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小説「対抗運動」第6章2 茨城でGM大豆騒動

舞ちゃん「おいさん、茨城いうたら水戸納豆やろ、これは大変なことになったね。」

おいさん「おう、もう知っとるんか。おいさんも詳しい情報を集めとるとこじゃ。よりによって、国産大豆の牙城でGM大豆の作付け実験をするとはね。まあ、それもええけんど、フェアーにやってもらわんとね。GM汚染が拡がったら取り返しがつかんのやからね。やむにやまれず近所の篤実な老農夫が行為に及んだらしいんじゃ。舞ちゃんは毎日新聞の記事を読んだんか?おいさんはまだ読んどらんのじゃが、何と書いとるんかいね?」

舞ちゃん「おいさん、毎日新聞はGM大豆が無断で掘り返され埋められた、バイオ作物懇話会の長友氏は県警に被害届を出した、といきなり書いてあるだけなんよ。全く農家に取材してないことが解るよ。署名まである記事なんやけどね。インターネットでちょっと検索したら事実関係や問題の所在がわかるんやのに。」

おいさん「おー、舞ちゃんもネットで情報収集しとるんか!」

舞ちゃん「おいさん、対抗運動は正確な情報収集から始めんとね。」

おいさん「新庄水田トラストの阿部さんと茨城アイガモ水田トラストの平野さんは、7月の23日と8月の3日に谷和原(やわら)村に行って来たようじゃ。現地では集会をタイミング良く開いて、情報をオープンにしていくようじゃね。1回も足を運ばずに無責任な記事を書くようなジャーナリストは後で泣きを見るじゃろうね。第一に、被害届は出てないようじゃよ。」

舞ちゃん「おいさん、懇話会の長友氏は6月23日に、〈風評被害や村のイメージダウンを避けるため(GM大豆を)開花前に刈り取る〉と事業報告していたのにもかかわらず、7月23日に〈開花前とは言っていない、開花頃と言った〉と前言を翻し、さらに25日には〈枝豆と雑草の二次発生(スーパー雑草の確認)の時期まで検証したい〉と言い出したんよ。」

おいさん「バイオ作物懇話会へは、モンサント社から種子も資材も資金も提供されているようじゃね。新聞は、無断で掘り返され埋められたと、強調して書いてあるようじゃが、開花確認の後、再三にわたる、花粉の飛散防止措置の要請があったことは無視しとるね。地主はこの要請を受け入れとるし、懇話会が作付けした畑は、農地法に基く耕作ではないので、地主の判断が最終判断となるんじゃ。」

舞ちゃん「おいさん、この記者は遺伝子組み替え作物のこと、何にも調べてないんやろか?」

おいさん「うーん、まさかそんなことはないじゃろが、農水省なんかでも、GM大豆の安全性はすでに決着済みと言い張るけんね。けど食べ物じゃけんね、長い時間をかけんとそんなことは言えんはずじゃ、どんな影響が出るかは。さらには子孫への影響も考えんといかんのじゃからね。しかし、今回の騒動のポイントは、花粉の飛散がどのような事態を招くか、国産大豆がGM汚染されてしまったら取り返しがつかないと、農家の人が心底恐れとるのに、全くそのことに触れてないんは、ただ無知なんかもしれんね。」

舞ちゃん「おいさん、毎日新聞は最後にこう書いとるよ。〈長友代表は「予定していた試験はできなくなった。今後の対応は未定だが反対派が謝罪すれば被害届は取り下げたい」と話している。〉この記者は、長友氏にインタビューしただけで書いたんやね。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年8月18日

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