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ジェンダー表現に鈍感な日本【翻訳】

※ゼノブレイド2のネタバレがあります。

ゼノブレイド2の原作と英語版を比較した記事です。
原作と翻訳で全く違う内容のテキストを発見したので、ご紹介したいと思います。

なお、タイトルにある通りジェンダー表現について触れます。最近は「ポリコレ」という言葉が一般的に使われるようになりました。
今や、女キャラが美少女だったり、胸が豊満なだけで炎上してしまう時代です。私はそんな過激なポリコレ思想を持っているわけではないし、むしろ美少女も巨乳も大歓迎!
「ゼノブレイド2」を批判するつもりもないということを最初に断っておきます。

今回のお話の焦点になるのは、メレフというキャラクターです。

メレフ・ラハット(英: Mòrag Ladair)

スペルビア帝国の特別執権官、メレフ・ラハット。女性。見た目や仕草はジェンダーレスな感じ。
帝国の皇族として生まれる。スペルビア帝国は男の子が皇位につく慣例があったが、当初は男の子に恵まれなかったため、彼女は後継ぎになるべく男として育てられた、という生い立ちがあるので、彼女のジェンダーレスな恰好や仕草が彼女自身の趣向かどうかは分からない。
なお、仲間のジークやサイカに「男みたいなもん」と言われた際には、キレ散らかしていたので、男扱いされたいわけではないよう。

ここから本題

みなさんに見ていただきたいのはこちらのシーン――
第7話の冒頭シーン。シンたちに敗れ、パートナーのホムラ(ヒカリ)までさらわれたレックスは自信を失い、戦意喪失。
不貞腐れるレックスに、ニアとカグヅチが叱咤激励――怒りをぶつけるシーンです。

とそこにビャッコが仲裁に入ろうとしますが……

メレフが引き止めます

「お前も女やろ!」とツッコもうとしますが、空気を読んで口をつむぐジークw

というシーンなのですが、メレフさんの台詞、英語版ではこうなっています。

ここは二人に任せようじゃないか

英語版では肝心な部分「女性陣」が訳出されておらず、
原作にあった面白おかしいニュアンスが消えています。

これによって次のカット、ジークの仕草はツッコもうとするもやめるという意図がありましたが、これが完全に汲み取れなくなりました。
英語版のプレイヤーにはこのジークがどう映っているのでしょう?

それはさておき、なぜ「女性陣」という部分が訳出されなかったのでしょうか。

それはズバリ、海外が日本に比べてジェンダーの問題に敏感だからではないでしょうか。(日本と一括りにしてごめん)

メレフの「女性陣に任せようじゃないか」という発言に対して、たいていの人はジークのように「お前も女やろ」とツッコみたくなるかもしれません。

しかし、LGBTの理解が進んだこの世の中です。
「メレフは自分を女性として扱ってほしくないんだ」
→「メレフはトランスジェンダーかノンバイナリーなんだ」

と本気で受け止める人がいてもおかしくありませんよね。

そう考えるとジークが言わんとした「お前も女やろ」は、あまりにも配慮がありませんよね。

メレフが性的マイノリティだという描写は原作にはありません。じゃないとこんなにかわいらしい水着衣装を着せないと思うし…。

つまり「女性陣に任せようじゃないか」発言は
海外ではメレフの性自認を誤解するプレイヤーが現れる可能性を配慮してローカライズ(改変)されたのでしょう。

みなさんは they が複数形だけではなく、単数形でも使われることを知っていますか。

they は he(男性)でも she(女性)でもないという意味です。
主にノンバイナリーを公表している人に対して使用します。

英語は人の話をするときは人称代名詞(he she they)を使用しなければなりません。日本語では性別関係なく「~さん」と言えますが、英語ではそうはいかないのです。

だから英語圏では初対面の相手に“What's your preferred pronouns?”と言って、自分がどの代名詞で呼ばれたいかを聞く文化があります。
ジェンダー表現に対する配慮は英語圏の人間にとっては身近なことなのです。そう考えると、日本が海外に比べて「鈍感」なのは当然なのかもしれません。

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