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小説「対抗運動」第6章3 シュマイザーさんの訴え

おいさん「舞ちゃん、先月、カナダのシュマイザーさんが日本のあちこちで講演してくれたんやけど、おかげでモンサントのやり口がようわかるようになったね。」

舞ちゃん「おいさん、シュマイザーさんはナタネの栽培を50年以上もやってきた農家なんやね。地域に合う耐病種子の開発者としても知られとったのに、突然モンサントから告訴されたんや。モンサントのGMナタネを違法に入手して、ライセンスなしで栽培した、特許侵害やと。シュマイザーさんはそれに対して、当然のことやけど、50年以上かけて育ててきた種子が、モンサントのGMナタネに汚染されたんやないか、賠償すべきはモンサントの方やと立ち向かった。」

おいさん「けど、連邦裁判所の予審では、汚染された畑にできた種子はモンサントに所有権が移転するという、モンサント側の主張を認める判決が出た。上告したけど、二審でもモンサントの主張が認められた。それでさらに最高裁にまで持ち込まれとるんやけど、開廷は来年の1月や。特許法は世界中で適用されるから、この判決は世界中の農民に影響を与えるんじゃ。」

舞ちゃん「おいさん、去年の12月にカナダの最高裁では、高度生命体には特許は認められないという判決が出とるんやね。今度は、農民の所有権と大企業の知的所有権のどちらが優先されるか、裁定が出るらしいんやけど、農民の所有権が優先されるんやろか?」

おいさん「舞ちゃん、茨城の騒動でも、段々分かってきたんは、国家は農民や消費者を本気で守らせん、いうことや。ついこの間の狂牛病騒ぎの時の農水省の対応もそうやったね。今度も、モンサントからの報告をうのみにしとるだけや。何も調べとりゃせんよ。それどころか、監督下にある農林水産先端技術振興センター(STAFF)がモンサントや長友氏と一体になって組み換え大豆作付けの引き受け農家を探したり口利きしたりしとるんや。」

舞ちゃん「国内産大豆までGM汚染されてしもたら、もうボイコットもできんようになるね。ボイコットするには、他で、GM汚染されてないものが買えんとしょうがない。」

おいさん「結局モンサントの目的はそこじゃと思う。日本で遺伝子組み換え大豆を栽培し、混入が起これば、同じ混入大豆なら米国産が圧倒的に安いから、いままで遺伝子組み換え生産がされていない国内産にこだわって買っていた消費者はあきらめて輸入大豆を受け入れるじゃろう。そのためには、米国・カナダで550件も引き起こしとるという、汚染を受けた農家に対し逆に特許侵害として賠償金を取り立てることを日本でもやるかもしれん。モンサントの戦略は、日本で売れるはずも無い遺伝子組み換え大豆種子を販売することではのうて、汚染を作り出すことなんや。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年8月18日

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