【旅行記1-4】春の北東北旅〜4日目〜
大課金プレー
岩手県北上市から始まる4日目。快活CLUBを出て駅に行くと、前日醜い競歩を繰り広げた男が列車を待っていた。ここまでどうやら全く同じ行程だったようだ。次の北上駅で下車する。
北上駅から乗車するのは「快速アテルイ」。水沢駅から朝の1本だけ存在する快速列車である。停車駅は、水沢から花巻までの各駅と、矢幅・仙北町。奥州・北上都市圏と盛岡都市圏とをつなぐ速達列車であると理解できる。
車両はいつもの701系盛岡色。快速幕が新鮮に見える。快速列車ということで快調に飛ばしていき、終点の盛岡までは45分ほどであった。
1時間ほど時間があるので、盛岡の街を散歩してみる。この日は天気が良く、岩手山がくっきりと見えた。まだ朝の8時なので空いている店も少なく、岩手山の撮影に徹することにした。
開運橋と岩手山のツーショット。本当に天気がいい。
これは開運橋から少し先に行った旭橋から撮影。北上川の背後に岩手山が綺麗に収まった。少し雲がかかっているのが残念なところ。
盛岡駅に戻り、次に乗車するのは青い森鉄道、ではなくIGRいわて銀河鉄道線。IGR線は東北新幹線の盛岡ー八戸開業に合わせてJRから経営を分離された東北本線のうち、岩手県内区間を管轄する路線で、18きっぷは使えない上に、青い森鉄道のような通過特例も存在しない。北海道・東日本パスでは、IGR線も自由に乗り放題となるが、18きっぷでは盛岡から八戸まで¥3,110も課金する必要がある。しかし、日本全国の鉄道路線に全て乗ることを目標としている私は、なんとしてもこの路線に乗る必要があった。
青い森鉄道所有の車両には、青い森鉄道のキャラクター「モーリー」のかわいらしいイラストが描かれている。青い森鉄道とIGRいわて銀河鉄道は盛岡ー八戸間で車両を共通で運用している。
IGR線をどんどん北上していく。大課金したからにはちゃんと沿線の風景を見ておこうと思い、車窓を眺めていた。
二戸駅ではIGRのキャラクターが出迎えてくれた。目時駅からは青い森鉄道の路線ではあるが、乗務員の交代は実施されず、青い森鉄道の乗務員が引き続き担当していた。
八戸駅からは青森行きにすぐに乗り継いだ。車内は意外にも混雑していたが、三沢駅で多くの降車があり、そこからは比較的空いていた。青森市内では学生を中心に多くの乗車があり、筒井駅を出た頃には相当な立ち客が出ていた。青い森鉄道が学生を中心によく利用されているのが意外だった。実際、青い森鉄道の沿線には高校が多く、というのも青森県との連携で高校が駅のそばに移転されたことに起因するようだ。
青森駅に到着。ここからは五能線へ向かうリゾート列車「リゾートしらかみ」に乗車するのだが、1時間ほど時間があるので時間を潰していた。
向かいのホームにはE751系特急つがるが停車中。
駅前をうろついていると、船を発見した。
かつて青函連絡船に使われた八甲田丸で、中が資料館になっていて入れるとのことだったので船内に入ってみることにした。
こちらは蝋人形の展示。駅前でリンゴを売っていたようだ。
操舵室もそのままに展示されており、往年の青函連絡船の雰囲気を楽しめた。
私が一番興奮したのは、車両甲板の展示。車両をレールを通してそのまま船内に引き込める構造になっていて、かつては貨物の輸送が行われていたようだ。
船の資料館かと思いきや、さながら鉄道博物館のような雰囲気を感じる。左側がDD16形機関車、右側がキハ82形気動車。
こちらは郵便を運ぶ専用の貨車。郵便車と呼ばれ、形式名に「ユ」の文字が入る。
機関車の後ろについているのは控車。連絡線への積み込みの際に、船舶に重量をかけないように連結されていたようだ。
キハ82形は、後のキハ181系にも踏襲される国鉄型特急形気動車らしい顔をしている。
エンジンルームや管制室も壮観だった。当時の設備がそのままに展示してあるので、興味のある人は青森に来た際に一度訪れてほしい。
日本海に沈む夕日
さて、そうこうするうちにリゾートしらかみの発車時刻が近づいたので、青森駅に戻ることにした。
やってきたのは「くまげら編成」。リゾートしらかみに使用される車両の中で最も古い、キハ48形を改造した車両である。他の橅編成、青池編成はかつてキハ48形での運転だったが、現在では2代目のHB-E300形で運転されている。
連結部を見ると、確かにキハ48形の改造であるとわかる。幕はLEDに換装されていた。
席は4人がけのボックスシート。普通のリクライニングシートもあったのだが、ここのボックスシートは1人でも利用できるとのことだったので使ってみることにした。
そしてこの席の一番の特徴は、横のレバーを倒すことで簡単にフラットシートに転換できる点である。4人で使うならお座敷風に、1〜2人で使うなら寝転びながら使うことができる。私も早速フラットシートに転換して、某○○CLUBのように寝転びながら、津軽平野の景色を眺めていた。
しばらくすると、千畳敷駅に到着。隣につららが見える。
崖の一面につららがびっしりとできていた。冬の寒い時期ならではの光景だ。
千畳敷までは歩いてすぐだったので行ってみたが、ただの岩場という感じだった。
私が一昨日車を走らせた国道101号線と並走したり、別れたりしながら、列車は南下を続ける。深浦駅の手前で見えたこの岩場も、私が一昨日撮影に訪れたポイントである。道路から見る岩場と、列車から見る岩場では、少し違う印象がする。
列車は秋田県に入った。ちょうど日没が迫るなか、日本海のほうを眺めていた。フラットシートに横になりながら寝ようとすると、列車に乗っている時に感じる高揚感からかなかなか寝付けなかった。寝転びながら、日没の瞬間を待っていた。
どうして日本海に沈む夕日は美しいのだろう。辺りは茜色に色づき、太陽はみるみるうちにその姿を隠していく。徐々に暗くなっていき、東能代に着く頃にはすでに真っ暗であった。
列車は終点の秋田駅に到着。秋田駅からは、カーシェアで再び車を借りることにした。2日前の事故は鮮明に覚えているが、だからこそ再び運転することで運転に対する自信を取り戻そうと考えたのである。
秋田駅の隣のビルの駐車場から出発し、まず先に向かったのは温泉。東北に来てからというものまともなお風呂に入っていなかったので、ここで入っておくことにした。カーナビを起動させて温泉までのルート案内をしてもらうのだが、このカーナビも少しポンコツで、住宅街に迷い込んでしまった。行き止まりに差し掛かり、一度切り返して、狭い路地を抜けていくと、温泉に到着した。どうやら裏道から入ってしまったようだった。
温泉自体はいいお湯だった。ぬるめの温泉にじっくり浸かったり、併設されていたサウナで汗を流したりした。
温泉を出て向かったのは秋田駅。一度車を返すのだが、カーシェアの場合は車を元に戻しただけでは返却扱いにはならないので、一時的に車を停めておくことにした。秋田駅では夜に一瞬だけ、五能線のキハ40系と男鹿線のキハ40系が並ぶので、是非とも引退前にカメラに収めておこうと考えた。ホームに行ってみるとすでに10人ほどの同業者が待機していた。
ピントが合っていないが、男鹿線のキハ40系が入線してきた。
五能線の青帯と男鹿線の緑帯が横に並んだ。
引退間近の車両が横に並ぶということで、周りにいた多くの鉄道マニアが次々とシャッターを切っていく。五能線の車両はすぐに東能代行きとして運転されるため、時間勝負の撮影だった。
五能線の車両が秋田駅を発車していく。その様子を見送ってから車に戻った。
実はこの時宿が決まっていなかった。快活CLUBに泊まろうかとも考えたのだが、車を借りているのでいっそのこと車中泊をしようと考えた。秋田駅から再び車を出して、道中に発見した快活CLUBに入ることもなく、コンビニで夜ご飯を調達し、道の駅秋田港の駐車場に到着した。
すぐに車の後部座席を倒してフラットな状態にして、ご飯を食べて、横になった。3月とはいえど秋田はまだまだ寒かった。寝転び始めて1時間もすると相当寒くなっていた。
持ってきた上着を全部羽織って、2時間くらい寝ていたのだが、ついに我慢の限界がきてしまった。このまま寝続けたら低体温症になりかねないと思い、深夜2時ごろに道の駅を出て、道中で通った快活CLUBのフラットシートに逃げ込んだ。店に入って次に意識が戻った時には朝5時過ぎだった。
最終日につづく……
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