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小説「対抗運動」第8章2 千倉の「風の王国」

舞ちゃん 「おいさん、今、千倉におるんよ。」

おいさん「なんで?三里塚へ行ったんやないんか。ん、佐倉?」

舞ちゃん「ううん、千葉の先端の千倉。グリーンコンシューマーのとこに行ったらいろんな人と会うてね、東金のミュージシャンもおって、ルバーブまで乗せて行ってもろた。イスラエルのキブツから一時帰国しとる人もおったよ。」

おいさん「わかった、ルバーブでカナエちゃんに会うたんやな?今、カナエちゃんは千倉で絵、描いとるそうやから・・・」

舞ちゃん「おしい(笑) ルバーブのジュンさんが千倉に連れてってくれた。店が休みの時は、皆でちょくちょく行くんやと。漁港の入り口をまたぐように千倉大橋がかかっとるんやけど、そのたもとにカフェ・ド・梵はあるんや。漁村の物置小屋みたいなカフェ。カナエちゃんの個展やっとった。」

おいさん「ふーん」

舞ちゃん「おいさん、外房の海はええよ。瀬戸内海と全然ちがうよ。知っとる?」

おいさん「知っとるけど(笑)」

舞ちゃん「うち、こっから始めてみよ、と思うんよ。」

おいさん「何をよ?」

舞ちゃん「対抗運動」

おいさん「どんな?」

舞ちゃん「このカフェではね、月2回寺子屋講座があるんよ。漁師さんやらお百姓やらスペインの絵描きさんやら、皆が交替で講師やってね。ママさんも料理教えるんやて。ご近所の人がたくさん集まるんやて。」

おいさん「ふーん、それで?」

舞ちゃん「三里塚でね、三浦グリーンビジネスの植物保護液のこと知ったんや。有機濃家は化学農薬使わんけん、害虫の駆除には悩んどるとこが多いんよ。あと新庄のもみがらミネラル炭や水田トラストのこととかね、私も知っとることを皆に教えるんや。フェアトレードやボイコットのことも。」

おいさん「四国ではアカンのかい?」

舞ちゃん「そうやないけど、ここがピンときたんや。ここから始めるんや。そしてあちこち移動していく。カナエちゃんは大阪から来て、高田馬場、東金、そして千倉と動いてきたんやって。ルバーブのジュンさんもインドの各地へ度々出かけとるしね。教えるだけやないよ。情報交換だけやない。品物もいっしょや。もみがらミネラル炭、植物保護液、フェアトレードの雑貨、有機の作物なんかも、ね」

おいさん「ほうか。なんかミツバチみたいやな。花粉つけて、あちこち飛んで行くわけやな。けど、大変そうやね。」

舞ちゃん「カナエちゃんもジュンさんも、ここのママさんもちゃんとやっとるやん。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年9月29日

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