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2,3等星で星空案内・秋(その1)

普段、私が移動天文台などで観望会をしている場所は市街地の学校のグラウンドや公園の広場、児童会館などの駐車場になります。
そこで見える星はせいぜい3等星ぐらいまででしょうか。
決して星のよく見えるところではありません。

1等星(よりも明るい星)は全部で21個ありますが、2等星だと67、3等星だと190個あるそうです(国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編 より)

私の移動天文台のモットーが「話の幅は広く、そしてちょっと深く、だけどマニアに走らない」なのですが、思えば2,3等星の名前は10も知らないんじゃないかと思います。

今回は少しは「天文指導員らしさ」を出すために1等星以外の「ちょっと暗いけど市街地でも見える星」について星空案内風にまとめていこうとおもいます。
(紹介している星空は10月1日22時、11月1日20時、12月1日18時ごろの北海道札幌市で見えるイメージになります。)


季節は秋ですが、西の空ではまだまだ夏の星座が頑張っています。

ベガ、デネブ、アルタイル

ベガ、デネブ、アルタイル

惑星を除くと、一番星はこと座の1等星ベガ(Vega)になると思います。
そして視線を左に向けるとわし座の1等星アルタイル(Altair)
ベガから視線を上に向けるとはくちょう座の1等星デネブ(Deneb)が輝いています。
いわゆる夏の大三角ですね。

アルタイル、アルシャイン、タラゼド

アルタイル、アルシャイン、タラゼド

比較的空が暗いところであれば、アルタイルの両脇に星が見えるかと思います。
ベガに近い側で輝いているのが、わし座γ星タラゼド(Tarazed)(2.7等級)、反対側がβ星アルシャイン(Alshain)(3.7等級)になります。
(アルシャインは市街地ではほとんど見えないかもしれません)
バイエル名(α星、β星など)はその星座内で明るさの順に付けられるのが基本ですが、ここでは違うようです(バイエル名については別にまとめることにしましょう)

ベガを含む三つの星の並びはペルシア(現在のイラン)のあたりで「(はかりの)竿」とみるアステリズムとされシャヒン・イ タラーズ(shāhīn-i tarāzū)と呼ばれていました。
アルシャインタラゼドの名前はこれに由来するとされます。
アルシャインについては、アラビア語で「隼」を意味するアッ・シャ ヒーン(aš-šāh īn)に由来するという説もあります。
タラゼドについてはレダという別名もあるようですが詳細については分かりませんでした。

ベガ、シェリアク、スラファト

ベガ、シェリアク、スラファト

こと座のベガからアルタイルの方に少し行くと、二つの星が並ぶように輝いています。
これがこと座β星シェリアク(Sheliak)(3.4等級)とγ星スラファト(Sulafat)(3.2等級)になります。(シェリアクは約12.9日の周期で3.25等級から4.36等級の間で明るさが変わる食変光星なので見えにくい時もあります)

シェリアクはアラビア語で「琴」を意味するアル・シリヤク(al-shilyāq)スラファトはアラビア語で「亀」を意味するアル・スラファト(al-sulaḥfāt)に由来するとされます。
これはヘルメス(英語名:マーキュリー)が海岸で拾った亀の甲羅に弦を張って琴を作ったという伝説と関係があるとされます。

デネブ、アルビレオ、サドル、ファワーリス、アルジャナー

デネブ、アルビレオ、サドル、ファワーリス、アルジャナー

はくちょう座のデネブから視線を少し下げると三つの星が等間隔に並んでいます。
左がはくちょう座ε星アルジャナー(Aljanah)(2.5等級)、真ん中がγ星サドル(Sadr)(2.2等級)、右がδ星ファワーリス(Fawaris)(2.9等級)になります。
さらにデネブからサドルを結んだ線を伸ばしたところであるのがβ星アルビレオ(Albireo)(3.1等級)になります。

アルジャナーはかつてはギェナー(Gienah)と呼ばれていましたが、ギェナーがからす座γ星の固有名として承認され、はくちょう座ε星の固有名はアルジャナーとされました。
アラビア語で「つばさ」を意味するアル・ジェナー(al-janāḥ)に由来するとされます。

サドルは翼をひろげて天の川の上を飛ぶ白鳥の姿のちょうど胸の位置で輝いており、アラビア語で「めんどりの胸」を意味するアル・サドル アル・ダジャジャー(al-sadr al-dajājah)に由来するとされます。

ファワーリスはよく分かりませんでいた。Wikipediaによるといくつかの星を合わせてアラビア語で「騎手」を意味するアステリズム、アル・ファワーリス(al-fawāris)に由来するようです。

アルビレオは天の川の上を飛ぶ白鳥のちょうど口の位置で輝いています。
一般的に「アラビア語でくちばしを意味する」と説明されると思いますが、これは誤りのようです。
(ギリシャ語で「鳥」を意味する言葉がアラビア語圏に伝わった際に謝って伝わり、そこからラテン語に翻訳する際に植物の名前と間違えられ ireo となりました。そこにアラビア語の定冠詞である al- がついて al-(b)ireo となったようです。うーん、ややこしい。。。)
別名メンカルとも呼ばれますが、こちらはアラビア語のアル・ミンハル アル・ダジャジャー(al-minqar al-dajāja)に由来するとされます。

※アラビア語のカナ表記・発音表記は翻訳ソフトなどにかけて記載していますが、正確ではないかもしれませんので誤り等あれば指摘願います。

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