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小説「対抗運動」第4章5 国際フェアートレード・デー

おいさん「舞ちゃん、5月の第3土曜日は国際フェアトレード・デーやね。今年は17日じゃ。グローバル・ヴィレッジは東京都庭園美術館でイべントやるんじゃが、プログラム見たら、反戦デモで知り合うた人らが大勢参加しよる。ファッションショーやライブも楽しみなんじゃが、フォーラムに期待しとるんよ。おいさんは、トランスナショナルな対抗運動のヴィジョンが生まれる、これが第2回目の機会じゃと思うとる。」

舞ちゃん「ワールド・ピース・ナウの4月30日のシンポが第1回目・・・」

おいさん「『未来バンク』の田中さんは今度もパネラーで招かれとるけど、今のところ、お金の流れを見直して、お金の使い方の工夫で現実の矛盾を乗り越えていける、という田中さんのビジョンが一番見通しがよいね。」

舞ちゃん「どういうこと?」

おいさん「反戦デモは大勢の人の意志表示やね。けど、それだけで大統領や首相の考えを変えることはできんかった。ほいで、大勢の人の意志を無視できんように、もう一歩踏み込んで考えたんが、ボイコットじゃったね。あと、買わん、というんは、他のもんを買う、いうことやったね。
ところで、フェアトレードは、目的実現のために、他のもんを買う、ことを充分活用しとる知恵なわけや。今、その目的は、どんどん進む環境破壊や、ますます広がる貧富の差を食い止め、是正して、世界を持続可能な社会にしていくことや。ますます広がる貧富の差はテロや戦争の温床じゃね。じゃから、フェアトレードは二重に戦争に対抗する運動じゃ。ボイコットにもなっとるし、テロや戦争の原因をなくしていく運動でもある。
けど、両方ともあまり大きな運動になっていかんし、今のところ有機的に結合する様子もないんじゃが、『未来バンク』のビジョンには二つを繋ぐ鍵がありそうじゃ。」

舞ちゃん「どうするん?」

おいさん「『未来バンク』はエコロジーと市民事業と福祉にしか融資せんのじゃが、フェアトレードに融資する、未来バンク、が立ちあがるとね、反戦―ボイコットを意志する人らは、他のもんを買う、ために投資ができる。フェアトレードバンク、じゃね。まだ、フェアトレードが提供する商品は少ないけんね。
条件が整えば、フェアトレードを志す人らはもっと多様な活動ができる。すでに試みとるみたいじゃが、小規模な農家や手工業の職人に、少しのお金でも貸し出す、小規模融資が浸透すれば、ますます多様なグループが共存できるようになる。商品が増えるだけじゃなしに、生産者の活動も多様になるんじゃ。フェアトレードバンクへの投資は魅力的じゃろ?」

舞ちゃん「おいさん、生産―消費協同組合と市民通貨は?」

おいさん「舞ちゃん、生産―消費協同組合やないとフェアトレードはなかなかできんよ。それにね、フェアトレードの店も他の店と競争せんといかん。そのためには、フェアトレードバンクから融資を受ける必要もある。そこでじゃ、フェアトレードバンクも他の銀行との競争にさらされるんじゃが、利子で勝負したら話しにならん。利子のない市民通貨が浸透していくなら、充分競争になるけどね。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年5月17日

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