惑星撮影カメラの進化を考えると意外と理由1,2でも微かに写るかもしれませんね。
私的には3の時でも暗いながらも見えるんじゃないかと思っています。


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