小説「対抗運動」第4章3 田植え
舞ちゃん「おいさん、ワールド・ピース・ナウのシンポジウムは、どうやった?」
おいさん「うーん。まだ、これまでの総括いう感じでね、1歩踏み出す、とこまではいかんかった。トランスナショナルな対抗運動のビジョンが出てくるのには、あと2~3回はやらなあかんやろね。」
舞ちゃん「ふーん。東金の方は?」
おいさん「こっちは始まったばっかしじゃからね。第1部はフリートーキングが中心で、夜の第2部では10人くらいの人がね、それぞれどんな知恵出したか報告したんじゃ。いろいろあったよ。窓ガラスに親子4人で描いた反戦ポスター張り出した人も来とったし、千葉県を一周する、反核・平和の火リレー、を毎年続けとる人らもおったよ。最後はルバーブの順さんとカナエちゃんが、フェアトレードの話と店に出しとる反戦コラージュの説明をやりよった。24日にルバーブでやる対抗運動のシンポの宣伝もやったよ。ネモッちゃんのボイコット・フラグと木村の親方が作ったリストの説明は、第1部でおいさんがやった。」
舞ちゃん「大勢来とった?」
おいさん「第1部は20人もおらんかったね。けど第2部へは100人位は来とったよ。中学生も反戦詩を朗読しよった。舞ちゃん、なかなか飾らんええ会やったけどね、続けていけるかどうかが勝負じゃろね。今回集まった人達がアソシエートして、情報公開おにぎり、みたいなもんが生まれたら続いていくじゃろね・・・。舞ちゃん、おいさんは何か満足できんかったんで、3日と4日、足を伸ばして鴨川市の大山いうとこへ行ってきた。千枚田の田植え、手伝うてきたんじゃ。棚田いうんは知っとる?」
舞ちゃん「瀬戸内海の島にある、段々畑みたいになっとる田んぼ?」
おいさん「そうなんじゃ。ここは天水いうてね、水を引くんじゃなしに雨水を貯めといて田植えをするんじゃ。田中さんらが事務局やっとる自然王国へ押しかけたんじゃが、50人以上も来とったよ。ここの棚田は一番上、ほとんど山頂に近い所にあるんじゃけどね。トラストの会員以外の、若い飛び入りの人が多かった。NGOのピースボートやアシード・ジャパン、水の問題やら産業廃棄物問題に取り組み始めたフューチャーズ・クラブの人たちと作業の合間に話し合うたよ。」
舞ちゃん「NGOの人らも田植えするん?」
おいさん「帰農する人はまだ数えるほどじゃけど、関心持っとる若い人はずいぶん増えたよ。神奈川では福祉に関心持っとる人でね、農作業じゃったら精神に障害を持つ人とも一緒にやれる、いうんで帰農した人もおるよ。」
舞ちゃん「ふーん。」
おいさん「大山千枚田には保存会があってトラスト運動が盛んなんじゃけどね、3日、4日で600人以上の人が田植えに参加したんじゃと。行ってよかったと思たんじゃが、田植えだけじゃなしにね、水のことも真剣に考えよる人らがおったわい。新庄の有機農業者協会の百姓たちといっしょでね、どんどんものごとはつながっていくけんね。山奥には知らん間に産業廃棄物処理場がつくられる。気がついたら、谷があっという間にゴミの山になっとる具合じゃ。けど、山奥は水源地じゃけんね。井戸にゴミ棄てるんと同んなじじゃ。ここの人らはね、対抗運動を始めよったよ。」
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年5月7日
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