金星

昔から俺は妄想癖があった。

自分の人生では自分が主人公で、
それはどんな状況でも変わらない。

自分がスポーツをやっているとき、ステージに立ってるとき、ピッチの外から声援を送っているとき。

どんな時も、妄想の中では自分が主人公だった。

昔から実家の風呂に入ると自然とそんなシーンが頭に流れていた。
そこから眠りに入るまで、時には夢の中でまでその妄想は続いた。

東京に出てからその妄想は少なくなった。
実家の風呂に入っても、その時間はあまりなかった。

でも今日は違った。

今日の楽天モバイルパーク、凄い空気だったんだよ。
選手も応援も、両軍気迫のぶつかり合いだった。
12回、試合が終わるまでそれは続いた。

俺は度々、「勝ちたい。応援で勝たせたい。」と言ってきた。
応援が勝ちに影響するなんてそんなデータ恐らくないけど、
俺は応援で空気が変わる瞬間や、応援に対する恐怖を感じたことがある。
そんな応援がしてみたいと思っている。

今日の球場は、確かにそんな奴らが多かった。
もちろん試合展開が影響していることもあるだろうけど、俺はいつもよりもっと「勝ちたい」と思った。
それは俺の周りの人間からも感じた。
俺はそいつらに負けたくないと思った。
そんな感覚は初めてだった。

なんとなく、今まで妄想で見てきた「主人公」的な感覚があった。
そしてそれもまた、周りの人間にもあったのかもしれない。

「たかが応援で。」
と思うかもしれないが、今日はそれくらい熱かった。

まだシーズンも始まったばかり。
こんな瞬間がまた味わえるのが楽しみで仕方がない。

今日の風呂場での妄想は、今日いたスタンドの空気によく似ていた。
でもあれは今日の試合じゃなかった。

それがいつか、現実に起こりますように。

鉄板の上の暴動のような、熱い一日を。

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