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小説「対抗運動」第4章2 自由が丘のグローバル・ビレッジ

おいさん「舞ちゃん、ター博士が奮起してね、『トランス・コミック』の英語版が出来たよ。嬉しかったんで、NGOのグローバル・ビレッジにメール出して、万置きさせてくれんか、と頼んだら、フェアトレードカンパニーからええ返事が来たんじゃ。それで昨日事務所へ行ってきたよ。グローバル・ビレッジはワールド・ピ-ス・ナウの賛同団体じゃったけんね、広報担当の人がネモッちゃんのボイコットフラグに注目してくれとってね、うまいこといったよ。自由が丘の直営店に置いてくれることになった。活気ある事務所じゃったよ。若い女の人が多かったようじゃが、20人以上も働いとるそうじゃ。グローバル・ビレッジが推進しとるフェアトレードの輸入や販売の実務はこのフェアトレードカンパニーがやっとるんじゃと。」

舞ちゃん「あの、ピープルツリーのカタログ出しとるとこやね。インドの小規模農家の人たちが育てとるオーガニック・コットンの原綿から作られる製品・・・」

おいさん「ところで、先週、4月の15日は何の日やったか知っとる?」

舞ちゃん「国際ボイコットデー! ピース・チョイス・キャンペーン実行委員会のホームページで見たよ、宮川さんやセッツちゃんが不買宣言文と請願書を持ってシティバンクを訪れた写真が載っとったね。ベルギーのゲントでは、お昼休みのマクドナルドの前で、オーガニックな〈ピースバーガー〉が配られたんやね。わたしらの、情報公開おにぎり、によう似とるね。」

おいさん「舞ちゃん、30日にはこれまでのデモを踏まえて、四谷の区民センターでシンポジウムが開かれることになったよ。『歩くデモから考え話し合うシンポへ』じゃね。主催のワールド・ピース・ナウによると、のべ12万人が歩いたんじゃそうな。ボイコットやらフェアトレード、情報公開めざして、いよいよ知恵の結集じゃ。様々な対抗運動が、トランスナショナルに繋がっていくんじゃないかと、おいさんは大いに期待しとるよ。」

舞ちゃん「おいさん、地方の人はどうしたらええんじゃろう?」

おいさん「舞ちゃん、ベルギーのゲントて、聞いたことあった?」

舞ちゃん「いいや、初めて聞いた。」

おいさん「地方も中央もなくなるよ。先進国も途上国も、ね。知恵のある者が集まる所がその時の世界の中心じゃ。インターネットでその対抗運動の知恵は、瞬時に世界中に広まっていくんじゃ。目指す方向はだいたい見えとるんじゃけんね。ちょっと復習しとこうか。プルードンはこういうビジョンを示したんじゃったね。

《政治的機能は産業機能に還元される、社会的秩序はたんに取引と交換という事実にのみ由来する》

そして、マルクスはこうじゃったね。

《社会的生産を自由な協同組合労働の巨大な、調和ある一体系に転化する》

今回も、戦争に公然と反対できたんは協同組合がほとんどやったね。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年4月27日

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