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国内SaaSのフロントランナーがマインドチェンジを狙いリニューアル。コロナを経て使い方を探求する「進化するオフィス」

インタビュー:Team Spirit 代表 荻島浩司さん

チームスピリット社は、働き方改革を推進するクラウドサービスを提供する企業です。1996年創業、2011年にクラウドサービス「TeamSpirit」を立ち上げ、2018年にマザーズに上場。日本の「SaaS元年」と言われる2017年18年頃よりも以前からいち早くSaaSサービスを提供する、国内SaaS市場の草分け的存在です。

上場を機に社内にスタートアップマインドをより強めたいという思いから、オフィスのリニューアルを決定。トレイルヘッズでお手伝いをさせていただき、2019年11月に竣工しました。リニューアルから約1年。改修後のオフィスをどのように使っているのか、会社や社員に変化はあったのか?さらにはコロナを経て、今後のオフィスをどのように考えているのか、代表取締役社長の荻島 浩司さんにお話を伺いました。

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お話を伺ったTeam Spirit代表の荻島さん

ーオフィスの改修を考えたきっかけを教えてください

弊社は企業のバックオフィスのクラウド化をお手伝いするサービスを提供しています。ですので大手のお客様が中心で、着実、確実にやってきているのですが、社内のメンバーの間には少し落ち着いた雰囲気があります。2011年に「TeamSpirit」を新サービスとして立ち上げた時は、「新しいものをつくろう」というムードが社内にありました。変わってきたのは、上場を意識したタイミング。目標管理や社内統制など、これまで以上にルールを優先する時期がありました。もちろん必要なことでしたが、ルールを重視する雰囲気に偏ってしまい...。社員の会話も「顧客のために何をやろう?」「何をするとおもしろいか?」から、「これをやってどのくらいKPI向上に貢献できるのか?」といった会話が中心になっていましたね。

私たちのミッション「全ての人を創造する人に」を成し遂げるためには、もっと新しいものを生みだすんだという雰囲気作りや、創造性を刺激し育成する環境の整備が課題だと感じていました。当時の状況下では、先々の目標を考えたときに「もっとKPIをあげよう」と考えられがちでした。。こういう背景から、もう一度短期的な目標やKPIだけでなく、長期的に私たちが世の中にどう貢献できるのかを考えていこう、ミッション・ビジョンも見直し、カルチャーを変えていこうと思い直し、変革を行うことに決めました。オフィスのリニューアルはその一環と位置付けました。

ーオフィスのコンセプトや改修内容を聞かせてください

ここのコンセプトは「進化するオフィス」です。完璧なものをつくるのではなく、未完成で余白がある、という状態。コンペでトレイルヘッズさんには、デザインではなくオフィスの考え方を提案してもらったのですが、これが良くてコンセプトに決めました。

改修にあたってディスカッションし、たどり着いたオフィステーマは「コラボレーション」。社内だけでなく社外の人も交えてコミュニケーションできる場所をリクエストしました。

具体的には、もともとオフィスとして使っていた4階に加えて、6階を増床し、フロア毎に機能を分けました。4階はコラボレーション、6階は集中スペースと設定。4階のワークスペースはできるだけ仕切りをなくして、視線が抜けるように設計されています。会議室もガラスで中に誰がいるか見えるし、オープンスペースはカーテンで緩やかに空間を仕切ることも可能です。

また窓の外の視界が抜けていて、向かいのビルの緑化されたグリーンがよかったので、借景のような溶け込むデザインをオーダーしました。そのため芝生のようなスペースがあり、グリーンが重なって公園のような雰囲気になっています。

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上:カーテンで仕切ることもできるオープンスペース
下:窓際のファミレスのような席。向かいの緑化されたビルが眺められる

ー「コラボレーション」をテーマにした4階は、かなり自由度の高いスペースです。ここはどのように使っていますか?

まずこのフロアは仕切りがあまりないオープンな空間で、中間にあるガラスの仕切りから奥は社内スペースで、手前までは外部スペースという認識。なのでセキュリティもなく中央まで入って来ることができます。

コロナ禍以前は、ここで毎月2〜3回ほどイベントをやっていましたね。社内向けの交流イベントや、ユーザー会、クライアント向けセミナーや、PRとしてメディアを集めて発表会をしたり。あとは、社外の人も来られるイベントで、ゲストを招いて講演をしてもらう機会を持ったりと、様々なイベントを開催しました。

会の中で照明や音響などの演出をしたいときも、中央のカウンターの中にPA機能があるので進行が楽なんです。また、カウンターにケータリングを呼んで、セミナー後に懇親会を開催する時の流れもスムーズですね。社内向けでは、オープニングパーティで寿司職人を招いてパーティもしました。カウンターにお寿司を並べて、とても盛り上がりました。

また、うちは月1回全社員が集まる朝礼を実施しています。「All-Hands Meeting」という名前で、以前は6階のワンフロアで社員の席が並ぶ中で、片側の壁にスライドを映してやっていました。リニューアル後はここでやりましたが、雰囲気がぜんぜん違いますね!投影して説明をしていても、近くで真剣に聞く人、後ろの階段に腰掛けて気軽に聞くなど聞き方も様々。カジュアルさが出るのがすごく良いと思ってます。

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上・下:オープンスペースで開かれたAll-Hands Meeingの様子

ーオフィス改修によって起きた変化はありますか?

オフィスが変わって、採用のホームページの写真をここで撮影したのですが、かっこいい写真がたくさん撮れましたね。面接時にも第一印象で「素敵なベンチャー」と思ったという声も聞きます。デザインの雰囲気から、会社としての柔らかさや自由さが現れていて、そこから合う合わないを感じてもらえているのではないでしょうか。

実はオフィスを作る過程で、社内の5〜10名ぐらいのメンバーを集めて新オフィスについてかなり議論を重ねたんです。席はフリーアドレスがいいとか、固定がいいとか。例えばあるチームで出た意見は、電話が取れて、さらにすぐに相談ができる距離感にいたい。一方で開発チームはこもりたい、というようにチームごとに希望の違いがありました。

そのように意見を出し合いながら、会社にとって必要な働き方を考えていった結果、完成したのが今のオフィスです。今までは開発チームと営業チームは、フロアもゾーンも分かれていて交流も限られたものでした。今は視線も抜けているので出社勤務時にはお互いの存在も認識できるし、社員同士が声をかけあって会話をする機会が増えています。

ーコロナ禍の今、オフィスをどのように使ってますか?

以前はチームごとに座っていましたが、コロナ禍では全員在宅。自粛期間が開けてからは、密にならずにコミュニケーションをとれるように、社員を週1日の出社にしています。一日の出社人数は全体の2割ぐらい。オフィスに来る人数は少ない分、どこに座っても良いとルールを変えました。一部をのぞいて固定席もありません。窓際のファミレス席がお気に入りの人など、みんな好みの場所に座っていますね。自由に、好きなところを選んで働けるのはとても良いですね。

またこういう空間なので、人数が少なくても寂しい気持ちにならないのもいいかなと思ってます。四角四面のオフィス空間だと、人数が少ないと寂しい雰囲気になってしまうんですよ。ここはいろんなスペースがあるのでそれがない。家に近い感じでくつろげます。

ただ、コロナになってから新しく入社した社員がリアルで会う機会がない。新しい人がどんどん入っていますが、在宅ワークも進んでいるので、新しい人が他の社員と知り合える機会がなくなってしまった。なので社員がお互いに知り合える機会はつくっていきたいです。例えば出社して来た人のために、おいしいコーヒーを淹れておいて、飲みに来ると交流が自然とうまれるとか。

あとは「帰る場所」も必要ですよね。営業が「久しぶりに帰ってきた」と思えるようなそういう場所にはしたいですね。なのでリモートでの打ち合わせや作業は外で、みんなで集まった時にはお茶を飲んだり話をしたりする場、という形に変わっていくんじゃないでしょうか。

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社員の皆さんが談笑する風景

ーこれからの働き方やオフィスの役割をどう考えていますか?

在宅ワークになって、決まっている仕事は効率がよくなりましたね。とくにうちは中途採用が多くジョブ型なので、起きて10分で仕事に取りかかれるのは効率が良い。その反面、アイディアを生み出す機会は少なくなりましたよね。ランダムに意見を言い合う機会があまりない。

仕事だけなら家でもよいのですが、あえて「ここに来ることの意味」を持たせたいと思ってます。例えばオープンスペースは、コロナ禍で人が集まるイベントは開催しなくなりました。決算発表も今までは会場を借りてやっていたのが、今ではオンライン開催。となると、Youtuberのように照明やディスプレイが揃っているスタジオ的な設備があるといいかなと思ったりします。もしくは、営業向けにスタジオのような設備があってお客さんにきちんと説明ができるような、そいういう施設があってもいいかな。

このような変化の中で最近「新しい働き方を考えるイニシアチブ」を立ち上げました。「TeamSpirit」自体がニューノーマルにフィットする製品でもありますが、短期的な視点ではなく、これからの働き方に備えて長期的に捉える。子どもがいて在宅ワークがやりにくいとか、9時〜17時の就業時間でいいのかとか様々な要素がありますが、そういうことを含めて模索をしていこうとしています。

弊社にとってみると、コロナのこの経験は良かったと思っています。コロナ以前は働き方を考えるにしても「効率」が基準。しかしコロナによって全員在宅になり、オフィスのあり方や働き方が一回白紙になりました。もともと「余白」があるオフィスなので、変えられる余地がある。改修のときにオフィスを作り込まなかったのは良かったですね。オフィスが未完成で進化中、だからこそこれから、みんなでここをベースにどう働こうか、どう生かすかをこれから考えていこうと思います。

※11/16にリニューアルしたチームスピリット社の採用サイトは、このオフィスを利用して会社の魅力を表現されていて、社内外からの評判も上々とのこと!サイトもぜひご覧ください!
▶︎チームスピリット社 採用サイト https://recruit.teamspirit.com/
インタビュー・執筆:及川静香(TRAIL HEADS)

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