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高卒就職問題~本当に変えるべきは古臭い常識なのです~

 ごぶさたしておりました高卒就職問題研究のtransactorlabです。以前は田舎の高校で進路指導をしながら・・・と自己紹介をしておりましたが、異動になり今年度は進路からは離れることになりました。でも、この問題の研究と発信はライフワークとして続けようと思います。

 昨年度までは高卒就職問題の多くは厚生労働省職業安定局所管「高卒就職情報WEB提供サービス」の質の低さと閉鎖性に起因するため改善を求める、ということに終始していました。その考え自体に変わりはありませんが、再開にあたり再考したところ、いくつか他の要因が見えてきました。その一つが本稿副題の「古い常識」です。

私たちの中にある古くなった常識

 「高卒初任給ならこれぐらいでしょ」といった価値基準、あるいは感覚、「普通の範囲」、「なんとなく当たり前の基準」、「アンコンシャスバイアス」・・・これらは経験知からできあがるものです。我が国が人口減少時代に突入して既に久しく、様々な場面で価値基準転換の必要性が叫ばれていますが、改革がなかなか進まないのはこの「古い常識」が邪魔しているからなのではないでしょうか。

 現代日本の18歳人口は100万人を割ろうとしています。30年で半分になりました。今の50歳前後の世代の半分しかいないのです。この事実と意味を私たちはをもっと深刻に考え、有効な対策を打ち続けなければいけません。そのためには人口増加時代に出来上がった古い常識を捨てる必要があります。

 前シリーズでは「社長、待遇をもっと上げないと採用できないどころが応募も来ませんよ」という意見を書きました。これは採用難に悩む企業の方々の「どうすれば新卒応募を増やせるか」との問いに答えたものです。

若い世代の所得を増やそう


 国家システム維持の観点で考えると事態はもっと深刻です。若い人の所得を2倍近くに上げなければ国の経済は破綻の危機を迎えます。若い年齢層ほど人口が減るわけですから、その人たちの所得を大幅に引き上げなければ国内で廻るお金の総量がどんどん減り、従って税収も縮小するからです。これからの日本で「こんな国では子どもはせいぜい一人まで、それ以上は産まないほうがいい」と判断する若い夫婦が多数を占めるようになれば、もはや回復不能です。
 そうならないようにするには、20~30歳台の世代の人たちが仕事と子育ての余裕を持った両立を可能にする環境が不可欠です。普通の共働き夫婦が家事ヘルパーやベビーシッターなどを雇えるぐらいの収入が「普通」であるような状態にするべきです。

 高卒初任給35万円の求人票?
 今の時代、別に驚く待遇でもないでしょう
 若いだけで稀少価値がありますからね

 このような会話が巷で、とくに高校現場で交わされるようになればいいのになあ、と私は思うのであります。

 突飛でしょうか?最近のニュースで、子どもの数がまた過去最低を更新したとのこと、国の借金が1000兆円を越えたとの報道がありました。それにこの人口ピラミッドを重ねてみてください。どうですか?
 私は恐怖を感じます。

18歳人口は50歳人口のほぼ半分!若い世代の所得を大幅に増やさなければ
国内に廻るお金も税収も激減し、国家システムは破綻の危機に陥る


 古い常識から離れて客観的なデータを基に考えましょう。高卒初任給は全ての労働者の賃金体系のベースです。最低賃金と足を引っ張り合う関係でもあります。まずここに手を付けることが国内経済状況好転の始まりになると私は思います。

 誰もが時代の変化に即した判断ができるようにするためには、正しく分かりやすい情報が十分にあり、誰もがアクセスできることが不可欠です。そのためにも厚生労働省職業安定局には「高卒就職情報WEB提供サービス」の改善を求めたい・・・あれ、前と一緒だな。

 次回は高卒就職問題全般のおさらいをしようと思います。

  こちらのホームページに2021年度の全国の公開高卒求人の相場情報を掲載しております。自由にダウンロードできますのでご活用ください。


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