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Homecoming②

その晩、バスの車内でうとうとしながら前の日に何が起こったのか改めて考えていた。わたしはEの恋人に通報されたとあの警官は教えてくれたが、それに思い当たるのは前々から友達だ、と言っていた相手に違いない。それは大体理解できた。では、なぜEわたしをカリフォルニアからわざわざ再会するために呼び寄せたのであろう。それに関しては謎のままだ。そんな事を考えているわたしを乗せたまま、バスは西へと走り続けた。

バスがコロンバスについた頃にはもう丸一日経過していたとおもう。相変わらずの雪景色に相変わらずのターミナルが佇んでいる。往路もここで1時間休憩であったのでここで長時間停車することはわかっていた。今夜はここのターミナルで夕食を摂ることにした。

アメリカのファーストフードのバリエーションの少なさに驚かされる人も少なくないと思う。よくもああいうのを毎日食べていられるよな、そんなたぐいの食べ物がラインナップされている。今夜も消去法でメニューから選ぶのか‥そう思うと食欲も薄れてしまう。だが、ここで食べておかないといつ食事にありつけるかわからない。仕方がなくチキンサンドを選んだ。

長いアメリカ生活の大半はロサンゼルスで過ごした。そのせいで日本と変わらない、いや、日本以上の美味しい食べ物に毎日ありつけることができた。韓国料理だって本場物だし、フォーだってケバブだって本格的な物が容易に食べられる。それが、この旅でロサンゼルスに住んでいたからこそ可能だったと言うことがとても身にしみた。普通のアメリカのファーストフードばかり食べるほど気が滅入る拷問はあまりないだろう。

やがてでてきたサンドを頬張りながら再びパソコンを開いた。Eに連絡する前に、ロサンゼルスについたあとの事を友人と話す必要があったからだ。Eからの不在着信は倍に増えていて、チャットの方も未読メッセージが増えていた。まだそれらに向き合う気持ちが出来なかったのでそれらを無視して友人に連絡をとった。

「おお、フィラデルフィアはどうだ、今どこにいるんだ?」

わたしはこれまで起こった出来事を淡々と伝えた。

「‥ちょっとそのEに連絡を取ってみる。」

「いや、それはやめてくれ。それは自分でなんとかする。それよりクリスマスイブにロサンゼルスに戻るんだが、迎えに来てもらえないか?」

「わかった。クリスマスイブだね。つくまでにちょこちょこ連絡よこしてくれよな?」

こうして彼との通話を終えた。バスの発車時間ももうすぐだ。天気は未だ雪模様だった。わたしは再び乗車し、ミズーリへと向かっていった。

つづく

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