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恋愛における学び2

20代前半の頃、私は学生と付き合っていた。学生と言っても大学生で4つ下の子だった。国立大学法学部に通う弁護士志望の優秀な子で、理数を得意としセンター試験では数学で満点を叩き出した子だ。最初は法曹界のトップ、裁判官を目指していた。しかし大学在学中に起きた飛び火に巻き込まれ前科を作ってしまいその道は断たれる。(前科持ちは裁判官不可)今でも名前を調べれば昔のネットニュースに出てくる。

非常に優秀な子で、私はこの彼と20代前半を共に過ごせた事を本当に感謝している。彼と離れて一度も会う事はなかったが本当に本当にどこかで幸せになっていて欲しいと願う。

彼は優秀だったが、結論しか言わない子だった。優秀であるが故と伝達力不足によるものだと理解していたが、その事が原因で喧嘩も絶えなかった。絶えなかったと言うより、彼が一方的にいつも怒っていた。なぜ分からない、なぜ伝わらないと日々葛藤していた。私はと言うと正直どうでも良かった。私自身、若かったので弁護士の卵という事から将来的にラクできそうと考えていたので相手の気持ちに配慮がなかった。(もちろん結婚はしないが関わる上で経済的な負担はなくなりそうの意)

彼も例に漏れず恋愛パワーで強くなるタイプ。ただ地元を離れただ1人遠方で大学生活を送る日々の彼は心が沈みやすかった。依存体質とまではいかないが、いかに自分が愛しているか、どれだけ私の事を幸せにできるかをよく語っていたのが印象に残っている。

ただ彼の言う「幸せの基準」が私のそれとは大きく異なっているのは感じていた。私はそこに言及しない。人の幸せはその人それぞれだ。彼は経済面で豊かになれば幸せになれると勘違いしているタイプ。学生だからそんなもんでしょと普通は片付けられるのだが、仮にも将来、法曹界にいこうとしている人間が今までの判例を見ていない訳じゃないだろうに、何故かそこに固執している。人の憎悪や愛や苦しみ、辛さなど1番詰まっていて間近で勉強し、見られる環境にいて幸せの定義が経済面とは。

浅はかな子だと思っていたが、そこもまた愛らしい。私は自分より全てに於いて勝っているタイプをパートナーには選ばない。この子は優秀だが大きく外した部分も持っていたため数年は一緒にいた記憶がある。


別れを決断したのは夏だった。寝起きで携帯を確認すると着信が数件入っている。その日は私の誕生日だった。LINEも数件。日付けが変わった辺りでお誕生日おめでとうLINEが入っていたのを確認していたのだけれど、疲れがピークに達していたため既読を付けずにそのまま寝てしまっていた。

それが朝起きると不機嫌なLINEで追撃されている。どうしたどうした、この数時間で何が起きた。お誕生日おめでとうの後、寝てるの?から入り直接言いたかったと来ていて、その後は本当に寝てるのか、どこかに遊びに行ってるのではないか、男かと勝手に妄想を膨らませ勝手に思い込んでしまい、彼の頭の中では私は完全に鬼畜外道に成り下がっていた。

躁鬱かな?と思い気分が落ち着いた頃に連絡返そうと昼頃に返すとこれでもかと言うほどの怒り心頭。あまりにも私が中心になり過ぎている。このままだと堕落していきそうな気がする。堕落は堕落で結構なのだが巻き込まれるのはごめんだ。この時は巻き込まれる事に恐怖だったが、今思えばこれがキッカケで私の特殊性癖が目覚める事になる。

さすがに限界がきた。会う事もせずにその場で別れを告げる。あまりにも身勝手であまりにも浮き沈みが激しい。仮にも数年は一緒にいた仲だから情がない訳ではないが、もうこの時ばかりは私の人生から一刻も早く出ていってくれと思った。その思いをオブラートに包まず気持ち悪い、鬱陶しいと淡々と話した。彼は終始無言だったが、掠れた声で「分かった、さよなら」と言い電話を切った。

その日の誕生日はとても快適に過ごせた。いい、自由って素晴らしい。もっと早く1人になれば良かった。

夕方になり1つの荷物が届いた。今日に日付指定してあり受付自体は1週間前。

中身は先ほど別れたばかりの恋人からだった。中には手紙が同封されており、慎重に言葉を選び抜いて、私の結婚したくない事も尊重している、それでも許されるならずっと一緒にいたいと丁寧に書かれていた。

私は手紙を2回ほど読み返してそのまま捨てた。無言で段ボールを閉じ、それも未使用のまま再び日の目を見る事もなく数年後に捨てる事になる。

途中から合わないなと思っていた部分がたくさんあった。せめて誕生日は大人しくしていて欲しかった。それがこの日にお互い感情を爆発させ、もう無理だと一方的に告げる。そして夕方に彼の思いを知る事になる、なかなか忘れにくい過去の一つだ。

もちろんだけど、この彼も後半だいぶネジが取れかけてきていた。私がそうさせていたのは今なら分かる。

ただこの彼がきっかけで今の性癖に目覚めたのは間違いないので、恨むべきか感謝すべきかは迷う所ではある。過去を振り返る事はほぼないが、たまに書き出して整理する事で、今後、現実に浮き出てくる可能性はグンと下がる。


この彼からの学びは非常に多かった。歴代で私に関わってくれた方々の中でもトップクラスに学びをもたらしてくれた。やっぱりどこか遠くで幸せでいてくれと願うばかりだ。


当然ながら人間同士、伝達能力によって関係性は浅くも深くもなる。

浅く多くか、深く少なくかは相手次第。

臨機応援に対応しないと自分語りで終わってしまうよ。




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